以前は皆が習ったのに、最近では熟語集のような教材からも姿を消してしまった表現に

“It's raining cats and dogs.”

があります。

「大雨が降っている」という意味のイディオムです。

起源については諸説があるようで、ネット上でも

「雨が降ると屋根が滑って昼寝をしていた犬やネコが落下してきたからだ。」

とか

「犬とネコは仲が悪く、屋根の上で喧嘩するとすごくうるさい所からこの表現が生まれた。」

のようなものが見つかりました。
 
日常的に使われる表現ではないという人も多く、アメリカ人やカナダ人からは「会話で使うのは自然でない」とか「物語で出てくるような表現では?」といった話を聞いたことがあります。

一方で、あるイギリスは「よく聞く表現ではないが、使ってもそんなに不自然ではないのでは?」と話していました。また、少し前に英会話学校であったオーストラリア人の若い女性(当時25歳くらい)は、「自分は使わないが、おじいさんが使ったのを聞いた覚えがある」と言っていました。地域や世代の差もあるようです。
 
また、別の講師からは「それほど大降りでもない時にのにこの表現を使うのはやめた方がいい」という助言をもらいました。日本人学習者には多いミスらしいです。

…この表現について、あるアメリカのESLのサイトで、

「“It's raining like cats and dogs.”のようにlikeを入れることもある。」

と主張するカナダ人と、

「そんな言い方はしない」

というアメリカ人がバトルを繰り広げていました。実際にはlikeを入れるような言い方はないようですが、日本の学校で教えるような表現を、ESLサイトで英語の質問に答えるようなネイティブが間違えるというのはちょっと意外でした。

まあ、我々が「すごく雨が降っている」と言いたい時は、

・It's raining a lot.
・It's pouring.
・It's really coming down.

のような表現を使った方が良いと思います。

最後の例もよく使われる決まり文句らしいです。「雨」という言葉はありませんが、日本語でも「土砂降りだ」だけで「雨のことだ」と分るのと似ています。

...この表現に限らず、「知っている」表現と「使うべき」表現を区別するのを忘れてはいけないな、と改めて思いました。