live -2ページ目

フィリピン日誌12 -どしゃめしゃ山下洋輔ー

 いつも決まって素通りするNHK。
そりゃそうだ、英語勉強しにフィリピンくんだりまで来たのだ。

 しかし今日は思わずリモコンの手が72チャンネル、NHKで止まってしまった。
いや、行き過ぎたにもかかわらず、戻ってしまった。

 全くの無意識だったが、どこかで見たことのあるおっさんのドでかい顔。
山下洋輔氏であった。

 「最近は本当に休むってことはどういうことなんだろうと考えてます」
 「このベストは京都の漆工芸で作られてまして」

むむむむむ。
どしゃめしゃ。
おっさんらしい。

(この間思わずNHKで止まった時は、開高健特集だった。
「かいこうたけし」派と「かいこうけん」派に分かれていて、
あれはどちらが正しいのか。)

山下のおっさんに言われた気がした。
「で、米語の音すら真似できないと言うのは、君の練習不足のほかに何か理由でも?」

フィリピン日誌11 -日本県、日本弁ー

 I did it! やったぜ!
今日は初めてのレベル分けテストだった。
昨日スピーチの題目が与えられた。「美しくてナチュラルな環境の場所を描写せよ」。
時間は5分。
半日かかって作文&暗記した。ベッドの上でつぶやきながら、力尽き果て就寝。
 本日二人の先生に添削してもらい、いよいよ発表の15時がやってきた。
緊張するので目をつぶり、なんとか紙を見ずに全部空で言えた。
終わると先生は「Very Good!」と言ってくれた。
 採点基準は文法、内容、語彙、発音、流暢さ、イントネーション。
目の前ですぐに点数を渡され確認すると、内容はなんと10点満点!
発音が予想外に6点と低かったけれど、全体的に8とか7とか、自分の中では高得点をはじき出した!
そりゃそうだ。多くの生徒が紙を見ながら発表したというのだから。

 日本にいる頃は、流暢に英語をしゃべる先生が「でも綴りは間違ってる」ことが不思議で仕方なかったが、今は納得できる。
英語は発音と綴りが一致しないことが度々あるからだ。
(例えば多くのoはaと発音するし、knewのkなど発音しない音もたくさんある)
だから喋れても正確にスペルを書けない、その反対に綴れても発音できないということが起こる。
その証拠に以前の私はライティングはできても全く喋れなかった。
そこでフィリピンに来て会話に力を入れたら、今度は発音はできても正しく綴れない。

 だけどここ二日くらい、新たな感覚を覚え始めた。
それは地球を日本に置き換えることができるようになったことだ。
つまり、英語は日本で言うと東京の標準語。
世界各国の言語は各県の訛り。
テレビの各国ニュースは、日本で言うところの各県のニュース。
 そう思えるようになると、英語をマスターするのは全然特別なことじゃないって思えてくる。ちょっと関東に揉まれて、標準語マスターしましたみたいなもんだ。

 寮のケーブルテレビではBBC(英語)とCNN(米語)で常に各国のニュースが流れ、子供向けのアニメで勉強しようとすれば主人公は英語とスペイン語を喋り、語学学校の生徒には中国語やスペイン語を普通に喋る人がたくさん。アフリカにJAICAで2年いました、ベネズエラに2年いました、中国に交換留学で2年いました、そんな人たちだらけなのである。
感覚が自然と違ってくる。

 日本が未だにまずい英語教育なのは、政府の故意なのかと思えてきた。
日本人皆が英語を流暢に話すと、欧米の奴隷化が進むからなのか。
独自の文化を守るためだろうか。
カタカナ表記を全て書き換えなければいけないからだろうか。

 アジア、マクドナルド、オーラetc、通じない単語はたくさんある。
日本には正しい音がないからだろう。
音階みたいなもんだね。日本音階、アラビア音階、バリ音階etc、そこにしかない音。
 う~ん、どっちも大切だわ。

フィリピン日誌10 -keep my mind-

 「オアシスの発音は確かオエイシスだったよなあ……」
思わず電子辞書を引いてしまったほど、隣室のカップルはずっとオアシスの「ワンダーウォール」を弾き語り熱唱している。
(ちなみに発音はオウエイシスだった)。

 うちの学校の寮には5つの規則があるがその1つに「opposite sex」というのがあって、18時以降は異性を自分の部屋に入れちゃいけない。
なのに隣室はどうなってんだと勘違いしてたら、どうやらカップルで一緒に住んでいるらしく、最初からそう公言しておけば許される。
隣室のケースは、一度日本に帰国していた彼氏が彼女の元にカムバックしてきたらしく、つい最近隣の部屋に二人で越してきた。

 それからというもの毎晩、時間関係なくギター&熱唱。
まあ私、音楽やってる人には甘いからいいんだけどさ。
私じゃなけりゃもうとっくにイエローカードだべ。
私の短所でもあるね。
でもやっぱ夜中の2時過ぎとかはきついなあ。
こっちのDVDの音量も丸聞こえだろうけどさあ。
 ところでおたくら何しに来たわけ?

 と、色々な思いも渦巻くけれど。
基本、人の悪口嫌いなので。
お金払ってんなら、そこでどう過ごすかは全くの自由だと思います。
私が猛勉強しに来てるだけのこと。

 最近、韓国人にさえ日本語でしゃべる日本人生徒や、「この学校潰れるよ。金返せって言いたいわ」って起こってもいない未来に毎日同じ文句ばっかり言ってる生徒にイライラしていたけれど、私をイラつかせているのは彼らではなく(外因ではなく)、自分が原因だとしたら? と考え直してみた。
 そしたらやっぱ出てきたワンワン。
それは毎日の復習や課題をきちんとやっていない自分だったんだワン。

 やるべきことが出来ていれば、心に余裕もできるだろう。
不満言ってる暇があったら、自分を変えろ!

 で……、愚痴っていい?
大学生あたりの年代の言葉の汚さが辛いです。
ちょっとしたストレスです。
一緒におると巻き込まれるやんねえ。
思わず使うてしまうやんかあ。
「まじで!」「半端ね~」「~してしまえ」「~すりゃいいじゃん」
これ全部、女の子が使ってる日本語です。

 人を作るのは環境です。

フィリピン日誌9 -31年間で初めての光景ー

 何週間振りだろう、スニーカーを履くのは。
グリーンヴァリーらしい、高みから遠くまでを見下ろせる快晴だ。

 まるで映画のようだった、生きてきた31年間で見たこともないほどひどかった、悪夢のような昨日、一昨日。
一番しんどいのは、「英語を勉強しにきているのに!」という憤りをポジティブな思考に移行さすことだ。これもだいぶ訓練されてきたぜ。

 悪夢は一昨日から始まった。
11時からの授業に向かうと、台風で担当の先生が二人休み。
生理だというのに下半身は下着までずぶ濡れのまま、最終の授業を終えたのは16時。
そこからスクールメイトと3人で街へ繰り出した。
遊びにではないぞよ、週末の非常食とレインコート、傘と丈夫なサンダルをゲットするためだ。
街までの道もところどころ土砂崩れの中、ジプニーは進む。

 団体行動のためサンダルを買う時間はなかったけど、協調性重視で中華レストランで晩御飯。リュックの重みでイスが後ろに倒れ、ついでに私も派手に尻餅をついたが、後ろにいた日本人&現地グループの一人が助けてくれた。
 さて、問題はここからだ。
3年ほど前にできたばかりだというバギオのシンボル、SMショッピングセンターの名物「タクシーを待つ長打の列」が数十メートルに渡って伸びていた。外はひどい雨風のため、列はいつもの2倍はあった。
 ところがスクールメイトはこの列に加わろうとするのである!
「え~並ぶ? この半分の距離で、この間2時間タクシー待ったよ。外に捕まえに行ったほうが良いって!」
傘を持たずレインコートだけの彼女達は、正直雨に打たれたくなかったのだろう。だけど冗談じゃない。私は買ったばかりのレインコートを開封し、一人のスクールメイトを連れて、暴風雨の中飛び出した。

 悪天のため交通量も極めて少ないセッションロード。
「もう21時40分だよ? そろそろどうする?」
「何時にここに来たっけ?」
「21時頃」
なんだよ、まだ40分じゃないか。絶対SMで待ってるより早く捕まえられるって。
生理で体調の悪いスクールメイトは店の屋根の下に避難気味。
私は傘を差し、帽子もかぶって、ひたすら道路に立ち続け、通りかかるタクシーに手を振り続ける。私の後ろでは何の雨よけも持たない地元青年が、全身ずぶ濡れで必死だ。
 繁華街ではレインコートを着ているだけで目立つし、こんな天候の中路上でタクシーを捕まえようとしている人は更に少なく、外人である私は目立ちに目立っていたが、そんなことを恥じている場合ではなく、強すぎる自意識が薄れていくのを感じた。

 それからすぐに1台のタクシーが止まってくれた。助手席に現地女性が一人座っている。
「グリーンヴァリーまでだって? 遠いなあ! いいよ、乗りな!」
「SMで友人が一人待ってるから、そこに寄ってくれませんか」
「君たち全員で何人なの」
「3人!」
 案の定ほとんど進んでいないタクシーラインで待機していたスクールメイトを救出し、家に向かいだしたはいいものの、道はちょっとした洪水。電灯の消えた暗闇の中を、それでもタクシーはぶっ飛ばしていく。4WDの耐久レースのごとく泥水の中を進み、いつ道を外れて転落してもおかしくない、全く先の見えない最悪の視界だった。
 あまりのことに全てが自分の管理下から外れ、笑えてきた。

 まず最初に私の家に着いた。タクシーのドアは右側しか開かず、一番奥に座っていた私のためスクールメイトが一時降りてくれたのだが……。
「ぎゃー!」
なんと家の前の溝代わりのくぼみが大きな濁流となり、ごうごうと流れている!
一人のスクールメイトはタクシーに必死に捕まり、流されそうになっている。
なんとか濁流を超え、二人を見送り、家にたどり着いたが、この様子はもしかしたら停電!? 真っ暗で部屋への階段までたどり着けない。というのも昨日からの悪天候のため、私の棟の扉が頑丈に閉まっており外に出られないので、別の出口を発見し、そこから出入りをしていたのだが、こうも真っ暗だと本当に何も見えないのだ。
 しかし危機的状況には生きようとする本能が自動的にオンになるらしい。
私は傘で周囲をたたき始め、目をつぶって頭で見始めた。
するとなんとか自分の棟へと続く扉を見つけ、やっとのことで部屋にたどり着いたのである。
 自分が誇らしくさえあった。
20センチのガラスに入ったマリア様のキャンドルに点火し、パソコンの明かりで着替え、iPodで英語を聞きながら、無理やり眠りについた。

 翌朝、金曜日。
もちろん未だに停電=水が使えない。
コンタクトなのに顔が洗えない。授業は11時からだが、今日も雨風だ。また先生が来ていない可能性が強い。どうする?
私は学校を休む勇気を選択した。=勉強するための継続した時間を確保するために。
つばで目の周りを洗い、わずかなペットボトルの水でコンタクトをつける。
とりあえず日中の明るさがあるうちに出来ることをしておかないと。
ペットボトルを持ち、雨水を採取するために1階へ降りると、家の裏側に蛇口を発見した。
なんと水が出るじゃないか! ペットボトルを満タンにし、部屋に篭ることにした。
石鹸を手につけ、ペットボトルの水で流す。水が足りないので手ぬぐいでふき取る。

 18時。再び暗い夜がやってきた。
何ができるか。それだけを考える。
寒さを紛らわすため部屋の中を歩き回りながらipodで英会話を聞く。

 23時。部屋の明かりがついた!
二日ぶりのシャワーを浴びる。DVDでロストを見る。パソコン充電、インスタントラーメンにジャスミンティーを作る。文法を学ぶ。手ぬぐい洗う。
 隣の部屋からはずっとギターを練習する音と数人?の女性の声も聞こえる。夜中の2時だというのに。正直うるさいが、別のことに集中して気を紛らわすくらいはできた。

 こうして最悪な二日間は過ぎ、本日めでたくランドリーから紛失していたズボンの紐も返してもらった。隣室からは一生懸命ビートルズを練習するギターと歌が聞こえてくる。

 フィリピンの雨季は「今出来ること、楽しむこと」を教えてくれる。
 

フィリピン日誌8 -落としたのは金かね銀かねー

スニーカーが沈没したかと思えば傘が盗まれた。
台風で学校が休みになり、昼食を共同ダイニングで食べた後のことだ。
建物の外に出ると、そこに置いてあったはずの私の折りたたみ傘は忽然と姿を消していた。
うそ~ん?!
あれ、骨が二本折れてるのに?

 というわけで今朝。
誰かの物音で目を覚ますと、依然として強い雨風。
どうする? 休んじゃう? 
しかしここ数年、仕事を休んだこともなければ、学校を休むなんて、中高青金賞の私の真面目さが許さない。
地球の歩き方フィリピンを開く。デパートは10時開店か……。
 11時からの1限目だけ休んでダウンタウンへ買い物に行くか?

 ガタン!
まだ朝の6時半だというのに、誰かが1階に降りていった音がする。
よっしゃ。
急いで顔を洗い、コンタクトをつけて、とりあえず追いかけた。
 すると一階のソファの上に立派な傘があるではないか。
私の傘を盗んだ人の気持ちが分かりかけたその時、大きな男性の影が口を開いた。
「Good Morning.」
そこには現地の男性が、これから出かけようとしているところだった。わ~、神様!
「今困っています! 昨日傘を盗まれて。誰か余分な傘を持ってないでしょうか」
すると男性は自分の持っていた青い傘を差し出し、「僕はもう1本持っているから」と、リュックから折りたたみ傘を取り出した。
「サンキュー! 学校終わったら新しいの買ってきます!」

 というわけで私の部屋には今、金の柄の傘がかかっている。

 これからフィリピンで語学学習を考えている皆さんへ。
雨季がある地域の学校を考えている方がいれば、なるべく乾季に来られることをオススメします。
もちろん雨季でも勉強できますが、レインコート、傘、丈夫なサンダル(舗装状況が悪いため、薄いサンダルは足を痛める危険あり。現地で偽クロックスを買いましょう)は必須。
たびたびの停電、結構な寒さ、布がかびてしまうほどの湿気など、生活が安定しにくいです。

 ああ今日も、ずぶ濡れになって登校せないかんがかぁ。
傘が差せんばぁの風に加え、学校までは歩いて10分の急な坂道やきねぇ。
おおの。

フィリピン日誌7 -電子辞書は面白いー

 電子辞書を引いていて思わず吹き出してしまった。
「癒し」という言葉を和英辞典で探していると、その下の行に「イヤッホー」とあったので開いてみると『興奮した声 yahoo』とあるではないか!

そうなん?! 昔ギャグでヤフーのことを「ヤッホーメール」と聞いたことはあったけど、ほんまにそうながや……。
検索して見つけた時の嬉しさを表現してるってことか。

 これからまじで使おう。
例文:「え、メルアド? ○×△□@ヤッホー.com』

※正しい英語発音はもちろんヤフーです。

フィリピン日誌6 -飾りじゃないのよ乾パンはー

 先週マニラで多数の死者を出した大洪水に続き、今日は新しい台風Pepengが我が町バギオ近くを通過するということで、学校では週末からその話題で持ちきりだった。
 フィリピンでは台風の強さの最高レベル3に対し、このPepengはレベル2ということで、学校の掲示板には非常時に備えての準備の呼びかけ(非常食、懐中電灯、携帯やテレホンカードの準備など)、先生たちからも
「金曜にスーパー行って買出ししときなさいよ」
「Have a safe weekend.」
と真剣に言われる始末。
金曜午後には小学校から高校まで休校になった。
 確かに今日午前中にいつも通りテレビは映らなくなったものの、正直、
「言うほどじゃないんじゃない?」と高をくくっていた。

 しくわし! しくわぁし!
さっき晩御飯を食べにダイニングに行こうとすると!
強い雨風で傘はめくれそうになり、あたりは真っ暗、足元見えず、おかげで激しい水溜りに突っ込み、スニーカーが沈没。
ダイニングは歩いて3分ほどのところなのに、行けないじゃーん!?
しょうがなく引き返し、リッツもどきのスパイシーツナ味を食べながら部屋に篭っている。
これってまるで乾パン?! 乾パンって飾りじゃなかったんだ?

 昨日はまさに嵐の前の静けさ。穏やかでいつもより暖かいくらいの中心街、バギオのセッションロードで実用的&キュートなパーカーを100ペソでゲットし、るんるんご機嫌だったのにもかかわらず今はどうだ。
空腹に耐え、プラスチック製の安イスが寒いので、クッション代わりにGパンを敷き、腰が冷えるのでトレーナーを巻いている。
家の中なのに、来て3週間もたつのに、未だにサバイバル生活!
英語の知識よりも、サバイバル知識とグッズがレベルアップする毎日。
ライターの場所だけは、いつも確認済みだぜ!

 風邪で多くの生徒がやられていく中、健康管理完璧な私。
手ぬぐい、ナイフ、マリア様キャンドル、バックパックetc、実用的なものにはホント頭があがらない。

 唯一実用的じゃないのは、私くらいのもんだ。

フィリピン日誌5 -惨敗な日々ー

 フィリピンのグリーンヴァリーで暮らし始めて2週間目が終わろうとしている。
英語語学学校の生徒は週末は大抵、ダウンタウン(街)に出かける。
それに習い、昨日は海賊版DVDショップに出かけた。
というのも、アメリカ人気TVシリーズの「LOST」5巻セットを買ったはいいが、4巻目は中国語字幕のみ、5巻にいたっては字幕がないのである。
交換を頼んだところ、「ソーリー。4巻はそういうのしかないのよ。でも5巻は明日来てくれればチェンジするから」というので、再来店したのである。
なのになのに!
女性店員のリリーは私が来てから新しい5巻を探し始めた。
え~っ。用意してないのかよ。普通なら確認したのを準備しとくべ?
そして彼女はチェックのため新DVDをデッキに入れ、こうつぶやいた。
「どうか字幕が映りますように!」
え~っ!?
案の定字幕は映らず、彼女は続けた。
「来週なら日本のが入荷するから、それなら確実に字幕映るから、また来れる?」
は~? タクシー代返せ!
「リリー、確実? それにリリーはいつもここにいるの?」
「いるわ。この間いなかったのは、ラマダン(イスラム教の断食期間)明けの祝日だったから。私ムスリム(イスラム教徒)なの」

 というわけでムスリム娘に惨敗して学校に戻ってくると、たびたび起こる停電について日本人女生徒3人が激怒していた。グリーンヴァリー全体が停電なら納得いくが、どうやら学校関係者の部屋のみ停電らしく、経営が苦しいオーナーによる故意の停電ではないかという推測まで持ち上がっていた。
 さらに学校食のまずさについても、「なんで生徒はあんな調理法と味で文句を言わないのか」と、試食したフィリピン人の先生が言っていたそうで、結論として「日本人は文句を言わないから」ということに行き着いてしまった。

 私なんかは大抵のことは我慢できるor気にならない歳であるので、アクシデントを文句も言わず受け入れがちだけど、やはり異国ではいつもより強気に意見することにトライすべきだと思ったのでした。じゃないと損するべ。

 昔、夏には政府が移行してきたというバギオでさえ、街の中心の道路状況は悪く、日本の感覚で歩いていては危険。有名ショッピングセンターで売っている服でさえ、平気で糸が飛び出たりと縫製が悪く、道には目を悪くした物乞いや、子犬を片手で持ち上げて勧誘する人々、シートを広げてフリマのように小物を売る山岳からのおばちゃん、信号のない道を人とジプニー(小型ボンネットバス)とタクシーがごちゃ混ぜで行き交う。

 ちょっと正直、この混沌さに嫌気さえ感じてしまった。
もっと「外国人」という自意識を無くせば、溶け込めるのだろうか。

 ああ、温かいお風呂に入りたい。

フィリピン日誌4 -彼女が笑わないワケー

 授業4日目が終わった。
辞書を使えば一人でもできるリーディングクラスに疑問を持ち始めたので、他の生徒さんに聞いてみたところ「テキストなんか開かないよ。いつも50分間、四方山話してるね。今日はフィリピン戦の日本人司令官について話してたし」と、返ってきた。
 そ、それだ!
高いお金を払って来てるのに、私のやりたいことは会話であって、リーディング(読解)なんて中高校生じゃあるまいし!
そう、なんでこんなにリーディングを毛嫌いするかというと、実はこのクラスの先生に理由がある。彼女、不自然なくらいに笑わないのである。一日の一番最初の授業だから、楽しくいきたいではないか。なのに毎日ノー・スマイル、ノー・ユーモア、ノー・余談、オンリー・真面目に長文を解くだけ。おいおい、一人でもできるっつーの!
失恋でもしたんじゃないかと心配になるくらい重苦しい空気が、二人きりの教室にどっしりと腰を据えている。おいおい、フィリピンらしくないじゃないか!

 そして今日。いつもより1時間早く起き、昨晩出来なかったリーディングの予習をして学校に行ったところ、なんと彼女は欠席だった。
おいおい、本当に失恋でもしたんじゃないよね!?

 事の真相の一部は4限目に明らかになったのである。
4限目、リスニング(聞き取り)の先生と会話をしていたときのこと。
「先生、私、今日早起きして予習したにも係わらず、その科目の先生が休みだったんです!」
『え、まさかマンツーマン授業なの? ワオ。彼女、私の友達なんだけど、今朝のメールの返事がまだこないのよ。何かあったのかしら』
「何があったんでしょうね……」
『ところで彼女、笑わないでしょ』
「!! イグザクトリー(おっしゃる通りで)、ティーチャー! エブリデイ、ノー・スマイルなんです! 私の1日のスタートを切る大事な時間なのに、ホワイ!?」
波に飲まれそうになったサーファーの元に来た救助ヘリにしがみつく思いで、私は必死に聞いた。するとリスニングの先生は梯子を降ろした。
『ここだけの話、実は、彼女昔は普通にフレンドリーにやってたのよ。にこにこスマイルでね。そしたらある日男子生徒が彼女の元にやってきて』
「ま、まさか?」
『「I love you!」』
「リアリィ!? でも私は女生徒ですよ? ホワイ?」
『知らないわよ~。多分彼女の作戦ね。そうすれば生徒は真面目に宿題をやってくるから。この学校で同じ作戦の先生はあと一人いるわ』
「まんまとひっかかった~!」
『だからもし私とあなたと彼女、3人一緒なら、彼女は笑うわよ」
「……」
そういえば、先生同士の会話では、にこやかな彼女の声を聞いたことがある。
How do you think about her?

 解決方法は、私が彼女を笑わせることだよね。
例え今日も停電でも。

フィリピン日誌3 -英語語学学校1日目ー

 授業1日目。
むっちゃ疲れた。
8時から15時までの6時間授業に加え、文法と語彙の2時間ナイトクラス。
計8時間は頭が膨張する感覚だ。
明日から早速ナイトクラス(自由参加)は休もう。
しかし、昔は外見のファンで、ナイキマークの入った黒のniceデザインのバンダナを買ったが、あれから数年も経って、まさかアンドレ・アガシについてのテキストを予習することになるとは……。

 今日はマンギさん(うちの学校用のあだ名)と初めて話した。
JICAのスタッフとしてパプア・ニューギニアで2年間生活していた40代の日本人男性で、なんと現地で強盗に押し入られた体験があるという。
銃を持った4人組が家の鍵を壊して侵入し、あらゆるものをかっさらって行った。
「布団をかぶっとけ」と強盗に言われ、言われるがまま、なんとか命だけは助かったが、奴らはパンツまで持っていったとか。
「何に使うんでしょうね。多分履くんだと思いますけど」
 そんな目にあってなお、治安が悪いほうに入るフィリピンに来るなんて、たくまし過ぎるではないか。
「パプアはフィリピンよりも治安悪いですから。JICAの中で唯一女性が派遣されない国と言ったら分かるでしょうか」

 The World is just awesome.
世界は本当にすごい。
(この寮で見られるケーブルテレビ『ディスカバリーチャンネル』のコピーより)