いよいよ荷物取りの日になった。
S弁護士は同行できないが、シェルターの職員2名、警察官3名が家の周りに集結した
まず、警察からⅮが会社に出勤していることを確認。そして、第三者は敷地内に入れないと言っていたが安全が優先され警察官が家の中に先に入り、Ⅾが隠れていないかを確認すると言う。(ドラマみたい)
警察官が手にシャキーンと警棒を伸ばし、わたしに『鍵を開けてください。僕たちが安全を確認してから入ってください。』と家に入ると、すべてのドアを開けて『Ⅾさーん入りますよ!!』と言いながら確認していく。緊迫した空気感の中、警察の安全確認のOKが出された。
意を決して中に入る。ここからは一人で荷物を持ち出さなくてはいけない
まずは子供たちの学用品と服類だ。衣装ケースは持っていけないのでビニール袋にドンドン詰め込んでいく。ふと、子供部屋にあったバッグに気が付いた。
Ⅾが子供たちに『荷物をまとめろ!』と言った日のままバッグが置いてあったのだ。このバッグは三男のものでまた言われるかもと荷物をそのままにしていたのだろう
そして次は、私の私物だ。リビングにも置いてあったであろう私の私物は、寝室のクローゼットに放り込まれていた・・・。すべては持っていけないし、衣装タンスも一人で運ぶのは無理なのでここでも袋に詰める作業をする。
ある程度まとまると、外に行き、市道に止めてあるシェルターの車に乗せていく。
この作業を何度も繰り返した。冬なのに汗をかきながら一人で荷物をまとめているとなんだか悲しくなって涙が出てきた。
こんな風になりたかったわけじゃない。いい思い出だってあった。ただ、Ⅾにされてきた事の積み重ねが私を押しつぶしていたのだ。
泣きながら作業をしているとシェルターの職員さんと警察官が『あと少しだよ!頑張れ!!』と応援してくれた。
ふと、子供部屋にあった子供たちのアルバムが目に入った。S弁護士にもし持っていくとしたら子供のものだからで通していきましょう。返せと言われたら返すつもりで。と言われていた。
このアルバムだけは持っていきたいと袋に入れる。子供たちの下着類を洗面所からとるときに少しだけタオルなどが散乱してしまった。
残り時間はあと5分ほど。さっとかたづけて少しだけ掃除した。(常識の範囲内と書いてあったから私の常識の範囲で)
そして、もう帰ってこないだろうとそっと鍵を閉め、鍵を指定された場所に置いた。
すべての荷物は持ってこれなかった。ひとりでは限界がある。それでも冬を過ごせる用意だけは出来たことがうれしかった。
しかし、この荷物取りのあとにⅮから年内最後の文書が届くのであった。