僕はただ...
彼を好きになってしまった...

ただ、それだけ...



『なぁ。お前...何かんがえてんの?』

ベッドからそっと抜けだして。こっそり服を着ていたら声がした。振りむくと。すこし身体を起こして、電子タバコをくわえてるウニョク。あ、またひっかいちゃった...腕にあかい線が見える。爪も切ってきたし。気をつけてるのに...

『何って...』

何も...

『まだ帰るなよ』

時間あるだろ?横向きになって。お前も吸うか?くわえていた電子タバコを差しだす。ううん。いらなぃ。首をふると。手まねきされる

ちょっと迷って。ベッドの端に腰かけた。すぐにおなかのあたりに抱きついてきて。ほてりののこる。しなやかな身体。まわされたその腕の。あかい線をなぞる

『ごめん...いたぃ...?』

いたかねぇよ。こんなの。でも...袖から見えちゃうかも...見えたってかまわねぇよ。これぐらぃ

これぐらぃ。これぐらぃ...めずらしーことじゃないから...?


ウニョクは美容師だ。カリスマなんて呼ばれてる

僕は客で。ただの。一回だけ。奇跡的に一回だけ。ウニョクに髪を切ってもらった。ただそれだけで。捉われた。つよく。ふかく。ただ...ただ一晩だけでもいーから、抱かれてしまいたくなるくらぃに...


《つづく》

※本日のラインナップ