この、未知な経験だらけの旅を、一週間延ばすこととした。
延ばすことを決めた日、それは神の山アルナチャラのケイブを歩いた日だった。
これまでの自分に気づき、つまり身に着けてしまっていた余分なものの存在を知り、
自ら脱ぎ、手放すことを決めた日でもあった。
数日たった今、旺盛な食欲に比例して、重みの増す私の身体とは反比例し、
身軽になっていく自分の内側を感じていた。
好天の続くティルバナマナイを離れ、今日はポンディチェリへと向かう。
女性(グル)とそのソウルメイトも、もちろん一緒だ。
そこには、ソウルメイトが家族と共同経営しているショップが2軒あり、
この旅の数日目にもみんなで訪れていた。
その時ソウルメイトの兄から、言われていたことがある。
「君は、可能ならもうしばらくこの旅を続けるといい。出来れば少なくとも一か月位ね。
君にとって、ティルバナマナイという町はとてもいいからね。
そこは、とてもスピリチュアルで特別な町なんだ。」
予定もあるため、そこまで延ばすことは出来なかったが、女性(グル)もそれには賛成していた。
もちろん私には、その意味はわからないが ・ ・ ・
まず、1軒目に到着。
女性(グル)のソウルメイトの兄が出迎えてくれた。
そしていつの間にかチャイとクッキーが用意されていて、椅子と共にすすめてくれる。
「halu、少し旅を延ばせたんだね。とてもいいことだよ。」
ソウルメイトの兄は、私に向かって真っ直ぐな瞳に笑みを添えて話しかけ、
すぐさま女性(グル)に言った。
「君はhaluのことをしっかりケアしてあげないといけないよ」
「もちろん、そうさせてもらうわ」
初対面の時にも、この二人が全く同じ会話をしていた。
この、有り難くてこそばゆい気持ちを、どこに持って行ったらいいんだろう。
チャイ片手に少し会話を楽しんだ後、私たちはもう一軒のショップに向かった。
車窓を覗いてくれる木漏れ日が、再訪している私たちを歓迎してくれているようだった。
到着するやいなや、ショップスタッフがチャイの好みを尋ねてきた。
どこに行っても、彼らはゲストを重んじる。
この旅の始めに、女性(グル)のソウルメイトが言っていた。
「ゲストは神、もしくは神が遣わせた者とされているんだ。
だから、心からの歓迎と感謝を表すんだ。」
彼らには、その精神がゆるがないものとして、それぞれのハートの奥にあるんだろう。
きっとそれは、最新の耐震建築より、頑強だ。
スタッフたちと軽く挨拶を交わし、ショップの中にすすんでいくと、
女性(グル)が希望したシナモンチャイの香りが、すでに立ち始めていた。
「わっ!! あった!! これこれっ!! これのことよhaluちゃんっ!!」
「へっ?なんです?」
「すごいわっ! イメージした通りのものがあるなんてっ!」
女性(グル)が興奮してガラスケースを見ている目線の先には、何だかいかついストーンがある。
「数日前に言ってたでしょ。haluちゃんにはアメジストとクリスタルがあるといいって。
それにチャクラに対応した石があったら理想的だって。
このヒーリングストーン、ぴったりパーフェクトよ!」
確かに、トップに大きなアメジスト、そこからクリスタルが長くのび、
その上に並んであるのがチャクラに対応した石らしい。
「ここにあるなんてもちろん知らなかったのよ。
それにしてもここまでビンゴなものがあるとはね。」
女性(グル)のマックスの興奮度をみると、とてもとてもすごいことなんだろう。
いや、女性(グル)のイメージ通りで、こんなにすぐに見つかるなんて、
実際は有り得ないことだ。
でも、私の胸の中では、すっきりしないものが湧いてきていた。
「あのぉ・・・私すでにガネーシャのステチューとか、必要な石のジュエリーとかを買わせてもらいましたが、
またこれもってなると・・・。
どれだけのものを揃えていくことになるんでしょうか」
私は、この調子だと、これから先も色々買うことになるんじゃないかと、不安が一気に押し寄せていたのだ。
「私はここのスタッフではないし、haluちゃんがそれを手にしたからといって、何の利益にもならないわよ。
haluちゃんがどうしたいかで決めればいいことよ。
必要ないと思えば、それでいいことなんだから」
確かに女性(グル)の言う通りだ。
「でもね、私が感じた通りのものがこうしてあるというのは私もびっくりしているし、
私はhaluちゃんにとって、こういうものがあるとベストだとあの日に感じたの。
だから今、嬉しいのよ。
私自身も、今までこうした様々なものを手に入れて来たけど、
その時にお金がどうとかは一切考えなかったわ。
ただ、私にとって必要なタイミングで必要なものに出逢ったから、手にしてきただけのことなの」
「必要なタイミングで、必要なものに・・・」
私にとって、今この状況は、つまりそういうことなのか?
しかしなかなか釈然とはしない。
「これ、、なんですよね・・・?」
「ほんなら、まぁやるまでもないのはわかってるけど、オーリングしてみましょうか?」
オーリングテスト、聞いたことある。
確か、片手の親指と人差し指の先をくっつけて輪をつくり、離れないようしっかり力を入れる。
反対の手の平に何かを乗せ、第三者が指の輪をほどこうとする。
もし乗せたものが自分に必要のないものなら、もしくはエネルギーが良くないなら、
その指の輪は、いとも簡単にほどかれる。
逆に、自分に必要なものやエネルギーが良いなら、
どれだけ力いっぱい指の輪をほどこうとしても、ほどけない。
よく聞くのは、たばこを乗せてすると、誰でも簡単に指の輪をほどかれてしまうらしい。
同じガラスケースに入っていた、二つのヒーリングストーンと比べてみることとなった。
まず、そのうちの一つ、クリスタルがメインのもの。
シンプルで、好ましい外見だ。
「halu、指にしっかり力を入れて、離しちゃダメだよ」
女性(グル)のソウルメイトがテストを行ってくれるようだ。
「じゃ、いくよ」
「あれっ?」
私の指は、あまりにも簡単に離れ離れとなった。
次にもう一つのほう。
さっきのものよりスマートで、やや弱々しい印象。
「さぁ、めいっぱい力を入れるんだよ」
・・・結果は私の惨敗だ。
女性(グル)は笑ってみている。
最後に、女性(グル)のイメージ通りだというもの。
「あれ?? ほどけないっ! えぇっ?? 何で??」
女性(グル)のソウルメイトは何度もほどこうとチャレンジしてきた。
さすがに男性の力なので、少しゆるむことはあったが、ほとんど離れなかった。
その前二つのものではあっさりとほどかれたのに、違いはあきらかだ。
「ほらね~。 わかりやすいね~」
女性(グル)はいたずらっぽく笑っている。
女性(グル)のソウルメイトは、きつねにつままれたような顔をして、
意味もなく自分の指を確認している私に、不思議そうな面持ちで微笑んでいる。
しかしまだ私は釈然と出来ない。
「これ、見た目がいかつくてパワーが強い感じが、私には合わない気がしてしまうんです。
正直、好みでないというか・・・」
言ったそばから、同じようなことを以前も感じたことを思いだした。
「haluちゃん、ガネーシャの時も同じように言ってたよ」
突っ込まれた。そりゃそうだ。呆れ顔だ。
「だからぁ、、
haluちゃんは、強いエネルギーもハートも持っているのよ。
だからこそそういうものがやってくるの。
真の自由や平和な状態でいるにも、愛を与えるにも、強さが必要だからね。
つまりhaluちゃんは、そうあれるってことなのよ。」
その言葉に、調子に乗ったわけではない。
やけくそでも、もちろんない。
そのどちらになれるほどの余裕なんて、ない。
私は思い出していたのだ。
流れにのる、受け入れることが、私にとって本来の生き方だと、この場所で言われていたことを。
思い出すのと同時に、さっきまでの不安な気持ちは忘れていた。 (消えたというより、忘れたのだ)
そして、この女性(グル)に、ゆだねてみようと感じていた。
すると、私を取り巻くものが、するりとほどけたような感覚になった。
ちょうど、よくあるマジックで、固く結んでいた縄が一瞬にしてほどけるような、そんな感覚だ。
この時すでに、このヒーリングストーンが私の今後に重要な役割を持っていることを、
女性(グル)は感じていたのかもしれない。
いや、そうだろう。
そう確信している今の私が、この時の私に伝えることが出来たなら・・・
「全ては、あなたに必要なタイミングで、与えられていることなんだよ。
どうか忘れないで」