メタモルフォーゼ実験室を
何度かやらせていただいて
ひた、と、実感したのは
わたしは
メイクの
内側に働きかける
魔法的側面に
やはり、惹かれている
と、いうこと。
なりきり、というか
変身 というか。
いくつもある
ジブンの顔を
都度出し入れできる
魔法の杖。
そんな風に
メイクをあいもからわず
捕らえている、と。
学生の頃、
ときどき、行く古着屋さんに
気になる店員さんが、いた。
男にしては、小柄で
(厚底のブーツを履いて
175㎝くらいだった)
ロマンチックな花柄のシャツに
細いブラックジーンズ
みたいな出で立ちが多かった。
髪は薄茶色、肩あたりで
はつんと切り揃えられていて
レンズが黄色がかった
茶の細四角いフレームの
眼鏡をかけていた。
遠目から見て
目元が印象的だった。
顔自体は平凡な
あっさりとした作りなのに
外国のひとのような
雰囲気がある。
何度か通って
初めて、気に入った服があり
(値段も懐具合と折り合った)
レジの前に、立った。
彼が来て、会計をしてくれた。
初めて、顔をはっきり、見た。
眼鏡のレンズの奥の
目の上と下に
薄い茶色の
アイラインと呼ぶには
太すぎる5mmの
淡い線が、引かれていた。
(柔らかい芯の
眉ペンシルか、アイシャドウチップで
丁寧に描いていたのだろう)
その線は、近くで見ると
やはり、不自然だったけれど
わたしは、彼に
恋ともいえる
強いシンパシーを感じた。
お釣りをもらいながら
さらに、観察した。
砂色に塗り、
リップペンシルで
微妙にくちびるのかたちを
分厚く描いている
眉も、整えて
ノーズシャドウも
ほんのり、入っている。
女になろうとしている
化粧ではなく
彼には、明確に
なりたいジブンの顔があるのだ
と、感じ
その、独特な化粧に魅入った。
わたしはその夜、詩を書いた。
《あいらいん・ぶるーす》
あたしとあのこは
いつでも厚化粧よ
tatooみたいな
5ミリのアイライン
銀いろの蝶が飛んで
遺していった
鱗粉みたいな
妖しいアイシャドウ
くちびるは熱帯に咲く
食虫花のように、紅い。
『ごまかしている』なんて
言われたくないわ
胸の奥に棲む
もうひとりのジブンに
なろうとするなんて、愚か?
でも、こうでいなくては
今を、生きられない
そんな、コが
この町を幾人も
過ぎてゆく。
あたしとあのこは
いつでも厚化粧よ
青いマスカラ
5mmのアイラインで
ジブンへ、blues
ところどころ
曲がついているので
まだ、覚えている。
そのころには
お化粧を
表現だと捕らえてはいたけれど
彼の出現によって
明確に、考えるようになった。
わたしも、
ひとに笑われていいから
彼のようになりたい、と思った。
夢中になったバンドの
ライブに足を運べば
ナース服の、青いくちびるの
男子がいたりして
また、友達のおねえさんが
普段でも、
パレードに雨を降らせないでの頃の
Japanのデビシルみたいな
髪型とメイク、格好で過ごしていて
そのせいで、就職できないと聞き
制服が大嫌いだった
似合わなかった。
10代のわたしは
メイクマジックを、信じた。
もう、30年近く、前のハナシ。
わたしの定番の、化粧は似ている。
彼、いまはどこで、どんな格好をしているんだろう。
わたしは今でも
メイクマジックを信じてる。
綺麗になる とか
おんなとして、とか
は、さらさらなく
ただ、
魂が呼ぶ
(ありのままでは
持ち得なかった)
ジブンを恋ふ、ために。
だから、blues なのだ。
真夜中に更新は
どーしても、sentimentalになる。
メタモルフォーゼという
コトバへの思いに
10代のころ
たくさんたくさん書いた詩に
それは、何度もなんども出てくる。
ジブンながら、胸が詰まる。
賢明なるLadies&Gentleman
お化粧をし続けるひとを
どうか笑わないでほしい。
ありのままが
いちばん、だ、と
引き剥がさないでほしい。
ただの、テクニックで
ごまかしで、確かに
これは、虚栄で、虚飾だけれど
わたしが生きるには
ヒツヨウだった。
ジブンへの 愛だった。
いまも、なお。
はちゃめちゃにsentimental
空想家sio