よっぱらっちまう前にさらっと告白しておくか。

その昔、俺は送り狼だった。

飲酒で捕まったって5万円も払えばいいんだろう?ってな軽率で悪い時代だった。

バーで知り合ったコを軒並み「送るよ」の言葉で俺の密室に誘い込み、途中、所も分からぬ砂利敷きの真っ暗な駐車場に入ってシートを倒してディープキスする。

キスだけならいいが、女の子なら分かるだろうけど、キスしちゃったらもう最後までいっちゃうよね?

毎日誰かを送ってチャンスを窺っていたさ、それが俺のスタイルであり、それが健全だと思っていた。

今時の風潮なら犯罪者になってしまうかも知れない。

昔の友達なら覚えているかも知れないが、白いプレリュード。あれ、あの助手席。

女の子はみんなダッシュボードに足を乗せていた。

今さら思うのだが、何故彼女らはすんなり俺の車に乗ったのだろう。

車の中で良く聞いた言葉 の数々

「夜中のドライブって好き」「運転の巧い人って好き」「暗いところで車を停めるのってドキドキする」「ここどこ?」

カーラジオからスローバラード。

AMのノイズ交じりの音質が心地好い。

AMラジオとなれば、RCサクセション、そして、みっちゃんを思い出す。

それこそ、カーラジオから流れてきた「ヒッピーに捧ぐ」を聴いて泣いてたみっちゃん。

彼女と初めて男女の仲になったのが例の白いプレリュードの中だった。

アーク灯の光に白く照らされたみっちゃんは美しかった。

今でもみっちゃんと車の中で一緒になる夢を見る。





色んな女の子が俺の助手席に座ったけど、正直その時ってどんな気持ちだったのかな。

思うに、女の子は選んでいる筈だ。誰の車には乗れないけど、誰それの車だったらOK、みたいな。

そんな感じ、覚えているかい?

そうだな、例えば、きょうちゃんは俺の車には乗らない。

以前は兄弟みたいに一緒に遊びに行ったものだが、二人でバリ島に行ってから、何が理由かは分からないが、きょうちゃんは俺の車に乗らない。

今でもそうだ。 俺と石田が居たとしたら、きょうちゃんは石田の車に乗る。

もうとっくにみんな結婚して子供まで居るのに、変だね。

ずっと前に俺の車に乗った女の子たち、何故俺の車に乗ったのだ?なんで俺を選んだ?それはとても男心をくすぐる問題だ。

当時のお友達は、こっそりで構わないから、その時の心境を教えてくれないかな。

もう教えてくれてもいいだろう?何年経ったよ?

みっちゃん、何で俺の車に乗った?

それも毎週末。

だったら一生俺の隣に乗っていてくれれば良かったのに。







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