日本人はlightning(稲妻)のことを、しばしば間違えてthunder(雷鳴)と言ってしまうそうです。私も日本で英語を教えている知り合いから、「日本人はなぜlightningをthunderと呼ぶんだ?」と聞かれたことがあります。

英語のthunderは「音」のみを指す言葉なので、“I saw thunder.”とか“The thunder struck the tree.”はおかしいのですが、次のような理由で誤解をしてしまうのでしょう。

1.日本語では普通「カミナリ」という言葉で、「ピカッ」という光と、「ゴロゴロ」という音の両方を表わす。(ちなみに英語にも、“thunderbolt”という光と音の両方を表わす単語があります。)

2.「サンダー」というカタカナ語が、「ライトニング」よりもはるかに良く知られている。

「雷(かみなり)」を広辞苑で調べると、「神鳴りの意」と書いてあります。しかし「カミナリが落ちるのを見たことある?」と普通に言うように、現代語では音のみを表わす訳ではありません。

また、この漢字の部首が、電気の「電」の字と同じなのも、何となく光を指しているように感じさせる理由なのかも知れません。

映画“The Sound of Music”に興味深いシーンがあります。嵐の夜、雷を怖がって部屋に走り込んで来た子供たちに、ジュリー=アンドリュース扮する家庭教師のマリアが稲妻と雷鳴の関係について、このように語ります。

“The lightning says something to the thunder, and the thunder answers back.”

(lightningがthunderに何か言って、それにthunderが返事をしているのよ。)

二つの違いを明確に示す良い例かと思います。

...話は変わりますが、このシーンの後に、マリアが「悲しい時には好きなものを思い浮かべなさい。」と歌いだすのが名曲“My favorute things”です。この歌のメロディーは、JR東海の「そうだ、京都行こう」のコマーシャルで今も使われています。

初めてこのコマーシャルを見た時、「“My favorite things”と京都とは、なんというミスマッチ!」と思いましたが、最近ではこの曲を聴くと、嵐山の紅葉や金閣寺を思い出すまでになりました。慣れとは恐ろしい...

追記:

thunderboltはカミナリそのものを指すより、「思いがけないこと」という比ゆ的な意味で使われることが多い、とアメリカ人の先生から聞いたのを思いだしました。

例:The news came as a thunderbolt to him. (ジーニアス大英和)

  (そのニュースは、彼には寝耳に水だった。)

英辞郎には「青天の霹靂」を意味する表現として“thunderbolt out of the blue”や“thunderbolt from a clear sky”を載せてますが、これらも同様の例でしょう。