野鳥からの贈り物 「檀弓 まゆみ」 | LIZABSTRACT

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秋になると赤い実をつける「まゆみの木」
赤い実が割れて、中には鳥たちが好きな実が入って
いるので、奇麗な赤い実をつけている
枝が欲しければ、実が割れる頃を見計らって
野鳥と奪い合いだ。



早く気づかないとすっかり中身を
食べられてしまっている。




そうも思うのだけれど・・・
よく考えると、元々この木は野鳥が運んだ種で
生えたので、誰の木かと言うと
野鳥たちの木かもしれない。




5月初旬。
今年も、まゆみがちいさな蕾をつけていた。

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その2週間後くらいには小さな白い花を咲かせた。


「まゆみ」と言うのは、
和弓を作る為のよくしなる材を取る木で、
ヤマニシキギとも呼ばれ、
真弓、檀弓、とも表されるが、
「檀の木」とも言われる。





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紙の材料になり「檀紙」と呼ばれる和紙が
かつて「みちのく」で漉かれたというのだが、
「みちのくのまゆみ紙」とか
「陸奥紙(みちのくがみ)」と言う
厚手で白く繭を思わせるような縮緬のような
陰影のあるそれは高級な美しい紙なのだと、
そんな話も語られるのだけれど。






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すでに陸奥紙の技術は失せてしまっていて
その技法は研究者すらも悩ませている。



「いや、原料は楮で檀は使われていない」とか
「檀の木の若枝の皮を剥ぎ、樹皮繊維を楮の
原料に混ぜて漉き込む和紙なのだ」と、
諸説あるのだけれども、
そこは「みちのく紙」と言われ
「未知の国」の中で起きた事を
現代の学者が調べてもそう安々とも
わからないのだと思われます。




「檀」という字を使っているところをみると
古代朝鮮の檀君神話を思い出します。

桓因(ファニン)と呼ばれる天帝が、
息子・桓雄(ファヌン)に下界を治めさせるが
虎と熊がしきりに争っていた。
虎も熊もファヌンに想いを寄せたが
ファヌンは熊と虎に人の女となる秘法を授けたが
虎は女に変じる事がなく、熊だけが女となった。

ファヌンは女となった熊に
特別な愛情を注ぐ。




神の子ファヌンを父に、
人を母として生まれたのが檀君である。

檀君の生誕地が太伯山(テベクサン)の
山頂に祀ってある神壇樹(シンダンス)であったが、
この場所は母の熊女が子供を授けて貰えるように
詣でて祈願した聖地でもある。




これには様々なバージョンがあるようで、
ツングースの神話には獣祖神話があり、
扶余の建国神話から、扶余のクムワ王の王子であった
高句麗始祖・朱蒙(チュモン)にもそのエッセンスが
受け継がれて行く。




檀の木は朱蒙神話では弓に姿を変えて行く。
扶余の東明聖王は馬に乗り巧みに弓を射るし、
チュモン神話の中でわずか7才にして
弓を作り、射ると100発100中であったと伝わる。






釈迦はマーヤー夫人の脇の下から生まれるように、
神話の神は普通の出産ではならない。
朝鮮の神話では度々聖君は卵から生まれる。
チュモンも卵から生まれる。





おそらくだが、檀紙には檀の木の繊維は
含まれていないのだろう。

みちのくに由来したことも
日本における太伯山が仙台にあるからだと
思うし、聖君が生まれる卵あるいは繭に見立てて
繭のように白い縮緬のような陰影があるものを
尊び厚く優雅であって檀君を想起させる
モチーフを様々に取り込んで檀紙が漉かれたの
だと思うのである。




大高、引合、繭紙、松皮紙などとも別名があるが
あるいは工人によって工夫があり
様々な風合いになっていたのかもしれない。







秋の色づいた檀の木は、春の青々としたものと違う
ヤマニシキギと呼ばれるだけの華やかさがあります。
檀の木の実の成長もまた紹介したいと思います。
そして檀の木にまつわるお話の続きも
またの機会に・・・







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