私が通っている学校は私立であり、革靴で登校するのだが、
今日はあろう事かスニーカーで登校をしてしまった。
しかも純白の。
なぜスニーカーで登校したのか―――答えは簡単、革靴が濡れたからである
と言っても昨日は清々しいぐらいの快晴で、もちろん雨など降っていない
なぜ濡れたか――これは昨日犬の散歩中に起きたことだが、
私は海沿いを歩いていた、海沿い、という言葉で結果は解るだろうが、続ける
私が歩いていた道と浜辺には結構高低差があり当然60度ぐらいの坂がつくられている。(坂と海の間に
も道はあるのだが)
久しぶりの散歩であり、今年で私の家二来て十数年となる――もう老犬と言ってもいいほどの――愛犬
は、とても人間年齢では80過ぎとは思えないほどはしゃいでいた。
尻尾をぶんぶんと振りながら歩いている我が愛犬はとてつもなく可愛かった
海が見えてきた、ああ…この犬と海に来るのも何ヶ月ぶりだろう、
最近は時間無くて行けなかったな――と思いつつ歩幅を早める―――と同時、ぐんっ!と私が持ってい
る手綱に瞬間的に力が加わった――かなりの強さで。
油断と、一週間の苦労で疲れてた私はその力に引っ張られ――坂を駆け下りた、かなりの速度で、
水面が目の前に迫り、手綱を離した……が、時既に遅し、
我が愛犬はカーブを描き海沿いを走り砂浜へ、私はというと――速度を付けた車が急に止まれないよう
に――――力学的エネルギーの変換に逆らわず―――飛び出した。
数秒後、ドボン、という漫画でありそうな効果音が田舎の浜辺に響いた。
私は、海に、落ちたのだ。
濁った灰色に染まる視界、流れ込んでくる海水、事態を理解するのに数瞬――もっともその時のことは
あまり覚えてないのだが――前かがみに顔面から突っ込んだせいで、容赦なく私の口内に海水が流れ
込む、必死に海面から顔を出し、足を伸ばす――よし、ちゃんと立てる
幸い、潮が引いている最中だったので、膝の少し下ぐらいまでの深さだった、最も人は風呂場でも溺れ死ぬことができるので危なかったのは確かだ
(よかった……)と内心思いつつ陸へ上がる
5月中旬の海はまだ冷たく、濡れた服がべたべたし、不快感を私に与える。
あたりを見回し、愛犬を見つける、幸い数メートルぐらいの距離に、てくてくと歩いていた
手綱をとり、一刻も早く家に帰る………駄目だ、周りの視線が痛い
同じように散歩をしていた人達に奇異の視線で見られる。
そうして、がぽがぽと水浸しの革靴を鳴らせつつ、私は帰宅した……革靴、履いてこなけりゃよかった
両親にこっぴどく怒られたのは言うまでもない