私の勤める小さな靴屋は、本革メインの靴屋さんです。
平均単価は約12,000円、中には10,000円でお釣りがくる商品もあります。
今のご時世、決して安いとは言えない金額だと思っています。
「革製品」と聞いて、どんなことをイメージしますか?
高級品、一流ブランド、値段が高い、セレブ愛用、イケオジが持つアイテム…
なんだか一般庶民には手が届きにくい、そんなイメージを持つのではないでしょうか。
本革製品は食肉用の家畜などの動物の皮を加工した製品です。
命をいただいた分、余すことなく活用する。決して命を粗末にしない、そんな考え方が根底にあります。
仮に本革製品がなくなると、これまで活用されていた皮は無駄に廃棄処分されてしまいます。
私たちが食肉を食べ続ける限り、皮は畜産物として発生し続けるのです。
その皮を無駄にしないために、革製品に加工しやすいように防腐処理や染色をします。
手間と労力がかかるので、合皮より高くなりがちです。
一方、合成皮革(合皮)はポリエステルやレーヨンなどの布地に合成樹脂を塗り、
本革のような見た目や質感を再現した「革のような素材」のことを言います。
なので「フェイクレザー」とも呼ばれています。
本革よりローコストで作れるため、合皮製品のほうが値段としては安いことが多いです。
私が思う本革の良いところは
①結構丈夫
→一般的には5~10年、丁寧に活用できれば10年以上長く愛用可能。
摩擦や衝撃に強く、破れにくいので使い方次第で長持ち可能。
②経年変化を楽しめる
→使うごとに自分に馴染むのが大きな特徴。形や色、ツヤなどが変化する経過はとても味わい深いもの。
擦り傷や風合いも含めて「味のある高級感」が楽しめる。
③通気性がある
→実は蒸れにくいので、切りっぱなしのデザインのブーツを夏に履いても、そこまで暑く感じない。
合皮のブーツより快適かも。(実際に試した個人の感想です。)
本革の欠点としては
①水に弱い
→雨や雪などの水分を吸収するとシミになったり、色落ちすることがある。
②型崩れのリスク
→特に柔らかい革でシンプルな作りの靴だと、足に馴染む=形が足の形になる
足の形にコンプレックスがある場合だと、靴の形が崩れてしまい、見栄えが悪くなってしまう。
続けて合皮の良いところは
①扱いしやすい
→合成樹脂の表面にさらにコーティングがされているため、基本的には水をはじく。
雨や雪で濡れても、柔らかい布で軽くふくだけでシミや汚れを防ぐことができる。
撥水性は高い。
②軽い
→本革よりも素材自体が軽量。製品化すると本革製品よりかなり軽いものが多い。
③安い
→工場で大量生産できるのは本革にはない強み。本革製品よりローコストで製品化可能。
合皮の欠点としては
①安っぽい
→特に切りっぱなしの製品など、本革と合皮の裏面を比較すると安っぽい。
光沢感も「作り物感」があるので、高級感に欠ける。
②硬くて蒸れる
→合成樹脂の表面にコーティングされているので、柔軟性に欠ける。
夏場は特に気温や湿度が影響して変形したりひび割れしやすくなる。
また通気性は悪いので意外と蒸れやすい。
③本革より経年劣化が激しい
→実は寿命が「作られてから3年くらい」と言われている。
つまり私たちの手元に届いたときにはもう半分くらい寿命が来ている…なんてこともある。
保管状況や手入れ次第で寿命が長くなることも、短くなることもある。
…と、私なりの本革と合皮の違いについてまとめてみました。
それぞれ利点と欠点がありますが、自分のライフスタイルに合わせて活用することで、
革製品を楽しむことは可能かなと思います。
どちらにせよ、購入後手入れしなければ、どんなに良い製品でも劣化は早まります。
合皮製品は安いけど、壊れやすい。だからシーズンごとに買い替えるほうがいい。
本革は購入時に少し高いけど、自分次第で何年も愛用できるので結果的にコスパがいい。
自分の好みで選んだらいい。それだけのことです。
店舗での接客中に「合皮はダメ。本革でなくっちゃ」というお客様が一定数いらっしゃいますが
私はどちらでも、自分に合ったほうを選んだらいいと思っています。
最終的に、使うのは自分だから。
ただ「革製品は高い」と、値段だけ見て帰ってしまうお客様を見る度に
本革の価値を知ってもらえたらいいのに、残念だなって思ってしまいます。
合皮製品の価格に慣れている(またはそれしか知らない)場合、
いつも見ている値段で、本革製品との比較をされると思います。
合皮製品と本革製品の値段だけで比較したら、高いと判断するのは当然です。
私も値段だけで判断するなら、高いと思います。
でも、本革と合皮の違いを知っていれば、きっと価格だけで判断することは減ると思います。
長い目で見た場合のコストパフォーマンスは、本革のほうが良いはずです。
私の場合、間に合わせで買った合皮のパンプスのヒールが1回でダメになったことがあります。
試着して買ったはずなのに、やっぱり足に合わなくて捨てたことも何度もあります。高くなかったからって言い訳しながら。
本革のパンプスをきちんと試着して購入すれば、何度も合皮のパンプス失敗事件を起こさなくてよかったのかもしれない。
靴屋さんになって初めて気づくことができました。
改めて、本革って足に馴染むものなんだな…と痛感しております。
また、ある程度社会的な立場が高くなったり、フォーマルな場面では
合皮製品や手入れのされていない革製品を身に着けていることで自分の価値を下げてしまうこともあります。
信頼を得ることができなかったり、最悪の場合は恥をかくかもしれません。
そういったリスクを考慮した上で、合皮がいい。
お客様がそう判断した上での「革製品は高い」といった言葉であることを信じています。
「価値を知らない」だけで判断するのは、実にもったいないことです。
革製品に限らない話ですが…
流行っているから、みんなと同じがいいから。
そんな理由で選択肢を狭めてしまうのはもったいない。
「誰かの良い」が、必ずしも「自分にとって良い」とは限りません。
ご来店いただくお客様にとって「自分に合った良いものを見つけた」と言ってもらえるように
これからも接客に努めたいと思います。