Tは酔うといつも自分の不運を声高に語る。

だからTの、そんな話を金輪際聞きたくなかった俺は、こないだの飲み会のとき、奴に「お守りだよ」と、自らの腕にはめていたブレスレットをくれてやった。数珠ブレスレット。

こんなものしたって俺の不運は変わらない・・・と言いながらも、早速Tは腕にはめた。


「これで流れが変わるなら、誰だってブレスレットを買うッスよ」


俺はちょっとでもいいから感謝の言葉を聞きたかったのだが、Tの気持ち的に、そこまでの余裕が無かったのだろう。だから注釈した。


「俺が作ったんだぜ」


え?Uさんが作ったの?マジすげえ!これマジすげえ!Tは俺が気の毒がって、どこぞで気軽に買ったブレスレットをくれたと思ったらしいが、まさか作ったなんて、と、先ほどまでのニヒルな雰囲気から一転、目を真ん丸くして感激した。

俺もそろそろ、このクセをやめなきゃいけないな、愚痴とか後ろ向きな態度とかが嫌だから、という理由でブレスレットをプレゼントし続けてきたが、会う人会う人皆にプレゼントしなければいけない憂き目に遭う。そんなことしてたら俺の小遣いが全部ぶっとんでしまう。

いったい今まで、いくつの「ブレスレットという名の徳」を捧げてきたことか。それで俺がこうして愚痴っているのだから世話がない。

これは徳を積んでいるうちに入るのだろうか。

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