私たちは、ポンディチェリで一泊した後、ティルバナマナイへ戻ることになっていた。
女性(グル)のソウルメイトの家族が、スタッフたちと共同生活しているハウスにお世話になったのだ。
迎えた朝も、前夜同様にたくさんの食べ物を目の前に並べられ、もてなされた。
そしてスタッフたちは、二つのショップにおのおの仕事にでかけた。
女性(グル)のソウルメイトも、こちらを訪れた際には共同経営者としてショップに顔を出し、
経営についての話し合いや、接客などをしているという。
今回は私たちもいるということで、午前中だけショップへ行くこととなった。
もちろん私たちも一緒だ。
ソウルメイトの兄がいるショップに向かった。
ショップに着くと、すぐさまソウルメイトは兄やスタッフと仕事の話をし始めた。
私と女性(グル)は、ショップで待つのも仕事の邪魔をすると申し訳ないので、
近くを散歩することとした。
ポンディチェリは、欧風な街並みになっており、とても優雅でリラックスした気分をもたらせてくれる。
ティルバナマナイには有り得ない、リッチでとても雰囲気のいいホテルも、その景色の一部だ。
「haluちゃん、今度インドに来たときは、このホテルに泊まるのいいんじゃない?
お母さんと泊まったらいいわ。日本でこのクラスに泊まることを思えば、かなり安いはずよ」
昨日ここへ来る道中、私は母と共にこの地へ戻って来たいことを女性(グル)に告げていた。
ここでしか出逢えない様々な景色を、母にも見てもらいたいと感じたのだ。
自然も、人も。
そう感じている自分に、驚きつつも嬉しがっている私もいた。
しばらく散歩を楽しみショップに戻ると、女性(グル)のソウルメイトの姿が見当たらない。
「彼はちょっと出かけたよ。20分位で戻るからって君に伝言だ。
しばらくたつから、じきに戻ると思うよ」
ソウルメイトの兄が女性(グル)に告げた。
「ほんまに20分で戻るかなぁ。インド人はそう言って1時間とか平気で遅れるから・・・。
彼が戻ったら、電話で知らせてね。」
女性(グル)は兄にそう返し、私たちは再び外へ出た。
とはいえ、もう行くところもなく、さっき通り過ぎたホテルのロビーで連絡を待つこととした。
1時間経った。
「haluちゃん、ごめんなさいね。いつもこうなのよ」
「いえいえ、大丈夫です。何か事情があるんでしょうね」
さらに30分経った。
連絡は入らないままだ。
待ち始めて2時間が経とうとする頃、携帯が鳴った。
「何が20分よ!2時間じゃない!!
全く連絡もよこさずこんなに待たせるなんてっ!!」
「これには事情があるんだ。
お客様から色々依頼があったり、さらに別の来客があったり・・・」
「それならそうと、それを伝える連絡を入れるのがマナーでしょっ!」
「いやでも・・・」
・ ・ ・ ・ ・
ソウルメイトが何を言っても、女性(グル)が圧勝だった。
これまでも、日本とインドの文化の違いによるであろう、時間やマナーに対する意識の差で、
幾度もこういうことがあり、ある意味説教を女性(グル)はソウルメイトにしてきていたらしい。
それでも擦り込まれた文化は手強く、なかなか修正されない。
その都度、同じような説教を繰り返している辛さや、
私を一緒に待たせることになったことへの詫びもあってか、
ディクシャーで帰路に着きながらも、女性(グル)は目を赤くしながら日本的マナーを訴え続けていた。
それは、これから様々な国で多くの人々を救っていくことになるであろう二人にとっては、
とても大切なことだと女性(グル)は知っていたからに他ならない。
そんな二人を隣に感じながら、私は私の身体に異変を感じていた。
頭が、痛い。
そのまま数十分ディクシャーに揺られ、ティルバナマナイ行きのバスに乗り継いだ。
発車すると同時に、私は声をあげそうになった。
頭より大きな鉄の塊で、思いっきり頭を殴られているのかと思うくらい、割れそうな激痛が走ったのだ。
その激痛は、容赦なかった。
外からも中からも頭を壊そうとでもしているかのような痛みが、私を襲い続けた。
そして、舗装されていないことによる不規則な揺れが、それを増幅させた。
(私に何が起きているの?)
逃れられない拷問のような状態の中、私は尋常でない恐怖に浸かっていた。
「どうしたの? 大丈夫?」
私の異変に気付いた女性(グル)の問いかけにさえ、私は返事が出来ない程、
激痛と恐怖に苦しみもがいていた。
解放されることなく、この状態を強いられ続けた。
この時、
私は私を見、
そして私自身で気づかされることになる、直前だった。