七階建ての
まあまあ新しい
その建物
前に立ち
見上げるあの方の背中は
何時もより大分
弱かった
入るのを少し躊躇い
足を踏み入れたあの方
覚悟を決めたかの様に
悠々と前を歩いてゆくあの方
隣を歩くことは出来なかった
その建物の丁度真ん中
足を踏み入れたあの方
まるで吸い込まれる様に
歩く姿は悠々と
話かけたはひとりの人間
あの方の旅はここでおわり
“手錠をかけて下さいな”
私にとってはただの紙
あの方にとっては
自分を繋ぐ鋼鉄の鎖
その建物の真ん中の東側
今のあの方の小さなお家
あの方にとっては冷たい牢獄
窓から見えた街並みは
あの方にとっての世界だった
すこし小さくなった
あの方はため息をついて
ベッドに座り
天井をみあげ言葉を呑み込んだ
私はあの建物を去る
あの方を置いて
最後に見たあの人は
弱味を見せずに
笑って見せた
“連れて行って”
あの方の心が泣いた
ごめんね
ごめんね
ごめんね
ごめんね
ごめんね
許してね
また
迎えにくるから
約束よ
また必ず
必ず
この監獄から
連れ出してあげるから
ごめんね
言葉たちを呑み込んで
誓いをこめた
“またね”
の言葉
あの方は笑って
手を振った