ヒョクチェ side

 

 

《必ず会いに行く》

 

それだけを頼りに。それだけを支えに。日々を過ごした。ただ待ってるだけじゃ、ダメな気がしたから。それまで興味がなかった、昇格試験を受けることにした。少しでも。収入を増やしたくて

 

雑然としていた部屋を片づけて。ダイソーで、食器とかそろえて。毎日じゃないけど。ご飯を炊いたりして...

 

いくつかの季節が巡ったころ

 

『お待たせ』

 

ドンへが。いっそう、精悍になって現れた。ボストンバックひとつで

 

『はぃ』

 

何...ぺらっと。手渡されたのは。一枚の紙。証明書。証明...?何の...

 

『病気がないってことの』

 

え...ちゃんとしたかったから。ドンへ...

 

『ほんとに辞めたから』

 

心配しなくていい。ん...それは...信じてた。あと...

 

『これ』

 

ポケットから、取りだしたのは。え...安もんでごめん

 

『もちろん。おそろい』

 

すっと。左手を顔の横に並べた。まるで。芸能人のように

 

『ほら。手、貸せ』

 

僕の左手をひっぱって。薬指に。その指輪をとおした。

 

ふたりでは手狭だったけど。僕の部屋に、そのまま住むことにした。ドンへは。ビル清掃と。コンビニのバイトを掛け持って。無理することはないってゆっけたけど。はやく、きれいにしたいって。具体的には聞いてないけど。僕も。ちょっとだけ助けた。受け取ってくれた分だけ

 

《必ず返す》

 

生活のサイクルが違うから。一緒にいる時間は、意外と少ない。たまに。廃棄処分になるはずの弁当とか、もらってきてくれて。ふたりで食べて。一緒に眠って。週に一度は、運動して。仕事帰りに、待ち合わせして...こっそり、手をつないで。そんなことが。うれしくて

 

でも...

 

僕たちの毎日は。まだまだ。はじまったばかりだ

 

 

《完》

 

 

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