ドンへ side
『いらっしゃい』
シウォンが。紳士的な微笑みの中にも、鋭い眼差しをうかべて。ドアを開けた。リビングに通されて。無意識に、目を泳がせていたんだろう
『彼はここにはいないよ』
それはわかっていた。彼がいるなら。俺を家に入れるわけがない
『ある施設に預かってもらってる』
え...
『お前!あの施設は!』
思わずシウォンの胸ぐらをつかむ。完全には消えなかった痕と。彼が俺にしたことと。なんだ。お前も気づいてたのか。ぐぃっと手をひねられる
『元の施設に戻すわけないだろう』
あの施設は俺が買い取って。スタッフから何から、全部入れ替えたさ。ドクターもつけて。きっちり管理してる
そうか...すこしだけほっとした。彼以外の子たちのことも。気になっていたから。気づいてたなら、なんで放っておいた?それは...くちびるをかむ
『彼を...どうするつもりだ...』
どうするって...お前もわかってるだろ
『彼のうた声には不思議な力がある』
この世界には。そのうた声を必要としてるひとが、たくさんいるんだ
『彼で...金儲けするつもりか?』
慈善事業じゃないからな。収益は全部、彼や施設に還元するさ。見せ物にするつもりも。ムリにうたわせるつもりもない
なぁ...シウォンは。心底、不思議そうな顔をして
『お前は彼を。どうしたかったんだ?』
俺...俺は...
彼のうた声が聴きたかった
いや。彼を独占したかった
そうだ
彼を愛してしまったから
《つづく》
※きのーの更新です