そもそも、なぜジャスミン茶が北京市民に愛されるのか?この問題を説明するために、狭山茶と東京の組み合わせの例を挙げたい。

 

 狭山茶が下町の人々に好かれて、原因としてはそのコクと火入れが東京の水道水に負けず、煎が効くからと僕の尊敬するある狭山の農家さんがそうおっしゃいました。カルキ臭なら沸騰させたらある程度解決できるが、重要なのは硬度の問題かな。

 

ネットで検索したら、東京の水質が時期と場所によって硬度が違い、全国他地域に比べると硬い傾向があるみたいで、江戸時代の場合、主に神田上水や玉川上水といった上水道から供給され、その水質は現代と同様に軟水であったと考えられるが、現代の場合は一部の地域(大島町など)では硬度が100mg/L(アメリカ基準)を超える場合もあり、これは硬水と分類される。他の地域より硬く、しかもカルキ臭問題があれば、確かにコク、火入れによってある程度緩和できると想定する。更に、狭山が東京に一番近い産地であり、一部は東京の管轄下(東京狭山茶)にあるので、産地の水でお茶を淹れるのは普通にロマンチックで美味しいでしょう。

 

 ではでは、北京の水道水の硬度はどうなの?なんと、今現在はある程度改善されたみたいで、2014年の時点で300 mg/Lを超えたそうで、あらら、僕の腎臓結石の原因はもしかしたら、、、いや、自分の胃酸を信じ、故郷の水のせいにしちゃいかん。前近代の場合は井戸の水が多用された北京には、苦水(マグネシウムが多くて苦い)が多く、相当硬かったでしょう!僕は足立区、千葉、新宿区、横浜に住んだことがあり、いつも水道水を沸かして飲んでいる。水垢がそれほど出ずに、特に硬いと感じたことがないが、北京の場合は、新しい薬缶を買っても、1回お湯を沸かしたらすぐ白い水垢が薬缶の中身に薄く一面付着する。(やっぱり、結石が水のせいか、、)

 

これほど硬い水と対抗できるお茶も相当強烈じゃないといけない。そこでジャスミン茶の番だ。水の癖を中和するために、香りが強いお茶を選ぶだけではなく、茶葉もたくさん入れねばならぬ。北京人のジャスミン茶に対する特有の判断基準の1つは「煞口」である。これは味と香りが強烈で、収斂味がある表現である。普通に考えたら、ネガティブな評価だそうだけど、ジャスミン茶の場合は「煞口」じゃ無いと気が済まないと評価する人が多い。

僕の理解によると「煞口」はただ渋み、苦みのではなく、マッサージのように殴られたのように痛いけど、気持ちいいという飲んだら目を強く閉じてからまた開ければ「嗚呼!」と言いたい気分のことだ。ビールの広告によく使う表現だね。しかも、その渋みという収斂味がすぐ解けなきゃいけない。緊張感を1瞬作って、そのあとすぐその緊張感を解決し、リラックスさせる手法である。音楽にもよく使うね、ドミナント7和音で緊張感を作り、5度下行して解決するとのこと。

 

 硬水で淹れてもそんなに美味しいから、軟水だったらもっと美味しいでしょう?と訊ねる人もいるかもしれない。僕は硬水、軟水、純水を全部試した。純水で淹れると、味もくそもない。軟水で淹れると、口当たりが滑らかで、香りも上品。硬水だと、口当たりの重みが出て、香りも炎のようになって刺激的な飲み物になる。謂わば、狂直の味。「お茶は国境無き、茶人は故郷有り」と。僕は自分のことを茶人と呼ぶのが嫌で、文人の方が適切だと思うが、それはともあれ、ジャスミン茶と硬水の組み合わせは故郷の味でござんす。