精神的な故郷はそこかしこにあるが、どれひとつ取っても、それぞれが薬効の違う薬草に似て、場所場所で俺の魂のそれぞれ違う部位を刺激する。

異なる精神的慰安の数々があれば、俺は世界の均衡を保つことが出来る。

それはあるいはバリ島かもしれないし、あるいは高麗川だ。

被服やアクセサリーの数々が、俺の心の均衡を保つことだってある。

とりわけ最強なのは、場所場所で俺を待ってくれている人々かもしれない。

突き詰めるところ、人は人からもっとも救われる。

だから俺は、あなた方に帰依するんだよ。





俺のDOHCカワサキZ1-Rを唸らせて、まるで島から島を渡り歩く様に夜のしじまを切り裂き向かう先は、ミラーボールみたいな、透明なスーパーボールの中にキラキラ輝くラメみたいな、甘い香りのする街だった。

夜な夜な酒瓶の中の純情を追い求め、いくつかの情事をつかまえたけれど、時が過ぎればそれらの感触は全て、やるせない思いだけを残して、どこかに消えた。古いバイクのマフラーあたりに漂う、生焼けのガソリンの匂いの様な、つんとした涙っぽいカタルシスを残して。

あの頃、俺の目の前を通り過ぎていったあのコたちは、あのコたちの面影は、今でもミラーボールみたいな街に息づいているのだろうか。











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