54回目の誕生日に起きた奇跡② | 大腸ガンで逝ってしまった双子の妹の451日の闘病記録

大腸ガンで逝ってしまった双子の妹の451日の闘病記録

2022年8月に54歳の若さで大腸(横行結腸)ガンにより逝ってしまった双子(二卵性双生児)の妹の闘病生活を兄目線で想い出しながら記録として残します。

54回目の誕生日に起きた奇跡①からの続き

 

2022年7月12日(火)16:00~ 【G研有明病院 緩和ケア病棟】

 

この日は転院先の病院に持って行くための血液検査を午前中に行ったのだが、昼過ぎに「I先生から話があるから至急病院に来て欲しい」と妹から電話があったので、少し早めに病院に向かった。

 

ちなみに7月12日は私たち二人の54回目の誕生日であり、5月13日に余命1~2か月と宣告を受けてから、妹はこの日を迎えるためだけに一生懸命ガンと闘ってきた。

 

※自分が診察に付き添った時は必ずスマホで先生の説明を録音していたので、そのデータから文字起こしした診察室でのおおまかな会話内容です。

 

I先生:「急にお呼びたてして申し訳ございません。

 

本日午前中に血液検査を実施したのですが大分滅多に無いことが起きましたので、これからご説明いたします。

 

血液データに『APTTとPT』という血液を固めるタンパク質の機能の値が2つあります。

 

何らかの異常がある場合、通常この『APTTとPT』という値は同時に異常値を示すことが多い、ないしは『PT』だけ異常値となるケースがほとんどなんですね。

 

しかし、今回XX(妹の苗字)さんのデータではAPTT』だけが異常値で『PT』の値は正常値となっていて、これは非常に稀なケースなんですね。



この原因として考えられるのは『後天性血友病』が一番可能性として高いです。

 

いわゆる『先天性の血友病』というのは聞いたことがあるかも知れませんが、生まれつき血液を固めるタンパク質がうまく作れないという病気で、これは遺伝で決まっていくようなものなんですね。

 

ただ、今回のケースは後天性の血友病が疑わしいという事で、血液を固めるタンパク質に対して抗体ができている可能性があって、ご本人の免疫機能が間違ってそのタンパク質を攻撃してしまっている状態なんですね。

 

この後天性血友病』というのは発症率が100万人に1人とかそういうレベルの病気なんですけど、これがたまに腫瘍のせいでこういった病態が作られてしまうっていうことがあるんですね。

 

では、この病態をどうやって治療していくのかというと、先天性の場合だと足りないタンパク質を足してあげるっていう形なんですが、後天性の場合は足りないタンパク質を入れてもこれがまた免疫機能によって排除されてしまうので意味が無いんです。

 

じゃあ、どうするかっていうと『免疫機能を抑える、もしくは腫瘍を良くする』という二択になるんですが、現実問題としてガンによる腫瘍を良くすることはもう難しいです。

 

一方で『免疫機能を抑える』という事に関しても、かなり大量のステロイドを使う必要があって、今のXXさんのお身体の状態だとちょっと耐えられないと思います。

 

ですので有効な治療法が無い以上は、この『後天性血友病』の状態をずっと見ていくしか方法が無いのが現状です。

 

いつからこの『後天性血友病』になったのかというと5月の血液検査のデータでは異常が見られていないので、ここ最近の腫瘍の急激な増大によって引き起こされた『傍腫瘍症候群』と言うんですけども腫瘍と一緒に出てくる特殊な症状の一環だと思われます。

 

ここからが本日の本題なのですが、この血友病だと出血があっても止まりにくいという状態にありますので、車に乗ってお身体を移動させること自体が非常にリスクを伴いますので、転院は中止とさせていただきます。

 

私たち:「おお~良かったね~!!!事前に検査して本当に良かった!!

誕生日の日に奇跡が起こったね!!

 

I先生:「検査して良かったです。これは本当に稀な症例なので、私も最初はデータを疑ってもう一度採血させていただいたんですが、2回とも同じ結果でしたので確定としました。

 

私の専門は血液内科なんですが、今回のような症例は勉強して聞いたことはあったのですが、担当した患者さんでは初めてですので非常に驚いています。

 

妹はここ最近、鼻血が良く出たり、採血をしても針を刺したところからの出血がなかなか止まらないなどの症状があったのだが、全てこの血友病によるものであった。

 

I先生:「なお検査の結果、貧血の状態も進んでいるので明日2パックの輸血を行いますが、輸血をすることで出血を促すケースもありますので慎重に状態を見ながら行いたいと思います。

 

今回はとても珍しいことではあったのですが、採血をしたいというご要望があって私も良かったなと思っていますし、今日がお二人の誕生日だと伺って素晴らしい日になって喜ばしい限りですね。

 

これからも私が引き続き担当させていただきますので、よろしくお願いいたします。」

 

妹:「こちらこそ、本当にホッとしました。ありがとうございました。引き続きよろしくお願いします。」

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こうして私たち二人は奇跡的な誕生日を迎える事ができ、妹は心から喜び久しぶりに笑顔を見せてくれた。

 

緩和ケア病棟に入院した時には本人も私達もとても誕生日を迎えるのは難しいと思っていたので、この日を無事に迎えられた事はもちろんのこと、あれだけ嫌がっていた他の病院への転院も中止となった事で二重の喜びであった。


先生の話が終わった後、買ってきたケーキで54回目の誕生日をささやかに祝った。

 

 

天に召されるまで残り38日