第1章 外に出ない日を選ぶ
最近、外に出ない日が増えた。
予定がないから、という理由もあるけれど、それだけではない。
「今日は家にいよう」と、自分で決める日が増えた。
みんなが前に進んでいる中で、自分だけが止まっているような感覚。
何も生み出していない、何も達成していない、何も残していない。
でも今は、少し違う。
家にいる時間にも、ちゃんとした密度があることを知った。
何もしないように見えて、その中で考えていることや、感じていることは確かに存在している。
今日は、出かけない日。
そう決めただけで、心が少しだけ静かになった。
第2章 朝の静けさ
朝は、いつも同じようで、少しずつ違う。
目覚ましが鳴って、止めて、また目を閉じる。
天井を見ながら、夢の続きを思い出そうとするけれど、だいたい思い出せない。
さっきまで確かにあったはずの世界が、すぐに消えてしまうのが不思議だ。
ぼんやりしたまま、時間だけが流れていく。
時計の音がやけに大きく感じる日もある。
カーテンの隙間から、光が差し込んでいる。
今日は晴れなのか、曇りなのか、それもまだ分からない。
光の色だけで、なんとなく判断する。
白っぽい光の日は、少しだけ気持ちが軽い。
灰色っぽい光の日は、無理に元気にならなくていいと思える。
布団の中で、しばらく動かない。
起き上がる理由がない日は、起き上がらなくてもいい。
時計を見る。
思ったより遅い時間だったり、まだ早かったり。
この「起きてもいいし、起きなくてもいい」という感覚が、私は好きだ。
誰にも急かされない朝は、それだけで少し特別になる。
第3章 部屋という居場所
部屋は、私の世界だ。
広くもないし、おしゃれでもない。
雑誌に載るような部屋でもない。
それでも、ここにあるものは全部、私が選んだ。
カーテンの色。
それぞれに、大した意味はない。
ただ、「これがいい」と思ったもの。
床に座って、壁にもたれる。
この感触も、見慣れた風景。
たまに、急に部屋が狭く感じる日もある。
息が詰まるような気がすることもある。
冷たい空気が入ってくる。
外の音が聞こえる。
車の音、遠くの話し声、風の音。
世界は今日も動いている。
私は、その中で少しだけ止まっている。
その距離感が、今の私にはちょうどいい。
第4章 何もしないという時間
SNSを開くたびに、誰かの「充実」が流れてくる。
それを見るたび、自分は何をしているんだろうと思った。
でも、何もしない時間がないと、私は疲れてしまう。
テレビもつけない。
音楽も流さない。
最初は落ち着かない。
何かしなきゃ、という気持ちが浮かぶ。
でも、そのまましばらくいると、心が少しずつ静かになる。
思考がゆっくりになって、
焦りが薄れていく。
何もしない時間は、怠けじゃない。
回復だ。
第5章 昼下がりの光
午後になると、部屋の中の光が変わる。
午前中の白っぽい光から、少し黄色がかった柔らかい光へ。
この時間帯が一番好きだ。
カーテン越しの光が、床に模様を作る。
それをぼんやり眺める。
眠くなったら、横になる。
本を読む。
天井を見る。
何も考えずに、ただ呼吸している時間。
外では、誰かが忙しく動いているかもしれない。
でも私は、ここにいる。
それでいい。
第6章 午後の沈黙
午後の時間は、静かに流れる。
何も起きない時間が、長く感じる日もある。
でも、その長さの中で、心が落ち着いていく。
ただ息をしているだけでも、
ちゃんと生きている。
第7章 外の世界と私
SNSを見る。
誰かの楽しそうな写真。
仕事の成果。
旅行の報告。
それを見るたび、少しだけ胸がざわつく。
私は今日も、家にいる。
何も起きていない。
でも、それを惨めだとは思わなくなった。
私は、私のペースで生きている。
第8章 夕方の空気
夕方になると、部屋の色が変わる。
影が長く伸びる。
でも、この時間が嫌いじゃない。
今日もちゃんと時間を過ごした、という実感がある。
第9章 夜の準備
夜ごはんは、簡単でいい。
冷蔵庫にあるもので済ませる。
お風呂に入る。
湯気で鏡が曇る。
第10章 夜の静けさ
夜になると、世界が遠くなる。
考えてもいいし、考えなくてもいい。
第11章 安心
誰にも合わせなくていい。
私は、ここではそのままでいられる。
第12章 何者にもならなくていい
何者かにならなくていい。
何も成し遂げなくてもいい。
私は、私でいい。
第13章 おうちで過ごすという選択
おうちで過ごすことは、逃げじゃない。
私は、ここを選んだ。
終章 今日もここにいる
今日も、家にいた。
大きな出来事はなかった。
でも、心は少し軽い。
それで十分だ。
私はここで生きている。
おうちで過ごそう。
それは、私にとって、いちばんやさしい選択だ。