ジョンス side

 

 

目まぐるしく回っていたミラーボールが止まって。ステージに、彼のシルエットが浮かび上がる

 

リズムに合わせて。すたん、すたん、と。ステップを踏んで。伸びやかにしなる手足。羽ばたく指先。波のように揺れる髪。そのすき間からのぞく、艶めくくちびる...

 

踊りながら。さっきのボーイのように。一枚、一枚と、服を剥いでいく。肌が露出するたび。歓声が上がる。ライトに照らされて。胸が。腰が。艶かしくうねる。汗がきらめく...あっという間に、半裸になって。下半身は。ガーターベルトで、レッグカバーを吊っているような様だ

 

扇情的な光景に。心が疼かないわけでもなかった。でも。それよりも。美しい、彼の踊りに魅せられた。そして。見ているうちに。既視感に囚われた。もしかしたら。どこかで...取材とか?

 

いや、ちがう...

 

顔にかかる髪を。無造作にかきあげたとき。ひとつの映像が重なった

 

あの子だ。局で。郵便物を配ってる、バイトのあの子...濃く、アイラインはひいているけど...似てる...

 

それからは、音楽も何も耳に入らなくて。ただ、彼だけを。じっと見つめていた

 

『どうです?』

 

気に入りました?気がつくと。彼の姿は消えていて。肌を晒したままのボーイが。さっきよりも情熱的に、店内を歩いていた。客の膝に乗ってる子までいる

 

『ウニョクって言うんですよ』

 

ウニョク?えぇ。まぁ、源氏名でしょうけど

 

『この店、一番のダンサーなんです』

 

テーブルに呼べますけど。どうします?いや、大丈夫...シウォンは、気づいていないんだろうか...気づいてたら、話してるはずだよな...それから。飲み続ける気にもならなくて。酔ったことにして、タクシーを呼んでもらった

 

 

《つづく》

 

 

※きのーの更新です