幼い忠告
子供の頃、人にはほとんどの場合なにかおびえるものがひとつはあったはずだ。
例えば犬、例えば父親、例えば高い所。僕の恐怖の対象は暗闇だった。
深夜、トイレに行くときに必ず通らなければいけない電気のつかない廊下が僕の実家にはあった。といっても、居間の電気をつけるとその廊下のほとんどのところには光が届いた。ただ、廊下のすみには相変わらず濃い闇が身を潜めていた。
僕は思った。そのすみのそばを通ると、深い闇からえたいの知れないなにかが僕の足をひっぱり、どこか違う世界へ引きずり込まれるのではないかと。そう思うと僕の足は床に深くねずいた大木のように動かなくなるのだ。
だから寝ているときふと目が覚めてトイレに行きたくなると、横で夢の世界を満喫しているとおもわれる母を起こして、いちいちついて来てもらっていた。そのたびに僕は申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになったものだ。
ある日、僕は決心した。毎回母を起こすのは良くない。次は一人でトイレに行こうと。しかし、心の奥そこでは今日は夜に起きませんようにと神様に両手を合わせていた。
そんな気持ちとはうらはらに事はその日に起こった。
それは思ったより困難だった。
居間の電気をつけ、廊下へと通じる引き戸を開けると、やはりそこには闇があり、それをみた僕の足は動かなくなった。それは数秒のことだとおもうけれど、僕には数十分の間そこで固まっているように思えた。
しかし今回の決心はそう柔軟なものではなかった。僕はもう動かないぞと決め込んだ足を無理やり動かし一歩一歩、歩き始めた。
ほんの数メートルの距離をぼくの足は10分くらいでやっと消化した。トイレに入れば電気をつけれる。もどって来るときにはその電気を消さないつもりだった。しかし、そんなことでは毎日の電気代がかさむ。次は電気を消す練習をしなければいけないぞ、と困った。
そんなことを思っていた時だった、僕の足を何か冷たくちいさなものがギュッ、と握り締めた。直感でそれは幼い者の手だと理解した。
悲鳴をあげようとすると、僕の声は恐怖のあまり細く弱弱しく出て廊下の壁にもっと弱弱しく反響した。それがまた孤独感をあおり、僕を恐怖の奈落に突き落とした。
しかし、そこで幼い子供の手は僕の足をそっと離した。思わず足元を見るとやはりそこに手は居て、ほんの少し前の床を人差し指で差していた。そして、そこには針を上にして真新しい画びょうが転がっていた。もう一度廊下の隅に目をやったときにはその手はもう居なかった。
その日から僕はおやつの時間になると、毎回お菓子の半分を廊下の隅に備えた。その手は僕の手より少し小さく、弟のように思えたからだ。
これは大人になってから親から聞いたことだが、僕が生まれて少しした時母のおなかには子供がいたそうだ。しかし、母が階段から落ちてしまった。母体は命に別状はなかったようだが、なかの新しい命はそこでとぎれてしまったそうだ。そのことを知ったときなるほど、と思った。
僕は今実家を離れて一人で暮らしているのだが、ふと想像した。あの廊下の隅には今もお菓子のべたべたが溜まっているのだろうかと。
終わりです^^
「my road」 (短編) ジャンル(微妙ホラー)
私は思う。
人は生まれたときに自分の歩く道を決められてしまう。
その一つ一つの道は皆違った表情を持っている。
でこぼこした道。曲がりくねった蛇のような道。穴が空いている道。壁が並び立つ道。明るく照らされた道。漆黒の闇がどっぷりと溜まっている道。
しかし人はその道を選択する権利を持っていない。なぜならそれはもうきまっていることだからだ。
そして、ここに一つの過酷な道を歩く私がいる。
その道はまがりくねってもいないし、壁という障害も見当たらない。
しかし、私の道には大きな不幸の種があった。
私の道はすぐそこで消えてなくなっていた。
それでも私は立ち止まることはできない。世界は時を刻むことをやめてはくれない。
もう見えるところでその崖は大きな口を開けて待っている。
あと何歩かわからない。あと何Kmかもわからない。もしかするともう数時間かもしれない。
今この一瞬もその時がのっそりと音をたてながら私に近づいていた。
いや、正確には私が歩み寄っている。
それが私の歩く道。
それが私の「my road」 のはずだった・・・。
どうして私はこの鮮やかな緑を美しいと思えないのだろう。
どうして私はこの澄み切った青空を偉大だと感じないのだろう。
どうして私はこの吹き抜ける風をおいしいと感じないのだろう。
おそらくそれはこの心が、病魔という名の悪魔に豊かな感情を食いつくされてしまったからではないだろうか。
そんな暗すぎる心の疑問を風が連れて行ってくれるのではないかと、私は窓を開けて病室からの夏の風景を見渡していた。
私は癌だった。転移がはやいとかそんなので私の体はもって半年らしい。
最初はショックだった。そのことを知らされたとき、私の道には光が届かなくなっていた。
毎日が走るようにすぎていく、しかも暗くどんよりとした私の道には色鮮やかな変化などは訪れなかった。そのせいで走るように過ぎる毎日がラストスパートをかけるようにスピードをましている気さえもした。
外から4人の子供たちがだるまさんがころんだをやっているのが目に入った。私もあの子らのように立ち止まれればいいのに。でも足がかってに道をすすみはじめる。
部屋に医者がやってくる。しかし私は親切な医者にさえこう思う。どうせ助けれないならわたしにかまわないで欲しい。そんな感じで今日もその偽善者の挨拶をスルーする。
今日もこんな具合で味気ない時間が猛スピードで駆け抜けていくのだろう。こんなことなら悪魔でもなんでもいいから痛みなくこの体を一瞬で消し去ってくれとも思う。
しかし本心では生きたかった。このさきにある崖を認めたくなかった。
思ったとおり今日もなにも起こらなかった、いやなにか起こったのかもしれない。そのチャンスを私が見送っているだけなのだろう。というよりはどうせあと半年なのだからという思いがそのチャンスを濃い闇で隠してしまったのかもしれない。
私はベットの中で静かに目を閉じた。死ぬ時の事を考えてみる。私は驚くほどに衰弱している。声を出すのにさえも一苦労。意識が痛みと一緒に薄れていく。しばらくすると意識がまるでテレビの電源を元から切ったようにぷっつりと途絶える。そこにはなにもない、自分が死んだということもわからない、というよりなにもかもが消えてしまう。そのまま私の魂は終わりのない崖を落ちつづける。そうやって死について考えると、胸の奥からなんともいえない恐怖心がこみ上げてくる。動悸が激しくなる、眠れなくなる。
しばらくベッドに座って動悸が治まるのをまった。私はその後、何分真っ白で生活感のない病室を見つめていたのだろう。いつのまにか眠っていた。
私は暗い道を歩いていた。意味もわからずただただ歩きつづけた。おそらくこれは夢だろうと思った。遠くの方に暗く深い崖が見えてきた、しかし私は足をとめない。本当は崖からとうざかるようにして逃げ出したかった、しかしその気持ちとはうらはらに歩くペースはどんどん早くなる。そんな私の横につけるようにして黒い影がやってきた。影はこういった。
「お前あの崖に落ちたいのか?」
私は首を横に振った。
「それじゃあなぜお前は歩く。」
私はそうしなければならないからと答えた。
「そうか。」
だからなんなんだ、お前はなんなんだ。私は心のなかで叫んだ。
「ん?俺はお前が呼び出した悪魔だ。」
こいつは私の心が読めるらしい。
「お前は昼間俺に消してくれとたのんだだろう、だからこうしてお前の前に現れたんだ」
そういえばそんなこともいったかな。
「で、どうするんだ。本当に消してほしいのか?」
答えはNOだ。あれはほんの冗談だったのだ。
「ならなぜ俺を呼ぶんだ、まったくしゃれにならねぇぜ。」
悪魔はやれやれといった感じで私の横にならびあるきながら言った。そして私の元をはなれていこうとした。
しかし、奴はまたもどってきてはずんだ声で私に問いかけた。
「せっかくでてきたんだ、なにもしねぇでここを離れるのはおもしろくねぇ、おいお前!おれの話を聞きたくねぇか?」
そんなのどっちだっていい。しかしその悪魔の言葉をすこし気にしていたのもあった。その心を察したのか悪魔はしゃべり始めた。
「あの崖に橋をかけてやろうか?」
今度の答えはYESだった。するなら早くしてくれ。時間がない。早くしないと落ちてしまう。
「よし、しかしだなぁただとは言わせねぇぞ?いいか?橋は渡すが通行料をいただく!その支払い方法は渡ってからのお楽しみだ。」
もしその通行料とやらが魂ならば意味がない。私は迷った。しかし、その悩みを悪魔が打ち砕いた。
「心配するな、命だけはとらねぇよ。」
私は悪魔と契約を結び橋をかけてもらった。
「よし、それじゃあな! まいどあり」
そういって悪魔は私のもとを離れていった。前を見据えるとそこにはたしかに神々しく、しっかりとした橋がどっしりと崖をふさいでいた。
今私が歩いている道には光が戻ってきた。私は思った。奴は悪魔ではなく天使だったのではないだろうか。夢が終わる寸前、私は橋の向こう側の道が漆黒の闇に見えた。
私はベットで汗だくになりながら飛び起きた。なにかただ事ではないぞと思った。心が晴れ晴れとしていた。
私は医者に即急の検査をお頼みこんだ。医者は私のただごとではないという様子におしまけ、検査を始めた。
結果は驚くべきものだった。以前あった癌腫瘍がきれいさっぱりきえ、体も健康そのものになっていた。
私よりおどろいたのが医者だった。なにがそうさせたのかはしらないがこれは奇跡いがいのなにものでもないと飛び跳ねていた。
私は明日病院を退院することになった。明日からまたわらったりないたりすることができるようになると思うと私はうれしくなった。当然そうなるはずだった。
あれから半年が経った。
なぜか私は真っ暗で一直線で色のない道をあるいていた。後ろにも前にもその道にはなにも無かった。なぜ歩かなければならないのかわからない。しかし私はそこを歩きつづけていた。
精神病院のベットで体育座りをして、うつろな目をしている私を見てある男がもう一方の男に尋ねた。
「せんせい・・・あの人はどうしてここに来たんですか?」
せんせいと呼ばれた男はこう答えた。
「あの患者は感情をまったく見せないんだ。 まるで何者かに人生の色を奪われたようにね。」
僕は彼女の事をただただ見つめることしか出来なかった。
おわり
自分が今まででかいた中では一番長かったので、できあがったときに一気につかれがでたようなきがした;;;
今朝の不安(ショートショート) ジャンル(不思議系)
僕は毎朝ある不安に悩まされる。
それは学校へ行く前のトイレタイムである。
用をたしながら僕はいつも思う。
゛このトビラをしめて、次にあけたときにはどこか違う世界につながっているのではないか″
だから僕はいつもトビラを開けながら用をたす。
そんな僕の不安への抵抗をよく思っていない者が居る。姉だ。
「戸しめてからやりなさいよ!」
「そんなにいやならこっちこなければいいじゃないか!」
こうしていつもいつも戦いが始まるのだ。
いつもは、僕がトビラの間に足を挟んで閉めさせないようにするのだが、今日は姉が一枚うわてだった。
姉はあきらめたかのように見せ掛け、僕が油断した隙にトビラを勢いよくしめた。
バタン!!
「どーだ!今日は勝ったわよ!今度からはちゃんと戸をしめてしなさいよ!」
僕の姉は勝ちほこった表情を見せリビングに戻っていった。
リビングに入ると母親が言った。
「○○は?トイレ?」
「うん。今日は戸を閉めてやってるわ。」
姉は笑い混じりに答えた。
そう、と母もやさしい声で返した。
姉はそそくさと朝食をとり、かばんを手に取り玄関へ向かった。
「いってきまーす!」
「はい、いってらっしゃい!」
いつもの風景だ。しかしそこで姉は異変にきずいた。
弟がまだトイレから出てきていない。
泣いているのだろうか。我が弟ながら情けない。
「○○学校遅れるわよ!いつまでもないてないででておいで!」
しかしそこからは弟の返事はかえってこなかった。
そこで姉はいつまでもいじけている弟をひっぱりだそうとドアノブをひねった。
ガコ、ガコガコ
戸は向こうからものすごいちからで抑えられているような感じだった。
「なによ!まったく!」
姉は渾身の力を振り絞って、トビラを向こうへ押し開けた。
ザバァァァァァァァァァァァン!
そのなかには我が弟はおらず、しょっぱい海水と見たこともないようなカラフルな南国の魚が流れでてきた。
おわり
夢の9月1日 (ショートショート) ジャンル(ほのぼの)
日付は9月1日 午前7時12分
彼は自身の部屋で目を覚ました。
楽しい夏休みは昨日で終わった。
しかし、彼は憂鬱な顔はしていなかった。
なぜならこの夏休みを悔いのないように過ごせたからだ。
宿題は最初の1週間ですべてやってしまった。
部活には休まずいったし、宿題というストレスがないためか生活のリズムも崩れず、体も好調だった。
また、宿題をすぐに終わらせたことで友達と遊んでいる時間がとても多かった。
そんな夏休みの余韻を楽しみながら朝ごはんを食べ顔をあらい制服に着替え、いつもより早く家を出た。
彼は胸を張って教室に入った。
やり終えた宿題の数々を堂々とかかえあげ、宿題が集められた机の列にすべて置いた。
宿題をやり終えていない奴もいた。
「宿題ぐらい終わらせろって話だよなぁ」
ついつい口から出てしまった。
そんな時彼は担任に呼び出された。
「なんで宿題をやっていないんだ○○」
彼は耳を疑った。
「先生なにをいっているんですか・・・・?」
あきれたような声で問いかけた。
しかし担任は宿題がやっていないと言うばかりで、どなり散らしていた。
あれ・・・・?
「おーいもう7時だぞー!○○起きろーーー!」
先生はなにを言っているんだ、もう目の前で起きて立っている僕がいるじゃないか。
しかも今は7時じゃなく8時45分だ。
気がおかしくなってしまったのか・・・・?
なにをいっているんですかせんせ・・・~
「早く起きなさい!」
彼はまぶたの上から朝日が差し込んでいるのを感じた。
手にはシャーペン、顔の下には紙切れ。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
紙切れじゃない、問題用紙だ。
顔をあげると目の前にはまだ手をつけていない宿題があった。
日付は9月1日 午前7時12分
楽しい夏休みは昨日で終わった。
彼は憂鬱な表情で朝ご飯を食べ始めた・・・・・・
終わり
感想下さるとうれしいです(笑)
