ドンへ side



ジョンウン先輩に連れてこられたのは、古びた倉庫みたいなスタジオで


『入れよ』


重い防音ドアを先輩が押さえててくれて。失礼します...おそるおそるのぞきこんだ、その先にいたのは...うわぁ!まぶし!目が...!


『お、わんこでも拾ってきたか』


長い髪を無造作に結んだヒチョル先輩が。確かにおもしろそうだな...つかつかと俺の前まで歩いてきて。ぐいっと顎をつかまれる。きれーな顔とおっきな目にのぞきこまれて...ちょ...直視できない...


『合格』


ヒチョラ...ジョンス先輩がため息をつきながら


『まだ何も言ってないだろ』


言わなくてもわかるだろ?なぁ、ジョンウン。まぁ...そういうことだけど。ジョンウン先輩が。笑いをかみ殺しながら。それで...


『何が合格なんだよ』


『顔』


堪えきれずにジョンウン先輩が吹きだした。こんなふーに笑うひとなんだ...もっとクールなひとかと思ってた...


『一年のイ・ドンヘ』


ギターも弾けるし、うたはうまいよ。へぇ。もしかして、ライブによく来る子?そう。ふぅん


『じゃぁ、ちょっとうたってもらおうか』


へ?な、な、な、何で...状況がまったく読めない...


『どうした?金魚みたいに、口ぱくぱくさせて』


あ、あの...う、うたうって...何だよ、ジョンウン。何の説明もしないで、連れてきたのか?あ、そういや、言ってないかも。おぃおぃお前な...それじゃ拉致だろ...呆れたように。こほんと咳ばらいをして。イ・ドンへくん。はじめまして。ヨジャイチコロの笑顔で


『俺はパク・ジョンス。そっちはキム・ヒチョル。キミを連れてきたのはキム・ジョンウン』


俺たちのバンドのことは、知ってるよね。ヘッドバンキングよろしくぶんぶんと首を振る


『メインボーカルのやつが留学することなってね』


代わりのメンバーを探してるんだ。代わりの...メンバー...ま、ま、ま...まさか...!?


『そう。キミはスカウトされたってわけ』


そのコワイお兄さんに。誰がコワイお兄さんですか。やさしくはないだろ。コワイお兄さんさんがイヤなら、綺麗なお兄さんがかわいがってやるからなー。ヒチョラ!


そ、そ、そんなの...む、む、む、無理無理無理無理...無理に決まってる...急に目の前がまっくらになった...


『お、おぃ!しっかりしろ!』


くずれおちた俺の身体は。ジョンウン先輩の腕の中に、すっぽりおさまってしまった



《つづく》


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