珍しく城下に雪が降った。立春だと言うのに。今年は寒い、寒いと思ってはいたが...
鐘雲は下僕が雪掻きをしている道をそっと進んだ
『うほほ!輝いておるぞ!』
銀世界とは良く言ったものじゃのう。障子を勢いよく開け放して、童子の様にはしゃいでいる
裸足で庭に降りようとして家臣に押し留められ、急ぎ届けられた藁履を履いて庭を飛びまわる。風邪が治ったばかりなのだから大概にしろと言っても聞かないだろう。いつもの小姓は諌めもせずに廊下に控えている
早速、腰元たちを呼びつけて、雪合戦などを始めてしまった。合戦と言うか...一方的にやり込められてる気もするが...顔は白塗りでよくわからぬが、綸子の着物はすでに雪塗れだ
『そうじゃ!今宵は雪見酒と洒落込もうぞ』
すももに相手をする様申し伝えよ
最近贔屓にしている家臣の名を上げる
次手に湯殿番に支度をしておく様、声を掛けておこうか
『御意』
小煩い老臣たちが出仕する前に鎮めてくれると良いが。小さく溜息をついて、嬌声が響く庭を後にした
《つづく》
※本日のラインナップ