「 ゴリラ裁判の日 」
須藤古都離
実際にあった出来事を下敷きに書かれたフィクション …
舞台はアメリカ、オハイオ州。
考えさせられることは たくさんある … たくさんあり過ぎて、途中で読むのがしんどくなりました。
全ては変化の過程で 答えが用意されているわけではないけれど、読後感はいいです。
ちょっと長いですが、終盤、主人公のゴリラ、ローズが「 言葉 」について語ったところを引用します。
私にとって言葉は魔法だった。
目の前にいる誰かとお互いの気持ちを伝えあい、理解しあうための優しい道具だった。言葉があれば自分の心を差し出すことも、相手の心に触れることもできた。言葉を覚えさえすれば、そこにはゴリラも人間もなかった。
だが、今の私に届く言葉は呪いだった。
顔も見えない、どこにいるのかも分からない誰かの悪意や無責任な言葉が、波のように押し寄せていた。テレビ、新聞、ネット、心無い言葉はどこにでも氾濫していた。
野生動物が風雨に晒されるように、人々は吹き荒れる言葉に打たれなら暮らしている。激しい雨がやがて台地を浸食するように、人々は言葉によって心を削られていた。そして、それが当然であるかのように振る舞っていた。
https://www.bbc.com/japanese/36411264