ドンへ side


『ウニョク様』

トヘちゃん。声をかけた俺を見て。ほっとした顔を見せた

ウニョク様はあれからこつこつと来店を重ねて。今日ははじめての同伴だ

同伴といっても。うちの店では、そんなに長い時間は拘束しなぃ。ちかくの駅でまちあわせて。決まった時間までに店に行くくらいだ

執事はともかく、メイドのかっこでなんて。こーゆー店が密集してる、このあたりだからこそ通用するわけで。それじゃなくても俺は女装だ。だから俺はあまり同伴はうけない。メイドでも執事でも

『い、い、い、いこーか...』

はぃ。緊張してるのか、顔が真っ赤だ

『て、て、て、て、て、て...手とか...つないでも...いーのかな...』

ごしごしと手のひらをジーパンにこすりつけながら

『あ、申し訳ありません...』

店でも身体接触は禁止だから。同伴といえどそれは同じで。そ、そーなんだ...わかりやすくしょぼんとして。かわいーな...いやいや。かわいーってなんだ

『そのかわり...』

ってゆーのもなんだけど。ウニョク様の腕にそって手をそえる。腕を組むのはOKになってるんだ。肩を抱くとかはだめだけど。同伴して。ただ並んで歩くだけじゃつまんないもんな。俺の場合、あまりしなだれかかると、オトコ同士でじゃれてるよーにしか見えないから。適度な距離で。適度に触れて。歩き方にも気をつかう。だから同伴あまりはすきじゃなぃ。店にいるよりはるかに疲れるから

『行きましょう』

あ、う、う、う、うん...ますます顔を赤くしたウニョク様が。ぎこちなく歩きだす

店にはじめて来たときも思ったけど。いまどきこんなにウブな反応をするひとも、めずらしい気がする。最初は緊張してるお客様も。同伴するころになれば、だいぶ慣れてくるし

まぁ、そこがウニョク様...ヒョクチェらしーところなのかな...

このまま店に行くつもりなのかな。ノレバンみたいな個室はだめだけど。カフェとかでちょっと話したり。ショッピングにつきあうくらいはできるのに。説明もちゃんとしたし

たぶん、あたまん中まっしろなんだろーな...たまに目をあわせては、へへっと照れたよーにわらって鼻をこするウニョク様に。いつも以上に意識してほほえみかえしながら。ここ束の間の仮初に。どきどきしてる自分がいた


《つづく》

※本日のラインナップ