第一話 ① | 小説・混雨 【まじりあめ】

小説・混雨 【まじりあめ】

学生時代に制作した映画の小説。カナダ・バンクーバーを舞台にしたストーリー。


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2001年 ネルソン 12月24日

昨夜から降り続いた雪も明け方には次第に弱まり、今日は驚くほど澄み切った青空が広がっている。

湖の対岸にそびえたつエレファントマウンテンも久しぶりにその全貌をのぞかせ、ホワイトクリスマスで沸き立つ街を見下ろしている。

茶子はいつもどおりチャコマイカモールで墓参りのための花束を買い、墓参りに向かう。
雪姉さんの墓参りが習慣になって今日で4年が経とうとしている。月日が経つのは早いものだ。
嫌な習慣だな、と思いつつモールの前のバス亭からUPHILLのバスに乗る。クリスマスイブの昼間とあって、バスの中はいつも以上に閑散としていた。老夫婦が二人Safe Wayの前から乗ってきたきり、その後に乗ってくる客はいない。


昨年から花束が2つに増えた。雪一色でそまったネルソンの街並みをぼーっと見ながら、目まぐるしい出来事が過ぎ去っていった昨年のことを思い出していた。
なぜあんなことになってしまったのか、、。幾度となく考えた結果、結局答えは見つからなかった。


クリスマス、バンクーバー、友達、そして、死。あれからちょうど一年が経とうとしていた。
降車するバス亭が見えてきた。ストップを伝える黄色の紐を引く。カン!と甲高い音を立て、正面のモニターにSTOPの文字が現れる。そのバス亭で降りるのは茶子しかいない。クリスマスイブに墓参りする人はいないよね、と思いながら二人の待つ墓へと向かう。


昨夜の大雪で埋もれてしまったのではないかと心配だったが、杉の木がうまく傘がわりになって雪を防いでくれていた。2つの墓に花を供えると、手を合わせて静かに目を閉じる。

雪姉さん、そっちの暮らしはどう?友達はできた?心の中で雪姉さんに話しかける。毎年の習慣だ。今年一年の報告を済ませ、茶子は静かに立ち上がる。
外はマイナス25度の気温。ネルソンで生まれ育ったとはいえ、長い時間外にいるのはさすがに体にこたえる。昨日の寝不足もあって、例年より少しばかり早くバス亭へと向かった。