私の職場は、トロントの中でもかなりスケッチーな（治安の悪い）エリアにあります
薬物中毒の人、一人大声で何か叫んでいる人、物乞いをする人・・・一目でアブノーマルな人々だらけです。
そのエリアにある銀行のATMを使っていたところ、すかさず一人の男性が入ってきて、私がお金を下ろすのを後方でじっと待ち、お金を要求してきたことがありました（小銭をあげただけで済みましたが、悪質な強盗である可能性もあったので、危なかったです）。
もちろん、お店にもびっくりするようなお客さんが来たり、びっくりするようなことも起こります。
例えば、顔を青く塗った人。店内でウンチやおしっこをしてしまう人。お店の前で殺虫剤で火をつける人・・・
私は今の所バックルームでの仕事がメインであまり売り場で接客をする機会がなく、そういう状況に直面したことはまだありません。
売り場からバックルームに入ってくる同僚が「今、こんなことが起こったよ！やれやれ」と言うのを聞いて、笑ったり、驚いたりするだけでした。クレイジーな人がいるなぁ、と。
そして、同僚たちの間でも、変だなーと思う人たちがいます。
ほかの同僚たちと対立していて、私に彼らの悪口を言ってくる人。いつも不自然にハイテンションで、マネージャーにやたら媚びている人。
そう、私は、彼らのことも、変な人だ、未熟な人だ、と思っていました。
ですが、最近、だんだん、見方が変わってきたのです。
顔を青く塗ってしまったり、トイレではないところで粗相をしてしまう人は、社会とのつながりを感じられず、他人の目を気にするような感覚が失われているのかもしれない。
毎日毎日、せっせと汚いものを寄付しにやって来るおばあさんは、ただ、誰かにありがとうと感謝されたいのかもしれない。日頃、彼女と関わる人が全くいないのかもしれない。
店内で大量の万引きをして警察に連れて行かれたお年寄り。あの年齢になって、リサイクルショップで万引きしないといけなかっただなんて、それほど困窮していたのか。お金がないので無料で譲ってくださいとお店に相談してくれればよかったのに、プライドを捨てることができず、万引きしてしまったのだろうか。
ほかの同僚たちのゴシップをコソコソと私に流し続ける同僚。私を自分の味方につけようとしている感じなのですが、とても気分が悪く、「私には関係ない。どうでもいい。噂話はやめろ！」と言ったのですが、彼女のメンタリティーではきっとどこに行ってもいい人間関係を築くことはできず、苦しい思いをしているのではないか。
そして、不自然なまでに張り切って仕事をする同僚。上の人にやたら媚を売ったり、聞いてもいないのに自分のとてもパーソナルなことをペラペラ話すし、かと思うと私とは視線を合わせない、挨拶もろくにしない。変な人だと思って関わらないようにしていましたが、彼が以前、自分は父親に暴力を振るわれて育った、と話していたのをふと思い出しました。多分彼にとって、上の人から褒められることは、とても大きな意味のあることなんだ。誰かの役に立って、すごいね、助かったよ、ありがとう、と言われることが大事なんだ。でも、多分本当は、人と関わることが怖いんだ。プライバシーをさらけ出すことが、親しくなることだと思っているのかもしれない。
私は、虐待問題に関心があるものの、実際に、自分の周りで虐待されている人や、虐待されて育った人に会ったことがありませんでした（気づかなかっただけかもしれませんが）。
・・・・・・
苦しい人生を送っている人が、たくさんいる。
他人を見て、変わってる、クレイジーだ、で片付けるのは簡単だけれど、見方を変えれば、彼らは、細い糸になんとかしがみついているような、脆弱で、今にも崩れてしまいそうな（すでに崩れてしまった）状態にあるのかもしれない。
私には、いつも不安を感じていて、どう振舞っていいのか分からなかった子供時代がありました。今の自分がその延長線にいることを感じることがあります。家族もみんな性格が合わず、バラバラで、ちょっといびつな形をしています。パニック障害もあります。大きな怒りですべてを焼き尽くしそうになったこともありました（その後、怒りをコントロールする実践的な方法を、仏教を通じて知りました。それについては機会があればまた）。
そう、自分だって、危うい。自分も、人生の中で、崩壊状態になることがあるかもしれない。いや、過去に、変わってると思われたこともたくさんあったはずだし、今や、これからだって分からない。紙一重。
誰もが、それぞれに与えられた環境の中で精一杯やってきた結果が今だし、それぞれの人生の中で常に何かに苦しんでる。
幸せになったり不幸になったり、人の心も、人生も、目まぐるしく変化し続けている。
そんなことを思いました。
今の仕事、単なる最低賃金のシンプルジョブだと思っていましたが、思いのほか、学ぶことがあるかもしれません