あの日、あたしは5歳だった。
ママに連れられて
あるところへ行った。
雨の夜だった。
その夜、あたしは
ビーズ刺繍の赤い靴を履いて
バレリーナみたいな
白いチュチュ風の
チュールレースのスカートを
履いていた。
(あたしは幼い頃から
なぜか、役者の衣装のような
出で立ちが好きだった。
それは、今も変わらない)
スカートの裾をくるりと回して
小さな劇場の椅子に座った。
ママが言った。
『いい子にね』
『わかっているわ』
開演のブザー。
とたん、
客用のドアから
飛び出してきた
シルクハットをかぶった
奇妙なおじさん。
黒いベルベット仕立てのスーツに
ロンドンブーツ。
(奇妙に脚が長い)
愉快げに体を揺すり、手に持った
さくまドロップの袋を振りながら
会場をじろりと見回し、
ふと、(というような芝居をした)
ドア近くに座っていた
あたしを見た。
チュールスカートと
赤い支那靴を嬉しそうに見た。
彼は喋らずに
あたしに、話しかけた。
(テレパシー?)
『きみがここに来ることは
とうにわかっていたさ。
きみが苺のドロップを
好きなことも、ね』
わたしも瞬時に
喋らずに答えた。
『あたしもあなたを
知っているわ
でも、なぜ?』
『簡単なことさ。
時間とはロールなのさ』
『ロール?』
『アルファベットで書くとROLL。
つまり、時間とは、
丸まった一匹の猫のようなもので
きみがその猫を信じるなら
ゴロゴロと鳴る喉も
柔らかな肉球も、しなる尾も
一度に触ることができるのさ。
つまり、過去と今と未来をね』
『じゃ、今はいつなの?
過去なの?未来なの?』
『そのすべてさ』
『あなたの名前は?』
『我が名は、ROLLY!』
そこで、テレパシーは切れ、
わたしは、彼、
つまり、奇妙なおじさんから
苺ドロップをもらった。
そこから、あたしの人生は変わった。
【時間】という名の猫を手に入れ
87才になった今も、
白いチュールスカートと
赤い支那靴を履いている。
無論、彼も健在だ。
★ROLLYの出で立ちと
客席の子供さんたちに
ドロップを配ったのはREALよ。
後は、sioの空想デス。
定番企画で、色々な方が読み聞かせに
登場しているらしい。ROLLYは二度目の登場。
とても、素敵な会だった。
ROLLYが、こどもたちに
その奇妙な存在ごと
まるまる愛されていて
最高に、優しい空間だった。
ROLLYといると、
分別とか、それに似たモロモロは
すべて、どこかへ行って
人間として赦し合うこと
愛し合うことだけが、残る
ような気がする。
何才である、とか
女だ、男だ、なんて
消えちゃって、
ただただ、
この世界に
生きているってことが残る。
最後に歌ってくれた
【月まで飛んで】は、
本当に、sioを月まで連れて行って
(脳内宇宙遊泳)
この地球に住んでいるんだ。
小さな命をいただいて
生きているんだ!
なんておもしろいの!
よし、死ぬまで
おもしろく生きよう!
と、思わせてくれた。
ありがとう.ROLLY
体を大切に、いつまでも
300年も長生きしてね。
*ROLLYが読んでくれた絵本
&短編
じごくのラーメンや
作刈田澄子 絵西村繁男
やきざかなののろい
作塚本やすし
月見草の花嫁
絵と文 飯野和好
100万回生きたねこ
作絵 佐野洋子
セメント樽の中の手紙
原作 葉山嘉樹
さよならの贈り物
作ROLLY 絵安田隆浩
サルビルサ
作鈴木コージ
すべて、素晴らしかったよ!
最後の【サルビルサ】は
ひとつの曲になっていて
音源が欲しくなったよ!
sioでした。