190405 bonobo / liquidroom
ボノボが緊急来日するという。
ひと月以上前に発表しておいて何が緊急なのかよくわからないがとりあえず即買いした。
ボノボは去年モントリオールで2回観ているが、この人のギグは何度でも観たいやつなのですぐに買ったほうがいい。
DJという字面に、「ライヴが観たかったのにー」勢は不安をおぼえるかもしれないがそんなものはほぼ杞憂でしかない。
ボノボによるDJは「曲をつなぐDJ」ではなく「別の人の曲も使うボノボのライヴのようなもの」だからだ。
ものすごいうまいDJ というのではないが、鳴らす音すべてがボノボになるのだ。
ところで当方の感覚だとボノボは日本だとどうもマイナーというかマニアックな部類に入るので来日すると聞いてもテンションが上がるのはマニアックな人たちだけのように思える。
一方で海外、というかモントリオールだとかなり知名度は高いらしく、そこそこ音楽を聴く人なら割と広く知られている部類に入ると思う。
例えば日本だと、ボノボを知っているならローレルヘイローもジョンディグウィードも知っていると思う。
ところがモントリオールでは、ボノボは知っていてもそれらのアーティストは知らないといわれたことがある。
このことからボノボは日本で微妙にマニアックなだけで海外ではかなりメジャーなのだろうなと思う、とここまで書いてきて気づいたが、ローレルヘイローやジョンディグウィードのほうがボノボよりもマニアックなのは日本でも同じような気がするので実はそんなにメジャーではないのかもしれない。
まあ、そのマニアックなボノボも来日するとなれば普通にソールドアウトする。一部のマニアックな人が知っているだけと書いたが、その一部のマニアックな人の数は一つの市場を普通に動かせるぐらいには多いのでソールドアウトぐらい普通だ。
なので今回ソールドアウトしていないと聞いて驚いた。まじか。ということはそこそこ空いているのか?
そう思って会場に入ったが、空いているかもしれないという幻想は簡単に砕けた。
激混み。
あの人口密度はおかしいだろう。ちょっと前に行ったアメリーレンズ程ではないにしても当方が知る限りのリキッドルーム史上では最も混んでいた。
ステージの位置だが、特殊な位置にあった。
リキッドルームはフロアの扉をくぐるとロッカースペースがあって、そこから2メートルくらい進むと開けた場所があってそこがライヴスペースとなっている。
右側にステージがあって通常はそこでアーティストがパフォーマンスを行う。
そのステージがある右側ではなくまっすぐ見た奥側はイヴェントによってはDJスペースになっている。で、左側にはPAブースがある。
見るとステージにもDJスペースにもボノボはいない。しかし音は空間に充満している。その音は確実にボノボによるものでほかのアーティストに出せるものではない。
少し見回したがその時はどこにいるかわからなかった。が、しばらく後にそれは判明した。DJスペースの横、PAブースの横の階段を上ったあたりにステージが組んであり、そこでボノボが機材を操作していた。
何このリキッドルームの仕様。めずらしっ。初めて見たわこんな組み方。
というかボノボがどこにいるのか最初はわからなかったと書いたが、それがなぜなのかと述べるなら、人が居過ぎてたからだ。
フロアを照らすのは空間に放たれるレーザーと照明のみでVJは居ない。
なのでフロアにどれだけ人が居るのかは明確にはわからないのだが、それでも隙間がないほどの人口密度でうごめいていることはわかる。
少し進むだけでもちょっとした努力を強いられる。
なんでこれで入場規制かかってないの?
リキッドのソールドアウト公演は一度だけ来たことがあったがそれでもこの日ほど混んではいなかった。
その時はコーネリアスの公演だったのだがこの日のように、フロアに入る前からすでにやばい、みたいな混み方ではなかった。
その状態が軽く2時間は続いた。つまりラストまで続いたわけではなかったのだが4時間以上に及ぶロングセットだったからだと思う。
しかしラストの時点でも十分混んでいて、普段なら「かなり混んでいる」状態に分類されるぐらいには人が多かった。
ただ、人が徐々に減っていったのはロングセットだからだというわけではなく、スタイルをいくつか使い分けていたからだと思う。
そのスタイルを述べる前にボノボの音について軽く分析してみる。
ボノボは多層的な高域パーカッションとそのエスニックなリズムが特徴的なアーティストで、バスドラはほぼシンプルな四つ打ちだが低音域でなるのはほかにはベースのみなのではっきりと鳴りリズムはわかりやすい。
そこにベースとシンセのリフ、断片的なメロディが鳴るところを高音域のパーカッションが支配的に響く。
高音域といっても耳にうるさいものでは全くなく、シェイカーなどの音を使っているので有機的に鳴り渡る。
それも高音域だけで鳴るのではなく中音域成分もしっかり鳴っている。
というのがボノボのスタイルだと思うがこれはDJでもライヴでも変わらない。
で、今回のDJではまずこのスタイルから始まった。
フロアに入って音を浴びた瞬間にそれがボノボだとわかるくらいにわかりやすいボノボ感があった。
時々ボノボ自身の曲を入れつつ展開は進み、ある時点で再びボノボの曲をかけてフェードアウトっぽい雰囲気を出した。
何時間の公演なのか知らなかったのでそれで終わりなのかと思ったが直後に別の曲をかけたのでまだ続くのだと思った。
その別の曲は、それまでの曲が有機的な高音域で代表されるようなボノボらしさにあふれていたのに対して雰囲気の違うものだった。
単純で力強い低音域と複雑な高音域というカラーはそのままだが、和音のピアノをパーカッシブに鳴らすとかソウルミュージックのような声ネタを多用するなど、一言でいうとディスコっぽかった。
ボノボを求めている人たちのうちでディスコは求めていない人が何割かいたのか、それでラストにかけて徐々に減っていったのだと思う。
それでもかっこいいDJではあったのだけれど。
まねしたい演出もたくさんあったし。
たとえば高音域のパーカッションであえて中音域をマスキングし、そこでなっているシンセを埋めてみたり、逆に多層で鳴っているのを単層に減らして物足りなさというか落ち着きをつくりだしたり。常に鳴っているような感じなので外すと落ち着いた雰囲気になる。
音色のある楽器はそれほど豊富ではない。ちょっとしたギターのリフや和音のシンセ、エレピの音などや声ネタなどほぼ単一だが効果的に鳴らされるため物足りなさを感じることはない。
その上にストリングス系の長めの音がたまに響く一方で低音域ではシンセベースが唸る。
エスニックに鳴らす集合的に金物が鳴っているところに低音域を削ったバスドラが入ってきて、1小節後にその低音域を少し戻し次の小節で完全に戻し、4小節目でかなり削ってから次の小節からなっている音を消してストリングでメロディを奏でることで動から静への転換を演出する。
2小節単位で、3拍目まで高音域のパーカッションはハイハットだけで4拍目から5拍続けて909のスネアを連続的にならすことで途切れたと思わせながらなり続けるのを飽きさせることなく魅せる。
ドラムがガチャガチャ鳴ってる中にヴォーカル的な声ネタを投げてそこにフォーカスを当てる。ヴォーカルが終わると同時にハイハットとバスドラを戻す。
フェードアウト気味のところからガラッとシンセの和音リフをアタック強めで始めてハイハットを入れてリフのカットオフを絞りながら低音域を削ったバスドラを四つ打ちで鳴らし、そこから低音域を響かせたバスドラとベースの二つだけに音を切り替えた、と思ったら3拍目に一拍だけリフを戻し、バスドラとベースと短いリフのまましばらく進む。
そこから今度はバスドラの低音域とベースを削って、そのあとに明るいシンセの和音リフのみに切り替える。
そして先ほどと同じようにハイハットと高いバスドラを入れて、バスドラとベースとシンセリフでごんごん鳴らす。
安定したバスドラと多層化されて安定化した金物、それとリフを鍵盤で鳴らす一方で効果的にメロディを挟んでくる。メロディが終わると同時にバスドラを消しストリングス系の音を入れる。そこからバスドラを少しづつ戻して滑らかにメロディを開始。
とか。
上記のように今回のボノボは当方にとって3回目だが、3番目によかったと思う。
それってワーストじゃねえか、とか思う人もいるだろうがニュアンスは全く違う。単に他の2公演が良すぎたのだ。
片方は野外フェス(極寒だったが)で、もう片方はライヴだったからだ。
今日の様子を観ていて真っ先に思ったのは、これは屋内じゃなくて野外で観たい、というものだった。
曲の雰囲気がすでに屋外だしボノボクラスのアーティストを呼べる箱もそんなにない。
アゲハなら呼べるだろうがアゲハの雰囲気はボノボには違うと思う。
それと、今回の公演が3番目によかった理由として、日本の公演だから、というのがあるように思う。
海外では何がかかろうともかっこよければ最高、みたいな雰囲気なのだが、日本だと知ってる曲がかかってほしい、という願望があるのか本人の曲だと盛り上がり方の次元が違う。
今日のDJでもボノボが自分の曲をかけるとその瞬間からフロアが沸き始めた。こういうのは日本特有なのだと思う。
とはいってもやはりボノボなので、どういう環境だろうとかっこいいのは間違いない。
また来日してほしい。今度はできればライヴで。
あと最新の音源が出たのは3年前なのでそろそろ新しい音が聴きたい。
DJミックスはちょいちょいリリースされてるがそういうのではなくて。
ラストのアンコールで新曲らしきものをかけていたが、もしかしたらあれは新作の前兆なのかもしれない。
低音域を削ったバスドラから入ってハイハットが入ってからバスドラを戻してシンセのリフを乗せる。
そこに断片的なメロディを入れて、メロディが終わるとバスドラを抑えてリフを表に出す。
そして再びバスドラを表に出すとともにメロディも鳴らし、そのまま曲の終わりへと続く。
アンコールでかかったのはそういう構成の曲だった。
(ボノボの曲を聴きながらこの文章を書いているのだが、今ちょうどその曲がかかった。
キアスモスのボノボによるリミックスだった。それも一年前に発表済みのやつ。新曲ではないのか。)
その時に初めてボノボのいるブースを見たのだがボノボの後ろからは高輝度のLEDが照らしてきていた。
スモークもいい具合にたかれていたのでその様子は後光が差しているように見えた。
後光というか夜明けの光というか。
モントリオールでの公演もそうだったのだが、ボノボといえば曙光というのは世界共通なのかもしれない。
講演が終わって出口に向かい、扉に入る前に後ろを振り向くとちょうどフロアが通常の照明がつけられていた。
その色は暖色系で、スモークもいい感じに焚かれていた。
そこからフロアにいた人たちが当方と同様に出口に向かっていたのだがその様子が光の中から出てくるように見えて、そうか今までボノボを聴いていたんだ、と今更のように実感した。
ところでリキッドルームのある通りは枝垂桜が植えてあって、この時期はちょうど開花している。
何本か植えてあるぐらいだが、この時期のあの通りは少なくとも都内では最も綺麗だと思う。
それを夜明けにボノボの余韻を残した状態でしばらく眺めていた。
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