彼女は胸を見られる事を極端に嫌がった。
もうすっかり普通にセックスする間柄になっても胸は見せなかった。
だから俺は彼女のTシャツの中に手を突っ込んで胸を弄るしかない。
「見たい?」
「・・・うん」
「ごめん、見せたくない」
ブラジャーはBカップだったが、Tシャツの中でホックを外すと、実際にはAカップも無い様に感じた。つまり、男の子の胸の様に平らである。ほんの気持ちだけ、ああ、ここに乳房があるのだ、と思わせる範囲が、周囲よりも柔らかく盛り上がっていて、その微妙な盛り上がりが手のひらの感覚で伝わってくる。
小さな乳首が勃っていた。Tシャツの上からも乳首が勃っているのがありありと分かる。指の先で優しく弄ぶと、彼女は腰をくねらせた。
「俺・・・おまえのおっぱい、好きだよ」
慰めとかじゃなく、本心からそう思っていた。そして、ひょっとしたら見せてくれるんじゃないか、とTシャツをめくりはするが、彼女の手にさえぎられ、彼女の胸は一瞬の青白い光を残してTシャツに隠されてゆく。一瞬ではあるが、その美しい胸を俺は脳裏に焼き付けた。彼女は感じているのと困っているのとで、微妙に悩ましげな表情で訴えかける。
一番感じる部分を指で触ると、彼女はちょっと素敵な声で反応した。
その声に呼応するかの様に、隣の部屋の弟が壁越しに小さく咳払いをした。
反応した彼女は恥ずかしそうに頭から布団を被り、しばらく沈黙してから俺の目を覗き込んで「しー」とばかり口に人差し指をあてた。
「ねえ、おおかみさん、私を食べたい?」
「うん」
「あなたは毎日が満月ね」
囁く彼女の体が青く光るのは、窓から覗く月のせいだった。満月ではない、ちょっと欠けた月だ。
彼女の瞳に月が二つ輝いていた。
「みんな・・・お月様に見られちゃってるね」
危なっかしい俺たちを見張っているのは、きっと隣の部屋の弟、両親、職場の同僚、飲み屋のマスターや仲間たち。
彼女を青く照らす月ですら、俺たちを見張っている。
「ねえ、声出さない様にするから・・・してくれる?」
いつ脱いだのか分からないが、彼女は下半身が裸だった。
「弟が聞いているから・・・」
そう言いながら、俺だってしたくてたまらなかった。
彼女はTシャツを脱がない。脱がなくても、乳首が立っているのがありありと伺えた。ここまではっきり分かるなら、いっそ脱いでくれた方が嬉しいが、たぶん男には理解出来ない繊細なこだわりが女の子にはある。
だから、さっきみたいに途中で脱がすなんて事はやめよう、月明かりで彼女の全裸を見たらさぞかし美しいだろうなぁ、と思いながら、俺はゆっくりと彼女の中に入っていった。
入った瞬間、彼女は両手で口を押さえたが、それでもやっぱり声を出してしまった。一生懸命押し殺して、目尻から涙が溢れている。その姿がいじらしくて、可愛かった。