だいぶ前に『名前を繰り返す代わりに使われる表現 』 という記事で、代名詞の代わりに人物のプロフィールを使う表現法について書きましたが、その第二弾です。今回は「人物」ではありませんが。

...日本では不思議なほど話題になりませんが、今年のヨーロッパの競馬界では「十年に一頭」クラスの名馬が、歴史に残る驚異的な活躍を見せました。

Sea The Stars(牡3歳)は、昨年のデビュー戦こそ4着に敗れましたが、その後怒涛の快進撃を開始し、9月までに本場のダービー等のG1レース5勝を含む7連勝を記録しました。

そして今月の4日、欧州最大のレース「凱旋門賞」を迎え、ここでも並みいる強豪を相手に完勝しました。(レースの模様は
こちら です。ゴール直前にアナウンサーが“A horse of a lifetime!”と絶叫しています。馬群を割って出るときの瞬発力は驚異的です。)

以下の英文は、Racing Postというイギリスの競馬専門紙のweb版で見つけた、Sea The Starsの去就に関する記事です。太字の表現に注目してご覧下さい。

Stars would be a Classic 'monster' - Woolley
The trainer of shock Kentucky Derby winner Mine That Bird has said that Sea The Stars would prove to be a "monster" were he to travel to the US to contest the Breeders' Cup Classic on November 7.

スターズはクラシックで「怪物」になる、とウーリー語る
ケンタッキーダービーで驚くべき勝利をあげたマインザットバードの調教師は、もしシーザスターズがアメリカに渡り、11月7日のブリーダーズカップクラシックに出走すれば「怪物」であることを証明するだろうと語った。

A decision is awaited on whether the devastating Prix de l'Arc de Triomphe winner will run again or be retired to stud, with owner Christopher Tsui stating in an interview with the Racing Post on Monday that it was 50-50 whether his star performer would be seen again on the racecousre.

凱旋門賞の圧倒的勝者が再び走るのか、それとも引退して種牡入りするのか結論が待たれるが、オーナーのクリストファー=ツィ氏は月曜のレーシングポストのインタビューで、彼の看板役者が再び競馬場で見られる可能性は五分五分だ、と語った。

The decision is said to rest with Sea The Stars' trainer John Oxx and a spokesman for the Tsui family played down a report in a national newspaper on Wednesday that the decision had already been taken to retire the colt.

その決定はシーザスターズの調教師ジョン=オックスの考え次第だと言われており、ツィ家のスポークスマンは、このコルト(牡の若駒)の引退はすでに決定したという水曜の全国紙の報道を打ち消した。

Sea The Stars is as short as 4-6 favourite with Boylesports and Betfred for the richest race in the US, as the world awaits news of whether the 2,000 Guineas and Derby winner will stake a further claim to greatness on the artificial surface at Santa Anita.

シーザスターズは、アメリカ最高額レース(ブリーダーズカップクラシックのこと)での人気が、ボイルスポーツやベットフレッド(ブックメーカーの名前)のオッズでは4対6という断然の一番人気であり、この2000ギニーとダービーの勝ち馬が、サンタアニタの人工コースで、その偉大さを更に不動のものにするつもりか否かの知らせを、世界中の人が待っている。

Chip Woolley, who trains 50-1 Kentucky Derby hero and Classic contender Mine That Bird, said: "I've seen a couple of his races. He'd be a monster if he came over."

50対1の人気薄でケンタッキーダービーに勝ち、ブリーダーズカップクラシックにも出走するマインザットバードの調教師チップ=ウーリーは「彼の走りは何レースか見たよ。もしこっちにくれば、怪物になるだろうね。」

Breeders' Cup chief executive Greg Avioli has predicted that an appearance by Sea The Stars at the Breeders' Cup would add 10,000 to the crowd at Santa Anita, and spark an extra $10 million betting revenues...

ブリーダーズカップの最高責任者グレッグ=アヴィオリは、シーザスターズがブリーダーズカップに出走すればサンタアニタ競馬場の来場者は10,000人増え、馬券の売り上げも1,000万ドルは上積みされるだろう、と予想している...

上記の記事では、Sea The Starsのことを、heと代名詞で受ける以外に、次のような表現に言い換えて、戦歴などを紹介しています。

・the devastating Prix de l'Arc de Triomphe winner 「圧倒的な凱旋門賞の勝ち馬」

・his star performer「彼(オーナーのC.ツィ氏)の看板役者」

・the colt「この牡の若駒」

・the 2,000 Guineas and Derby winner「2000ギニーとダービーの勝ち馬」

競馬に関心のない方に親しみやすい例ではないか知れません。しかし海外競馬ファンとしては、この歴史に残る優駿と時代を共にした喜びをブログにも是非記しておきたいと考え、あえて選びました。

...その後Sea The Starsは引退、種牡馬入りが決定しました。通算9戦8勝、うちG1が6勝という素晴らしい戦績です。引退は残念ですが、彼の二世の活躍を期待したいです。

追記:レースのビデオの一番最後に、アナウンサーの次のようなコメントがあります。

...He (Sea The Stars) goes into the roll of honor beside Ribot, Sea Bird, Dancing Brave, Mill Reef.. A geat performance.

「...シーザスターズは、リボー、シーバード、ダンシングブレーヴ、ミルリーフと並んで栄誉者名簿(ここでは凱旋門賞優勝馬リストの例え)に載ることになります...すごいレースでした。」

ここに挙げられた馬は、いずれも欧州の史上最強馬候補ばかりです。これらの「超」がつく名馬たちと並び称されるほどの活躍を、シーザスターズは見せてくれたわけです。