春の日差しが眩しくて、思わず飛び込んだメガネ屋さん。
そこは自宅からも職場からも離れた、初めての土地でした。
「あのー、色の無いサングラスが欲しいのですが・・・」
普通のメガネ屋さんとはチョッと雰囲気が違うけど、と思い
ながら入り口の横のデスクに座って居た方に声を掛けました。
白衣を着たその女性は、素敵なメガネ越しにチラリと私を
見ると、真っ先に「お歳は?」と聞くのです。
若い頃から遠視気味、さすがに今は“老眼鏡”がないと
新聞も読めませんが普段メガネは掛けていません。
あまりにも突然な質問に、戸惑いながらも正直に答え、
勧められるままデスクの前の椅子に座りました。
その後、お決まりの視力、乱視、眼圧など一通りの検査が
済むと沢山の<お試し用メガネ>がある店の奥へ案内
されました。
「貴女には、これか此方が合うと思います。これなら
外出先でチョッと細かいものを見る事も出来るし、
階段も怖くありません、ただ遠くはボヤケますよ。
貴女の様な方が一番目を酷使しがちなのです。
ついつい何でもはっきり見ようとするでしょ?」
「見なくていいものは見えなくていいのです。
紫外線防止を兼ねた日常使いとして丁度いいと思います。」
目から鱗ならぬ、発想の転換でした。
シンプルなフレームを選んで、グラデーションの極薄い色を
選んで、自宅宛の配送伝票を書いていたら、「届くまでこれを
お使いください」と彼女は、私が最後まで迷っていたデザイン
性の強いフレームのメガネを差し出しました。
「えっ、これを貸して下さるのですか?」
「ええ、ご注文の品と一緒に返送伝票を入れておきますから、
それまで存分にお使いください。実は私も貴女と同世代、
目も同じタイプなの、だからお気持ちはよく分かります。」
衝動買いにしては高い買い物でしたが、とても満たされた
気分になりました。
早く、見えない(見なくていい)世界に慣れなくては!!





