いつものお日様。




いつもの砂利道。




いつものウシやブタ。





体のサイズに全く合わない、大きな自転車で過ぎ行く子ども。




パステルの壁。




木を駆け登る子リス。




はたはたと風になびく洗濯物。




揺れるサリーと黒髪とジャスミンの花。




甘いチャイの香り。




荷台に芸術的に積まれたフレッシュなオレンジ。





路上に座り、手を差し出すおばあさん。





黄色いリクシャー。





ラマナアシュラムと青いクジャク。





白人、黒人、祈り。





グレーの排気ガス。





慣れない騒音。





今、ここの、笑顔。






そして、アルナチャラ。









昨日となんら変わらないような、全然違う今日という今。







私は明日、日本へと向かう。





帰るのだけど、




安堵感を伴いそうなその表現は、今の私にはピンとこない。








いつものように、ショップに立ち寄り、




いつものようにチャイを頂き、




いつものように、モスキート(蚊)と本気の勝負をし、(全敗記録更新中)




いつもより少し早目に夕食が準備された。






私の旅立ちを気遣って。








「halu-. i miss you.



please don't go back japan. 」





「when do you come back india?



quickly come back. please.」






ショップスタッフと女性(グル)のソウルメイトが声をかけてくる。



私のハートにダイレクトに届けられる、偽りのない言葉。







「アイ シンク ソゥ」





精一杯の英語力で答える。







イケメン二人にそんなこと言われて、有頂天になった私。




ではない。




本当にまだここに居たいし、すぐ戻ってきたい。







「すぐ来はったら? っていうかお母さんと来はるんでしょ?」






女性(グル)はどんなことも軽やかに言葉にする。






その軽やかさはまるで、重いものでも軽々持ち上げてしまうかのような、




不思議なパワーを放つ。






そもそも、軽い重いの概念なんて、最初からないと知っているからだろう。







「もちろんそのつもりです。 



 もし母がその気にならなかったら、私一人でも帰ってきます」






「・・・ふふっ」







決めてあったことだった。




でも、最後の決心を促されたようだった。








荷造りは意外にも難しかった。






自分の物は、



2枚のTシャツと2枚のシャツ、2枚のテロテロパンツとパーカーと下着。



4枚のタオル、化粧水と歯ブラシ。





十分すぎる量だった。




ナイロン袋にまとめたものが、キャリーバッグの端っこに申し訳なさそうにおさまる。






しかしそこに、あのガネーシャとストーンが招かれた。




そして、頼まれていたステチュー2体。




衣類を何とかクッション代わりに工夫し、収まった。



結局、キャリーバッグを閉じるのも体重かけてやっと位にパンパンになった。






ステチュー1体でもかなり重いのに、3体となると、



私はそのバッグを持ち上げられなかった。






女性(グル)は重量制限を心配しはじめた。




超えていたら結構料金がかかるし、きっと確実に超えているだろうと。







英語の出来ない私は、1人でその状況にどう対処できるかが恐くなった。





私の衣類を減らしてもほとんど重量に影響がないし、



このままチャレンジするしかないと諦めた。






「halu-、これも入れて」






女性(グル)のソウルメイトが持ってきたのは、



インドの写真集、3冊組。





すでにパンパンながら何とか押し込めた荷物の中に、



入るとは思えなかった。






「彼女(グル)の子どもたちにギフトしたいんだ」





そう言ってソウルメイトは、さらにサイズの大きな写真集も持ってきた。







私は内心、





(どうせ入らないよ。



まして重量がヤバいというこの状況で、写真集4冊というかなりな重さを



いくらギフトしたいからといって、本気で持ち帰らせはしないだろう)





そう思っていた。






私の予想はあっさり外れた。



女性(グル)のソウルメイトは、私のキャリーバッグの中を組み替えたりし、



かなり強引に押し込め、閉じた。






明日もう一度、今着てるパジャマとか入れるために開けるのに、



入るんだろうか。閉じれるんだろうか。







正直、いい気持ちではなかった。




その気持ちは、奥底にムリに押し込め、閉じた。





そうとは、意識せずに。









すでに日付が変わっていた。






明日の出発は早朝6時。




そろそろ寝ようという時、女性(グル)が口を開いた。






「haluちゃん、実はね。




haluちゃんが手に入れたもの(ジュエリー、ガネーシャ、ストーン)の



お支払金額なんだけど  ・ ・ ・




彼(ソウルメイト)が伝えた金額は、



すでにhaluちゃんだからとお安くしてるんだけどね。




本当はタックス(税金)もかかるのに、彼はhaluちゃんに言わずに



自腹をきろうとしているの」







「えぇっ?




そんなのダメですよ!



ちゃんと払わせて下さいっ!」

 



私は、そのソウルメイトが、



自分は儲からなくてもみんなに良くし過ぎてしまうことを



女性(グル)から度々聞いていた。




それなのに、私にそこまでしてもらうのは、申し訳なさすぎだと感じた。





「私も、これは自分の儲けではなく税金なんだから、



 ちゃんと頂く必要があるって言ったんだけど、



 問題ない問題ないって。




 だからいいんだけど、このことだけは一応伝えておこうと思ってね」








「・ ・ ・ 私、どうしたらいいですか?」






「彼(ソウルメイト)がいいっていうからいいのよ」







「 ・ ・ ・ わかりました 」








複雑な気分だった。






ありがたいとは、もちろん思う。




でも、知らないといけないことだったのだろうか。




結局払わせてもらえないのなら、知らないままが良かったんじゃないか。





知ってしまったがために、申し訳なくて胸が痛い。






なんで女性(グル)は知らしたんだろう。








いい気持ちでは、なかった。




その気持ちを、奥のほうに押し込め、閉じた。





意識の追いつく間もなく、きっと反射的に。








奥の方へやった、はずだった。




しっかりと閉じた、はずだった。




しかし確かにそれは存在していた。







意識は見ていた。




反射的に押し込めた、そのプロセスもすべて。









この時から、




私の中に、かすかに、




しかし確かに、違和感が芽生えはじめたのだった。