DH side



『はじめまして。ヒョクチェです』


玄関で。ぺこっと頭を下げる。まぁまぁ。上手にご挨拶できて。えらいわね。ドンへのオンマよ。さぁ。あがって。ありがとうございます。お邪魔します。本当にものめずらしいのか。きょろきょろと、あちこちに視線が飛ぶ


『狭いとこで、ごめんなさいね』


とりあえず、リビングのソファに座ってもらう


『久しぶりに作ったから。おいしいかわからないけど』


良かったら食べてみて。オンマが、まだ湯気のたつソンピョンを持ってきた。ケーキでも買ってこようかって、ゆってたんだけど。この国の暮らしを体験したいんだったら、伝統菓子の方がいいわよねって。ヒョクチェくんが、俺の方を見て。目を泳がせる


『手づかみでいいんだよ』


試しにひとつ摘んでやって。あちっ...お手玉をするように、両手でころがす。熱いから気をつけてね。うん...かわいい前歯で、ソンピョンにかじりついた


『おいしぃ!』


はふはふと。目をまんまるくして。そう、良かった。これはね。秋夕とかソルラルとか、特別なときによく作るのよ。そうなんですね。ハルモニ特製のナツメ茶も、気に入ってくれたみたいで。ごくごくと、喉をならして飲んでいる


『このお部屋は、みんなで過ごすお部屋ですか?』


こんな部屋。きっと、ヒョクチェんちの玄関より狭いだろう。そうだね。最近は...家族全員そろうことは、あまりないけど。全員?うん。俺にはヒョンがいるんだ。あ!僕とおんなじ!ヒョクチェくんが、うれしそうに


『ヒョクチェくん。お兄さんがいるの』


ナツメ茶の、おかわりを持ってきたオンマが。はぃ。とてもやさしくて。頭がよくて。お綺麗なんです。ふふっと、口角を上げる。同じ王子でも。立場はだいぶ違うようだけど。お兄さんのことが好きなんだろうな...


『ヒョクチェくんのお兄さんなら。素敵なひとでしょうね』


はぃ!とっても素敵なんです!その素直さに。思わず、小さな頭をなでてしまった。俺の顔を見上げて。えへへと頬を染める


『ちょっと散歩に行こうか』


あの別荘にこもってばかりだって聞いたから。いろんなものを見せてあげたかった


『お夕飯までには、帰って来なさいね』


オンマの言葉に手を振って。ヒョクチェくんと出かけることにした



《つづく》



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