2018/12/9
marginal consort/superdeluxe
スーパーデラックスが来月には閉店ということで終わりに向けて次々とライヴを企画しているらしい。今日見てみたマージナルコンソートもその一つだという。
マージナルコンソートとは何者かと言うと実は当方も全く知らず、今に至ってもよくわかっていない。
わかっているのはライヴの内容であり、そのライヴが音楽領域のギリギリあたりの即興演奏をするということぐらいだ。
即興演奏というのは予め何を演奏するかを決めずに会場でその場に即して行う演奏のことだし、音楽がある程度分かる人にとっては割と一般的と言っていい概念だと思う。
ではその即興演奏が「音楽領域ギリギリのあたり』とはどういうことだろうかと言うと分かる人はかなり減ると思う。
その理由の一つが「音楽領域ギリギリ』という表現にあることはほぼ間違いない。なぜならこの表現は当方がこの文章を書きながら今思いついたものだからだ。
なのでこれをもう少しわかりやすく言うと、と書いたところで言葉に詰まる。音楽領域ギリギリというのが割と間違っていないと思うからだ。それならこの言葉を噛み砕いて言えばいい。
つまり、音楽と言っていいかどうか怪しい聴覚減少、といえば多少ともわかりやすくなった気がする。
音楽というと、かつては譜面化可能なものを指していたが今では譜面化が不可能でもリズムに乗り構成がありさえすれば音楽と呼ぶことができる。
では今度はそのリズムや構成の存在が確認できるかどうか怪しい聴覚減少は音楽と言えるか、というと疑問が残る。イエス、それも音楽だ!とはっきり言えるとしたらその人は一般性から甚だしく乖離しているので論ずることに困難があり、それゆえここでは無視することとする。
まあ要するに、今日見てきた音楽、マージナルコンソールはそういう、音楽と言っていいか怪しい聴覚減少を扱うライヴだった。
会場に入ると中央を広く囲むように4つの卓があり、それぞれに機材が乗っていた。
予め当方が知っていた情報はこれが3時間にも及ぶ即興演奏だということだけだったのでその卓に乗っているものが機材と言っていいか疑問を呈しうる類のものだったことにいきなり首を傾げることになった。
というのも、乗っているものがそれぞれ結構おかしい。
まず1つ目。
笛やカリンバ、ミキサーと自作ベース。ベースとはそのまま、ベースだ。ベーシストが弾くあれだ。その自作。まあおかしくはない。
二つ目。
自作ギターなどの自作弦楽器シリーズ多数。
数えていないが6本以上はあったと思う。なぜそんなにあるのか気になったがまあそういうものなのだろう。
3つ目。
電子機材数点とミキサー、それとシンバル2つにトライバルな打楽器数点。
おお、一番まともだ!
でもその近くに天井から竹のようなものがワイヤーでぶら下がっている。なにこれ?
まあ気にしても無駄だから次。
4つ目。
紙を巻くときに使う芯のようなもの、中に布が詰まったバスケットボール、木材、柔らかいパイプみたいなやつ、なんか銀色のぶら下がってるやつ、針金を通したベニヤ板。
はい、来ました予測不能要素。
楽器と呼べるものが一つもないのが素晴らしい。
ミキサーが一応あるのだが他のガジェット(楽器と呼ぶことには抵抗がある)に埋もれて目立たない。それより卓の端で泡を吐き出し続けている水の入ったフラスコに目が行く。
他の3つの卓に比べてもここだけ異様だ。
この卓の人がライヴの注意事項とか話していたのでリーダーなのかもしれない。
ライヴは5分押しで始まった。まずそれぞれの卓に壮年期に入っていると思われる男性アーティストが付き、リーダーらしき人が三角形の紙を持って自分の卓の前に歩いていった。
そしてその三角形の紙を頭上に持ち上げてそのまま勢いよく振りかぶると、空気が爆発したみたいな音が鳴った。
紙鉄砲、て言ったっけ?あれは。
勢いよく紙を振ると折られた部分が風圧でほどけてすごい音が鳴るやつ。
小学校とかで一時的に流行って、うるさいから早々に禁止されるやつ。
ライヴ頭にあれをいきなりやった。
まじかよ。
あの音をまた聞くことがあるとは思わなかったぞ。
その時点から他の3つの卓からも音が聞こえ始めたのでこの紙鉄砲の音がライヴ開始の合図だったらしい。
なので紙鉄砲はもう無いだろうと思っていたら再び空気が破裂する音がした。
見るとリーダーぽい人がほどけた紙鉄砲を手にたたらを踏んでいた。
まじすか、何発も打つんですか?とか思っているとほどけた紙鉄砲を畳み直し、3度めの紙鉄砲を鳴らした。
そこら辺が紙の耐久度の限界だったらしく、打つたびに受ける衝撃により紙鉄砲はところどころ破けていた。
なのでもうそれ以上鳴らすことが出来ないように思われた。
やっとこの人の前奏が終わったか、次は何をやるのか、と思っているとその人は一瞬だけしゃがんで、何かをつまんでまた立ち上がった。
見ると手には先程のものとは別の紙鉄砲が有った。
まだあるのか。
見ているとまた鳴らし始めた。
紙鉄砲の音はかなり強烈と言っても良く、他の奏者(そう呼ぶことにやや抵抗はあるが)の出す音量を圧していた。
音色としてはパーカッションと言ってもいいように思えたので、もしこれをリズミカルに鳴らしたら音楽として面白くなっていきそうなものだがそこはマージナルコンソート、リズムなんて言うものは存在しない。不規則に紙鉄砲を放つだけだった。
それとこの紙鉄砲、意外と体力を使うのか打っているうちに奏者から「あああ~~!」と声が漏れ始めた。
当方は表現として「~」という音引きを好まない。普段は「ー」を使う。が、この奏者から漏れた声は表現し難かったのでやむを得ず「~」を用いた。つまり、叫んでいると言うより声が漏れているという感じ。
2発目の紙鉄砲も壊れると奏者は卓の方に戻っていった。
さて次は何か、と思っていると卓から何かを拾い上げて前へ出てきた。
そして手には新たな紙鉄砲が。
まだあるのか!
それから数発打ったが、ラストの一発は振っても音が出なかった。
というより紙鉄砲が開いていなかった。
なので状況としては声が漏れただけでだいぶ微妙な感じ。
打ち直すことはなくおとなしく卓に戻っていったのだけれどもしかしたら単に体力切れだったのかもしれない。
紙鉄砲が鳴らされている一方で他の奏者は環境音楽のような音を鳴らし続けていた。
しばらくするとベースと音が聞こえてきたのでそちらの方を向くと自作ベースの人がベースを弾いていた。
驚くべきことに音は普通にかっこいい。
それにうまい。
こんな怪しげな演奏をしていないならば普通にステージで弾けるかっこいいベーシストとして活動できるんじゃないか?
調べていないのでわからないが普段はまともなベーシストなのかもしれない。
ただ、やはり自作ベースなので見た目がだいぶ微妙だった。
シルエットは一般的なベースの形とは大きく異なり将棋の駒のような五角形のベニヤ板にピックアップとかをつないでいるだけ!
なのに音はかっこいいという。
フレットはつくるのがめんどくさかったのか存在しない。
なのでフレットレス。
それをあそこまでかっこよく引けるというのは只者ではないと思う。
目を転じてその人ととは別の弦楽器奏者は見る。しかしその奏者はマージナルコンソートの中ではパンチは弱い、というかまともな方なのだがじゃあ音楽的かと言うともちろんそういうわけではなく、なんとなくで弦を爪弾いているように見えた。
あまりやる気がなさそうなのだが、それにもかかわらず普通に聞けるのでこの人の腕も並ではないのだと思う。
そしてラストの一人はシンバルを備えて電子楽器をいじっていたのでよくも悪くも普通のように見えたのだが、途中で飽きたのか卓の前に出てきた。
卓の前には上述のように天井から竹のようなものがワイヤーで繋がっているのでそれを叩くのかと思ったら、なんと座り始めた。
しかし高い位置に釣ってあるので簡単には座れない。それに釣っているのがワイヤーなので掴むのも難しい。
なのでしばらく奮闘し、なんとか座り仰せた。
そうしてどうするのかと思っているとなんと、釣られた竹を、その上に座ったままブランコのように揺らし始めた。
そして手に持っていた指揮棒のようなものでワイヤーを叩き始めた。
しかもその音があんまり聞こえない。見た目のインパクトはあるのだけれど!
それと奏者はそこそこ年齢の行った人なので見ていて怖い。
というのも釣っているのがワイヤーなのだからいつ切れてもおかしくない。
ワイヤーが切れたりしたらなかなか大きいダメージを受けるのは間違いないぞ。
そのとき当方がいたのはその近くだったので、避難の意味で離れようとすると道はふさがっていた。紙鉄砲の人が再び卓の前に出てきていて何やら音を出していたのだが、けっこう前の方に出てきていたので位置として通路を塞ぐようになっていた。
その手には糸のようなものが握られていて、その糸は卓の足につながっている。
そしてその糸をもう片方の手に持っていた棒で弾くと妙な弾力感のある音がした。
面白いが、それより当方は移動したいのだけれど!
前後ふさがっていて移動できないのだけれど!
まあそれでもなんとかして移動し、自作弦楽器の人の演奏をしばらく眺めていた。
するとその逆方向から妙な音が聞こえるので振り向くと、紙鉄砲の人が今度は卓から生えている金属の棒に手をかざしていた。
そして手をゆらゆらと振るとそのたびに音程が変わる。
あれはテルミンか?
テルミンと言うと最も古い電子楽器で音程を取るのが超ムズイと評判のものであり、ある意味で、というか普通にこのマージナルコンソートにふさわしすぎる楽器だと思う。だからあれが事実としてテルミンだとしても何もおかしくはない。
しかしそのライヴを観てしばらくたった後でありこの文章を書いている今、改めて考えて見るにあれはテルミンと同じ原理を使っただけの自作楽器だったのでは?と思う。
ただ、あれが自作楽器であろうとなかろうとあの音があの場に合っていたことは間違いない。
その後どうなるのかを見てみたかったが、あのライヴ会場は妙に年齢層が高く、そのせいか加齢臭がきつくなっていたので会場を出てそのまま帰ってしまった。
帰りながら、あの会場で一番面白いパフォーマンスをやっていたのは誰だったかと考えてみたが、それはあの紙鉄砲の人だったと思う。
紙鉄砲や謎の糸、それにフラスコの水もそうだが完全に楽器の体型から逸脱したアイテムを楽器として使っていた。
書いていなかったがその人はほかにもパイプを床に叩きつけたり木材や金具を低い高さから自由落下させてたり紙で作った法螺貝を鳴らしたりホーミーのような声芸をやったりでかなりの多彩さを持っていた。布の詰まったバスケットボールを叩いてタブラのような音を出していた。
あれをそのまま音楽と呼ぶことは難しい。
だがあれをうまく使うと面白い音楽が作れるような気がする。
かなり美化した言い方をするとエイフェックスツインの電子楽器ではない音に近くなると思う。