某の戯言なりにけり。 -2ページ目

某の戯言なりにけり。

2009年4月~6月まで放送したドラマ「アタシんちの男子」のその後のお話。あくまでファンの妄想から生まれたお話なので、多少の「?」はお許しを。映像ではなく、文字を追って、キャラクターを頭の中で動かしてください(笑)あなたも妄想人の仲間入りです(笑

最近の明の行動がおかしい

何か、最近不思議な行動をする、と千里は観察してた

食べ物が異様に消えていたり、明が気に入ってるタオルや布団が切り刻まれてたり

最初はまた学校でいじめられてるのか?そうだったらとっちめてやると学校に乗り込んでみたけど、どうやらそうでもなく

塾にしては遅く帰ってくるし、まぶたが落ちる寸前の9時ギリギリに帰ってくることも少なくない

千里もバイトがあるので、休みの日は目を光らせていることはできるけれど、仕事の時はどうにもならない

何か、煮え切らなくて、ある日の休みの日、明を尾行してみた

と、いっても学校から出てくるのを待ち伏せして

いつもどおり、バッグを斜めがけにして校門を出てきた明をキャッチ

何か、違うのが手にビニール袋が

朝は持ってなかったと千里は記憶している

お昼は給食だし、サブバックを持つ習慣は明にはないし

明が歩くたびに、袋の中身が揺れてカランカランと音がする

そのまま明はいつもよるらしく、スーパーに入っていった

何でスーパーなんだろ??

不審に思いながら追いかけると牛乳のコーナー

千里の家では配達の瓶入り牛乳なので、紙パックの牛乳はあまりなじみがない

いつも買っているのか、迷いもせずに、明は緑色のアカディ牛乳を手にした

そして、次に半生のドッグフードコーナーへ

「え、ちょっと、もしかして捨て犬にエサあげてるの??」

売り場の影で思わずそう声が出た

ぽん、と肩を叩かれて、あわてて口を押さえる

智だった

「え、なんで?」

「今日、休み。何だよ、考えること同じだな」

「だって、明の様子がおかしいから、何でかなって思って」

「もう少しで子供が生まれる犬見つけたんだよ。首輪もないし、お腹も大きいから移動もできねーし。いた場所が粗大ゴミ置き場だぜ。子供で来たから捨てられたんだよ、その犬」

「だからって」

「いらなくなったら捨てる。そういうやつもいんだよ。明はお腹が大きい犬に気がついて、ちゃんと雨風しのげる場所に移して、自分のタオルケット切り裂いて寝るところ作って」

「うちで飼えないから??」

「お前の飼ってるモモに遠慮してるんじゃない??それに飼いたいとか言い出す性格じゃないだろ。だから、毎日学校帰りにミルク買って、うちで野菜ゆでて持っていって」

「そんな、言えば良いのに」

「明にも言ってみたけど、黙り込むんだよ」

何でも自分で考えて、消化させようとする明の癖

それはわかるけど

アカディとドッグフード買って、明は店を出た

「ここから近いの?」

「ああ」

昔ながらのトタンの家と家の間の隙間の、何とか雨が降りかからない場所に、明は入っていく

その家も、隣の家も、空き家のようだ

多分、スーパーにある「ご自由にお使いください」と書かれたダンボールをもらって組み立て、その中に自分のタオルケットを丸めてそこに犬は荒い息をしていた

一見みてどんな種類の犬かはわからない

雑種だろう

でも、鼻が長くとんがっていたので、ダックスかシェルティか何か、そこら辺の合いの子というのはわかった

明はビニール袋に入ってたステンレスの器を出して、さっきのアカディの牛乳を注ぎいれた

もう一つの方には缶のドッグフードに、タッパーからゆでた野菜

「いつの間に作ってたんだろう、知らなかった」

「ああ見えて、明は情に厚いんだよ」

「それは知ってる」

「でも、ちゃんと犬に合わせて小さめに切ってるよ」

「誰にも聞かないでやっちゃうのが明らしいよな」

犬は明を見てしっぽをふり、明の手に頭を摺り寄せる

「ホラ、食べなよ、お前お腹ゴロゴロするみたいだから、今日はアカディにしてみたよ」

「栄養つけて、赤ちゃん生みなよ」

犬の頭をなでながら、あまり家では見せないような笑顔を向けていた

「うちで飼っちゃダメなのかな」

「家長に聞かないとな」

「わたしじゃん」

「じゃなくって。あの家を運営してる人、忘れてんだろ??」

「だって、時間ないよ。あの犬のお腹の張り方みたら、ここ数日で生まれるって」

千里は智に必死に訴える

「今日、持って帰ろう、ちゃんと保護しようって、ね??」

「お願い、明が誰にも内緒にしてここまで頑張ってあの犬守ってきたんだよ」

智の返事を聞く前に、物陰から見ていたのを、前に歩を進めた

「明」

「…何でいるの」

「明、その犬うちにもって帰ろう」

「野良犬だよ、ダメだよ」

「ダメじゃないよ、だって、明頑張って守ってきたんじゃない。赤ちゃん、もうすぐ生まれるんでしょ??」

「だって、千里さんネコいるじゃん」

「閉じ込めておくから」

「ちゃんとした衛生面もきちんとした場所で、生ませてあげようよ」

「赤ちゃん、生まれて欲しいでしょ??」

「……」

「明、そういうときは私のこと頼って良いから」

「明、どうしたい??このままでいい??うちに連れて行きたい??」

やや、間があって、明はうつむきがちに小さい声を絞り出した

「…連れて行きたい」

「よく言えたね。エライ。明だって、言葉にして話して、いいんだよ」

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即、千里の強引な計らいにより、犬を連れ帰り、年長組みには散々色々言われたが、生来の千里の傲慢さで蹴散らし、蹴散らしているうちに犬は4匹子犬を産んだ

だが、急激な環境の変化に適応できなかったのか、母犬は死んだ

みんな落ち込んだが、明の落ち込みようは半端ではなかった

部屋に閉じこもり、ごはんも食べない

「明、入るよ」

千里はノックして静かに部屋に入った

それほど明の部屋に入る機会はない

多分新造の心配りなのだろう、天井はプラネタリウムのように星が光っている

天井からは籐の一人掛けの籠?椅子?がぶら下がっている

明は真っ暗な部屋の中、その椅子に座ってぼんやりしていた

「明」

「明、犬をうちに連れてきたから死んじゃったって思ってる??」

「僕が反対すればよかったんだ。そうすれば死なないですんだ」

「私のことを攻めたい…よね」

それには無言

だからといって、千里も謝るようなそぶりは見せなかった

「明、生きているってことは、通過していくことなんだよ」

「…どうして通過なの」

「わたしは、お母さんが死んで、親戚をたらいまわしにされて、せっかく就職しても親父の借金取りが会社まで来て会社に迷惑掛けてしまうから会社も辞めた」

「そして、本当の父親とは知らず、新蔵さんと出会い、短い擬似結婚をして、彼を見取った。それからは兄弟であるあなたたちとこの家に住むことになった」

「これらは、もう「今」ではない「過去」。借金取りから追い回されてたのももう完了形になった。だから、その時期は通過した」

「明が一生懸命面倒を見た犬も、いつかは死んでしまう。それは、私たちだって同じ。明日死んでしまう可能性もある」

「だから、悲しんじゃダメってことはダメなの。悲しむってことは、それだけ好きだったってことだから。泣くなってことじゃない」

「でも、数年後、このことも「過ぎ去ったこと」になってしまう」

「…何がいいたいの」

「結果になったことは、それがその時点では最善の策だったと思ってってこと」

「明が一人であの犬を守った、そして、妊娠していたあの犬をもっと環境のいいところに移すことも、あの時点で色々考えて一番よかったと」

「ちがうだろ、死んじゃったじゃないか!!!」

「そうだね、結果は死んでしまった。でも、あの時、あれ以上に何ができた??」

「お医者さまにも連れて行ったし、暖かいところにもいられるようにした。それは、明が全て一人であの場所でエサをやっていた時よりもあの犬にとってはよかったとは思えない??」

「明は守るために頑張った。頑張っても報われない時がある。それは、人の感情と、死だと思うの」

「それは、自分の中で整理をするしかないと思う」

「ゴメンね、泣き言言わないで頑張ってた明に気がつかなくて」

すっと千里の影が動いて、明の座ってる籠椅子に入ってきた

明はびっくりしたが、千里が自分のことをぎゅっと抱きしめてきたことにもびっくりした

「子犬たちは風たちがミルクあげてくれてる。明は泣き疲れたでしょ、今日はゆっくり寝なさい」

母親というものを良く知らない明にとって、人肌に触れると言うこともご法度に近い思いがあった

どうしたらいいのかわからなく、顔がものすごく熱が上がった

ドキドキする

「明?」

「…いいかわるいかはわからないけど、千里さんが一生懸命僕のことを考えてくれてるのはわかった」

「そっか」

「熱い」

「あ、ゴメンゴメン」

「おやすみ」

あっさりと千里は部屋を出て行った

落ち込んでるだろう自分を元気づけようとしてるのはとても伝わった

これも、千里が言う「通過」されてしまうのだろうか

このままでいて欲しい、明はそう思いながら、ベッドに入った


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「千里さん、ずるいっ!!何で明ばっかり」

悲鳴にも近い声を上げ、ぶりっ子ポーズで優は相変わらず薄い色のスーツをびしっと着こなしている

なぜかドアの外には自分よりでかい男が5人もいた

「ちびっこが説得力ないのはわかったぜーーーーーーーーー」

「ちょっと、聞いてたの!?」

「人生は通過??お前いつそんなに哲学的になったわけ??」

しらーっとした目で翔までいる

「ちょっと!!何でみんないるわけ?!それに翔!!仕事でしょ!!」

「忘れてんの、今日はお休みー」

純を買収して、千里のバイトのシフトを全て知っているので、それに合わせて翔も休みを合わせていることに千里は知る由もない

「後で覚えとけ」

「どーゆーことよ!!」

「あれ、風と智がいない」

「あいつら、父性愛に目覚めたらしくって、子犬の面倒24時間体制で見るんだとさ、ねむ、俺寝るわ。バイビー」

猛にしてはあっさりと部屋に戻っていった

残るは優と翔

何だかあんまり機嫌がよろしくなさそうな二人から逃げるにはどうするか

そのことばかりに頭をひねる千里だった