『いつまで拗ねてんだよ』
バックミラーを見ながら。拗ねてない!ふだんは乗らない後部座席で、ドンへが叫ぶ。ほっぺたふくらませて。そっぽ向いて
打ち合わせ中もずっとぶーたれてて。たまたま帰りがけに、シウォンさんと目があって。大変ですね、とばかりにウィンクされて。それに気がついたドンへが、頭から煙を出さんばかりの勢いでキレて
暴れるドンへを羽交じめにして。エレベーターに押しこんだ
《同い年だし。デビュー時期も、出身も似たようなもんだからな》
なんかライバル視してんだよな。ドンへが。一方的に。先輩曰く
打ち合わせ早く終わったら、ジム行きたいってゆってたんだけど。どーすんのかな...
『ドンへ。ジム行くのか?』
答えはない。いつまでヘソ曲げてんだか...めんどくせー...とりあえずジム行って。荷物もたせて捨ててやれ
『クルマとめて...』
は?クルマ...止めて...何だよ。路肩にクルマを寄せた。サイドブレーキをかけたとたん。突然ドンへが、ドアを開けて飛びだした。ばか!何しやがる!追いかけなきゃ...シートベルトをはずそーとしたら。助手席のドアが開いて。ドンへが乗りこんできた。はぁ...よかった...ヒヤヒヤさせんなよ...顔を見ると。ほっぺたはもーふくらんでないけど。眉毛を下げて。なみだ目で
ギアにかけた俺の手に、そっと触れる。ドンへが思いっきり掴んだから。手首んとこがあかくなってる。ごめん...痛いよね...
『帰ったら、冷やしてあげる』
心配すんな。これくらい。でも...口をへの字にする。その頭をがしがしとなでる。へーきだってゆってんだろ。ん...
『行くぞ』
家でいーんだな。ん...発進させて。しばらくして。やっぱり窓の外を眺めながら
『シウォン...ヒョクのこと、気に入ったみたいだね』
は?
『さぁな。今日、会ったばっかだし』
気に入ったなら、何だってんだ。それでつっかかってたのか
『余計なこと考えねーで、明日のセリフでもさらっとけ』
ん...
《つづく》
※きのーの最終更新です