DH side

 

 

『打ち上げあるんだけど。お前も来るだろ』

 

イワシが。え...またうたってほしいって。みんな、びっくりしてたよ。プロかと思ったって。あ...そう...臆病で。俺たちの影に、隠れてばかりいたイワシは。それこそプロ並みに、落ちついて司会をこなして。二次会までとりまわして

 

『俺。司会だったから。全然、話せなかっただろ』

 

せっかく、久しぶりに会えたんだし。つきあえよ。あ...うん...断る隙もなかった。断る理由もなかったけど。新郎新婦は。挨拶したら、すぐに帰ることになってるらしくて。後は。まぁ...合コンみたいなものだ

 

《わたしの友だちに。手は出さないでね》

 

余計なお世話だ。じゃぁ。祝歌なんてに。呼ばなければいい

 

『おふたりは、お知り合いなんですか』

 

親しく話しているのを見て。どちらの知り合いかしらないが。ヨジャグループが、話しかけてきた

 

『そうなんですよ。何年振りかな。ほんと、偶然で』

 

びっくりしたよ。なっ!がっと。肩を組まれて。あ...うん...

 

『かっこいいでしょ。こいつ』

 

げほ...ばんばんと。胸元を叩かれて。モテてたよなぁ、昔から。そうでしょうね。素敵ですもんね。俺が知ってるイワシは...こんなことしない...俺が知ってる...イワシは...

 

諸々。主導権を取られていることに。少し。いや。かなり、イライラしていた

 

『スマホで音源は流せるからさ』

 

この曲、うたえる?イワシが。ご機嫌に。そうだ...

 

『お前、踊ってくれよ』

 

え...よく、踊ってただろ。まぁ、そうだけど...人気のアイドルの、カバーダンスなんてのが流行ってて。よく踊ってた。それだけ踊れれば。モテそうなもんだけど。あのころのイワシは。致命的に。本番に弱かった

 

『スーツなんだけどな...』

 

仕立てが良さそうなそれは。細身の彼に、良く似合っていた。じゃぁ、軽くね。まったく臆することもなく。にっこりと笑って。ストレッチをはじめた

 

そして...

 

『ヒョクチェさんって。何でもできるんですね』

 

イワシのまわりに。まるで、匂いに惹きつけられた猫のように。ヨジャたちが群がっている。まったくの即興なはずなのに。その踊りは圧倒的で。俺でさえ。目をうばわれた

 

何だよ、これ...

 

こんなはずじゃ...なかったのに...

 

 

 

《つづく》

 

 

@newsen

※画像お借りしましたm(_ _)m

※きのーの更新です