mutek_jp 2025 day4
Kyoka + Ami Kusakari (Sakanaction) – Ukabu Oto: superposition (JP)
なかなか激しめなインドストリアルアンビエント。素晴らしい。
インダストリルテクノの女傑kyokaとサカナクションのベーシスト草刈愛美のユニットによるアクト。
数日前にこのアクトについてドミューンでトークしているのを観たがそこでの話によると今日のライヴは眠るための音楽で、でもラストだけビート激しめでその音によって眠った観客を叩き起こし次に繋げる、というようなことを話していた。
しかしその記憶は勘違いかもしれない。
実際のライヴはまあまあ激しめだったからだ。
ライヴ始めにkyokaがライヴ内容に関して軽く解説し始めたがその途中から隣で草刈嬢がノーパソをいじり深い低音を鳴らし始めた。
アンビエントだと聞いているからまあ低音から始まってもいいか、と思って聞いていたが睡眠のためのものとしてはその低音がやけに深く様子がおかしい。
首を傾げていると今度は強めのキックがドンっ、ドンっ、と鳴る。
ま、まあアンビエントでもビートぐらいあるよね、とか思っていたらけたたましいインダストリアルなビートが混ざってきて、なるほどオッケー、睡眠のためとか聞いたと思ったのは完全に気のせいだったのだな、レッツダンス!
音楽の割り振りは割とはっきりしていて客席から見て左側にkyokaがいてマシンから出す凶悪なビートを、それと横にシンバルがあってそれを叩いていたり、あと多分vj(後述)もやってる。
右側には草刈嬢がいてシンセ(moog one?)とベースで主に低音を鳴らしていた。
kyokaが絡んでいることから想像できるようにメロディアスな要素はほぼほぼなくて、草刈嬢がぎりぎりメロディといえるものをラストに挟んできた感じだった。
二人で奏でられる音楽は予告通りアンビエントがベースだったがそこにインダストリアルなビートが加わる。
後の世でインダストリアルアンビエントとも呼ぶべきジャンルが公知になった瞬間だった。
おそらくあの音楽を睡眠用と位置付けるのは完全に間違っているが音楽としてかっこいいので良し。
さすがだぜkyokaさん!
映像は浅く張った水を手でかき混ぜたりして波紋を立てている様子を白黒にしたものを延々に流す、というものだったがその波紋の感じがいい感じに単純だったり複雑だったりしてみていて心地よい。
最初にkyokaは「実写なのでmutekぽくないです」みたいなことを言っていたがそんなことはない。
十分綺麗でかっこいい。機会があれば真似したいくらい。
そんな感じですごく良いライヴだった。
あと、照明の当て方で二人が完全に黒いシルエットになる瞬間が結構あって、見ている位置から草刈さんのシルエットがよく見えたのだけれど、草刈さんの腰、細すぎ。シルエットがめっちゃ綺麗。
Guillaume Coutu-Dumont & Line Katcho (CA/QC) – Les Empires
骨太アングラテクノとAI生成をベースにしたVJ。直球でかっこいい。
このアーティストに関しては知らなかったが、とりあえずvjがLineKatchoなので映像は間違いないだろ、と思っていたが実際は逆だった。
Line Katchoのvjは古代エジプトのような雰囲気を持つ都市が建造され人が増え、洪水が起き建物が崩壊する、という様子をAIでつくった感じで描いたもの。
AIを使っていると興味が薄れることは多いがこれも例外ではない。
建物が崩壊するところでは質量保存の法則を無視して崩れていたのが面白かった。
崩れたあたりに瓦礫が湧いてくる感じ。AIの映像のケーススタディ。
しかし見ていたら飽きたので映像は見ずに音楽に集中することにした。
音楽はずっと素晴らしいのでその方が鑑賞のやり方として正しい。
音楽は四つ打ちのリズムをベースにした音数の少ない硬派なテクノだが音の使い方がアングラっぽい。
ベースとリードを兼用するような音+ドラムだったりサイン派のリフとドラムでキックはベースを兼ねているものだったり。
音階に使えそうな音の種類は少なく低音ドローンと中音域のロングトーンなど、多くても二つ。
細かい音をレイヤーするなどの小賢しいことはしない。
ミニマルな音の使い方でありながらミニマルさはあまり感じられない豊かさのあるテクノ。
音の雰囲気はベルギーのアーティストのピーターヴァンホーゼンを彷彿とさせる。
曲は全体をつなげずに一曲づつ披露するスタイルで、曲が進むごとに映像の展開も進む。
大抵のアーティストはもうお腹いっぱい、というぐらいの長さをやってくるていたがこのアーティストに関してはもっと聴いていたいと思っていたところで終わってしまった。
Open Reel Ensemble (JP)
イロモノ枠と思っていたが普通にかっこいい。お祭りテクノ。
彼らはかつてはブラウン管で演奏するという特殊な音楽スタイルで話題になったが、当方から見るとそれは単に話題性があるだけなので見なくてもいいアーティストという位置付けだった。
この手のフェスがあるたびに呼ばれている印象はあるがそんなに興味はなかった。
今日もそんなにガッツリ見るつもりはなくて、他のフロアとかあるわけではないし見るか、ぐらいの心算だった。
そういうわけで観たのだが、色々なフェスで呼ばれるのに納得。
あれは呼ばれるわ。
絵面として面白いし音楽としても普通にかっこいい。
雰囲気がお祭りそのもので確実に盛り上がる。
さらに音の感じは祭囃子のようでありながらハイファナを連想させる。
彼らは三人のユニットでそれぞれがそれぞれのやり方でオープンリールを使って演奏する。
オープンリールとは過去に映画撮影時に使われていた巨大なテープのことで両手で抱えるにはちょっと大きいと感じるくらいのサイズがある。
このテープは線を引いたり点を打ったりするとそれがそのまま音になるという性質があるが彼らはさらに特殊な使い方をする。
リールから伸びたテープを棒で叩くとキックのような音に、テープを竿のようなもので引っ張りながら鍵盤を叩くと音程のある声のような音(話声もでる)になり、さらにグリッチ的な加工もしている。
波形をミリセカンド単位の短い長さでループさせるとノコギリ派のような音になるがそれを何らかの方法でテープでやってみたような音もある。
ディレイを短い長さでフィードバックさえると金属のような音になるが同じくそういう加工もしている。
元ネタとなる音はわからないがいくつかはライヴの最中にリアルタイムで録音したものを使っている。
叫んだ音をマイクで録って短くしたり逆再生したり引き伸ばしたり、あるいは曲が終わった後の観客の歓声を録って自演で歓声を足したりそれを逆再生したり。
ライヴの終盤近くでこのユニットの主催の和田氏がマイクで話すところがあったんだけど話す内容は「おいていあ、おいていあ」のように日本語のようでいて意味が理解できない。
その内容はやはりリールに録音されていて逆回しで理解できるようになっていた。
よくわからない言葉に聞こえたものは逆回しによって「ありがとう、われわれはオープンリールアンサンブルです」と理解できるものになったが所々無理な部分があって、「オープンリール#$%&’(’&%(’」のように理解できないようになって、和田氏が頑張ってわかる言葉にしようとして、無理だったけどまいっか!という感じでライヴが続行。
またあるときはリールのテープを外して伸ばし始めると声の録音してある部分が何かの声ネタのように音として鳴って、とおもったらそれを客席に渡してテープを引っ張り続け、ラストに和田氏がテープをちぎるといい感じの汚い音が鳴ってそれで終演。
今回のmutekでここまで観客を巻き込んだアーティストは彼ら以外にはいない。
一緒に盛り上がろうという姿勢がいい具合に作用してる。
彼らは話題性だけのアーティストだと思っていたがそれは完全に間違いだ。
いろんなフェスで呼ばれるのも納得。また観たい。
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