第1章:特別じゃない朝
朝はいつも通りだった。
目覚ましが鳴る前に目が覚めて、布団の中で少しだけ天井を見る。
起き上がるほど元気でもなく、寝続けるほど眠くもない、あの中途半端な時間。
スマホを手に取って、時間を確認して、天気を見て、通知を流し読みして、
それからようやく体を起こす。
最近、こういう「何でもない動作」が少しだけ遅くなった気がする。
年齢のせいなのか、気力の問題なのか、それとも単なる気のせいなのかは分からない。
そこで、棚の奥に置いてある小さなボトルが目に入った。
それを見た瞬間、
「あ、私、サプリ始めたんだ」
と、少し他人事みたいに思った。
第2章:サプリを始めた理由は、劇的じゃない
よくある話だと思う。
体調がすごく悪くなったわけでもない。
病気になったわけでもない。
何か大きなきっかけがあったわけでもない。
ただ、
「なんとなく調子がよくない日が多い」
それだけだった。
朝起きても、すっきりしない。
疲れが抜けた感じがしない。
やる気がないというほどでもないけれど、前向きでもない。
絶好調の日もなければ、最悪の日もない。
ずっと「まあまあ」か「微妙」。
この状態が続くと、人はそれに慣れる。
そして、「こんなもんか」と思うようになる。
でも私は、たぶんどこかで、
「こんなもんじゃないはず」と思っていた。
だからサプリを調べた。
第3章:飲むだけなのに、少し緊張する
私はそのサプリを手に取った。
パッケージを眺めて、裏を見て、成分を見て、
「本当に効くのかな」
「効かなかったらどうしよう」
「そもそも、何を期待してるんだろう」
そんなことを考えながら、
コップの水と一緒に飲んだ。
飲んだあとは少しだけ意識してしまう。
「今、体の中で何かが起きているのかもしれない」
という、根拠のない感覚。
人は、何かを始めるとき、
たとえ小さなことでも、どこかで期待している。
大きな変化じゃなくていい。
ほんの少し、昨日より楽ならいい。
それくらいの期待。
第4章:日常は何も変わらない
サプリを飲んだからといって、
世界が変わるわけじゃない。
洗濯物はたまるし、
部屋は散らかるし、
お腹は空くし、
やる気が出ない時間もある。
今日もいつも通り、
少し遅めの昼ごはんを食べて、
ぼんやりと動画を見て、
やらなきゃいけないことを後回しにした。
「サプリ飲んだのに元気にならないじゃん」
そう思う自分もいた。
でも同時に、
「1日で何かが変わるわけないよな」
とも思った。
こういうところが、私は現実的というか、
冷めているというか、
期待しすぎない性格だと思う。
第5章:変わらないことに安心する
少し不思議だけど、
私は「変わらない日常」に安心する。
劇的に元気になるのも、
突然やる気が出るのも、
正直ちょっと怖い。
私は、
少しずつ、
気づかないくらいの変化でいい。
今日と昨日がほとんど同じで、
でもよく見ると、ほんの少しだけ違う。
それくらいが、ちょうどいい。
サプリも、たぶんそういう存在なんだと思う。
第6章:よくなりたい、という気持ち
私は、自分のことを
「向上心があるタイプ」だとは思っていない。
目標が高いわけでもないし、
理想の未来がはっきりあるわけでもない。
でも、
「このままでいい」とも思っていない。
ほんの少し、よくなりたい。
ほんの少し、楽になりたい。
ほんの少し、笑う回数を増やしたい。
サプリを始めた理由は、
たぶんそれだけ。
大げさじゃなくて、
静かで、地味で、
自分にしか分からない程度の願い。
第7章:期待しすぎない、という選択
私は、あまり期待しないようにしている。
人にも、
未来にも、
自分にも。
期待すると、
裏切られたときにしんどいから。
「まあ、こんなもんか」
「うまくいったらラッキー」
それくらいの気持ちでいるほうが、
心が楽だ。
サプリにも、過剰な期待はしていない。
飲んだからって、
人生が変わるわけじゃない。
性格が変わるわけじゃない。
急に強くなれるわけじゃない。
ただ、
「今より少しだけマシ」
それで十分。
第8章:自分の体と会話する
サプリを飲み始めてから、
私は少しだけ、自分の体を意識するようになった。
今日は眠いな、とか。
今日は頭が重いな、とか。
今日はなんとなく元気だな、とか。
今までも感じていたはずなのに、
ちゃんと聞いていなかった。
体は、ずっと何かを言っていたのに、
私は無視していたんだと思う。
サプリは、
体を良くするというより、
体に目を向けさせるきっかけなのかもしれない。
第9章:小さな変化は、気づきにくい
変化って、
だいたい分かりにくい。
いきなり元気になることは少なくて、
ある日ふと、
「あれ、最近前より楽かも」
と思うくらい。
私はたぶん、
その瞬間を待っている。
大きな奇跡じゃなくていい。
感動的な出来事じゃなくていい。
ただ、
朝が少し楽。
夜が少し穏やか。
それくらいでいい。
第10章:続ける、ということ
サプリは、
飲んだら終わりじゃない。
続けなきゃ意味がない。
でも、私は「続ける」が苦手だ。
三日坊主になりがちで、
気づいたら忘れて、
そのままやめてしまう。
だから今回は、
「ちゃんとやろう」と思わないことにした。
「できたらいいな」
くらいで。
第11章:今日も飲んだ
今日も飲んだ。
忘れずに。
嫌にならずに。
特に感動もなく。
それでいい。
私はこういう、
何も起きない日が好きだ。
第12章:何も起きない日は、実は悪くない
何も起きない日は、
つまらないと思われがちだけど、
私はそうは思わない。
何も起きない=
トラブルもない
悲劇もない
大きなストレスもない
それは、
かなり恵まれている状態だと思う。
第13章:私は、私の味方でいたい
サプリを始めたのは、
自分を甘やかしたかったからかもしれない。
「頑張れ」じゃなくて、
「大丈夫」って言いたかった。
誰かに言ってもらうより、
自分で言えるようになりたかった。
第14章:劇的じゃない人生でいい
私は、
ドラマみたいな人生じゃなくていい。
平凡で、
地味で、
大きな山も谷もなくていい。
ただ、
静かに続いていく日々があればいい。
第15章:明日も飲む
明日も、たぶん飲む。
劇的な変化はないかもしれない。
何も変わらないかもしれない。
それでも、
私は続ける。
「よくなりたい」と思った自分を、
裏切らないために。
最後に
サプリを飲み始めた。
それだけの話。
でも、
それは私にとって、
「自分を気にかける」という行為だった。
大げさじゃない。
派手じゃない。
誰にも褒められない。
それでも、
私はこれを大事にしたい。