前回で述べたように、寝る前にジャスミン茶を使ってうがいをした際に、かなり薄く感じた原因は、1日中ずっと足し湯で飲んでいたからだ。

 

中国、特に北京では、緑茶やジャスミン茶を飲む際に、足し湯で飲むのが普通。茶器について、今はガラスコップやマグコップで飲む人が多いが、昔の場合は蓋碗を持って直接飲むことが多かった。茶葉が口に入ることを防ぐため、蓋を使って浮く茶葉を払う。蓋碗よりもっとワイルドな飲み方だと、急須にお茶を淹れて、注ぎ口から直接飲む。いずれにせよ、湯冷ましと湯呑を使わない、飲み干さずに、お湯を足しながら飲む。そのため、1煎目、2煎と言う概念がない。

 

 僕は日本茶や烏龍茶の淹れ方でジャスミン茶を淹れたことも有り、1煎目の花香が強いが、2煎目の花香が一気に弱くなる。恐らく花香を維持するために、みんなが足し湯で飲んでいるだろう。

 

 ジャスミン茶の起源について、松本智先生が「包種茶の生産量は華北(中国北部)の消費に賄わないから、包種茶に似せて作ったのはジャスミン茶である。」と述べているが、根拠を特に提示していない。また「ジャスミン茶に使う茶葉は包種茶である。」と自己矛盾の説を言っている。また、松本先生が「ジャスミン茶の香りは包種茶の香りに及ばず、雲泥の差だ。」とジャスミン茶を軽蔑視し、ジャスミン茶の香りが強烈、包種茶の香りが優雅と評価している。松本先生のことを尊敬しますが、先生のジャスミン茶の起源説とジャスミン茶に対する評価について、残念ながら賛成できない。

 そもそもジャスミン茶に使う茶葉は包種茶ではなく、緑茶である。品種や産地色々あり、一概とは言えないが、共通点は2つある。

 

①    萎凋

ジャスミン茶にはもちろんジャスミンの花を使って、茶葉を燻製しているからジャスミンの香りが一番の特徴であるが、それだけでは花香は長く持たず、香りも単調かもしれない。口に含んだ瞬間、ジャスミンの香りが鼻から噴出して嗅覚を主導しているが、呑んでから、舌や喉に残るのが実は萎凋香。言い換えれば、ある意味では萎凋はジャスミンの香りと余韻を延長させた。ジャスミンの香りが知らず内に蘭の香りに変わり、長く口に残る。なんというか、兎に角気持ちいい!北京人の淹れ方が濃いから、1口飲むと、とりあえず渋みとに苦みの重さが舌に載ると同時に、ジャスミンの香りが鼻から飛び出す。喉に呑む瞬間は鼻と食道が隔離されているから一瞬香が途絶える。その後すぐジャスミンの第2波は戻り香として湧いてくる。その後、数分間続くのは蘭のような余韻。

 

②    バスケ式乾燥と火入れ

周知の通り、中国に緑茶は釜炒り制(炒青)。しかし、乾燥方法及び再製法によって更に3種類細分化できる。所謂炒青(釜火入法)、烘青(バスケ式火入れ法、機械だと熱風乾燥)、晒青(天日干し乾燥)。ジャスミン茶用の茶葉だと、必ず烘青法を使う。妻がベトナム旅行に行った時、お土産としてベトナム製ジャスミン茶を買ってくれた。早速飲んだら、何か中国のジャスミン茶と違う。勿論ベトナムは大葉種が多く、品種は中国種と違うのが当たり前だし、着香も恐らく本物の花だはなく、香料だと感じた。しかし、一番違うのは釜香が強いところだった。なるほど、推測にすぎないが、恐らく乾燥と再製の火入れは釜炒法だ!だから、釜香と花香が喧嘩している。俺は釜だ!余はジャスミンじゃ!みたいな感じで、両方とも主張が強かった。ジャスミン茶の主張を統一させるために、中国のジャスミン茶は一律烘青(バスケ式火入れ法)を採用する所以である。直接に金属の釜と接触せず、火入れも強くないから、お茶の青さ、萎凋の香りが最大限に残される。因みに、火入れ(焙煎)と萎凋の相性が悪いことを今後岩茶を紹介する際にまたみんなと話しましょう。