《閉じこもってる?リョウクが?》

そうなんだよ。授業参観のときは元気だっのに

先生にも褒められたし。お友だちとも仲良く遊んでて

それなのに

先生や父兄の方に挨拶していたら。ひとりで駐車場に行ってしまって。具合でも悪くなったのかと思ったけど、黙ったまま首を振るばかりで。帰りにお気に入りのケーキ屋さんに寄るって約束してたのに。それもいらないって

車を止めるとさっさと降りて。すたすた歩いていってしまった。それでもうがいと手洗いはしっかりやって。着替えのために自分の部屋に入ったまま、出てくる気配がない

《今日、誰かと話した?》

おもしろそうに。くすくすと。今日?学校でってことか...先生と...お友だちの保護者の方と...

《その中に、すごくきれいなひとがいなかった?》

え...思いがけない言葉に、頭をフル回転させる。あ...

《思いだした?》

あぁ。でも...ジョンスさんは男の人で...確かに初めて会ったとき、ママかと思って挨拶してしまった。綺麗だしスタイルもいいし。父親が来ているうちは少ないから。自然と話すようになった

《たぶん、自分でもよくわかってないんだと思う》

どこか落ちつかなくて。そんな気持ちを持て余してるみたい。そうか...少し様子を見てあげて。あぁ。わかった。通話を切って。デリバリーできそうなスイーツを探す。話すきっかけはあったほうがいい

『リョウク?』

控えめにノックしてみても返事はない。ドアを開けてのぞいてみると。小さな背中が、ベットに丸まっている

『入るよ』

二、三歩。近づいてみる。ん?耳をすませると。すうすうと微かな寝息が聞こえた。なんだ、寝ちゃったのか...やらかい髪をかきあげて。さっきのふくれっ面が嘘のような、穏やかな寝顔に安心する。ほかの子よりしっかりはしてるけど。この温かな胸に、いろんな想いを抱えてるんだろう。デリバリーが届いたら起こせばいいか。そのふくふくとしたなめらかな頬を。そっと撫でた




《パパまだまだ修行中》