お久しぶりです口笛

田中リサです。

芥川賞チャレンジ第二十弾

楊逸 時が滲む朝

を読みました。

以下ネタバレあらすじです。


天安門事件から始まる民主運動をする中国人が主人公の物語。

主人公の貧しい農村出身の梁浩遠は親友の謝志強と共に、勉学に励み、秦都の秦漢大学に合格する。

そして、浩遠と志強は毎日大学で勉学に励みながらも、時流に飲み込まれてゆき、中国文学科の甘先生と共に市政府前広場を拠点に集会、デモ行進、座り込み、ハンストを行う。

偽りの和解が行われ、学生たちは大学に戻りいつも通りの日々を過ごしていたが、天安門事件が起こり、浩遠はそれからやりきれない日々を過ごす。



ある日憂さ晴らしに大学の近所の小料理屋へ、同じ大学の志強、範亮と共に出かけ、酒を飲んでデモについての言い合いになり、暴力沙汰になり、警察に三ヶ月の拘留となり、大学からは退学処分が下された。

拘留され孤独な日々を過ごした後、大学に荷物を取りに行くと、甘先生は妻子を中国に残してアメリカに一人亡命し、もう一人のデモのリーダー白英露も行方不明になっていた。

その後、浩遠は迷った末、志強と共にきつい建設現場の仕事を始めた。




三年後、九十二年、幼馴染の日本人残留孤児の二世の梅と結婚し、日本に行くことにする。

梅の兄の大雄と一緒に働きながら、日々を過ごしていた頃、六月四日に日比谷公園で記念集会が行われることを浩遠は中国語新聞で知り、大雄を誘い参加した。

その後の懇親会に参加し、浩遠は民主同士会に入会した。



時は流れ日本に来て一年、民主同士会では香港の中国へ返還の反対署名を募っていた。

日本支局の代表の袁利から懇親会の仕切りを頼まれて引き受けた浩遠は中国の民事主義化など全く考えていない人々に落胆する。

その後、浩遠は二人目の男の子を授かり、父に名付け親になってもらい、民生(たみお)と名づける。日本に来て四年目になっていた。




浩遠は正社員になるため、パソコンを購入し、日々勉強に励みながらも、アメリカに亡命したの民主活動家の張北松とメールのやりとりを楽しむのだった。

志強は中国でデザイン工房を立ち上げ、利益を出したと喜んでいた。

そして、民主同士会の日本支局懇親会の参加者はついに一桁になり、大雄と知り合いの黄が立ち上げたお店に集まり愚痴をこぼすのがメインとなっていた。

二〇〇一年、浩遠はフランスに行った白英露と甘先生と日本で再会する。

二人はフランスで偶然に再会し同棲しているという。

翌日、北京に行く白英露と甘先生を見送りに行き、浩遠は「ふるさと」とは何かを子供たちに教え物語は終わる。




天安門事件は教科書の中だけの出来事だと思っていたのですが、この本を読んで人々の息遣いや血肉を感じることができました。また市民の下支えもあってデモは続いたのだなと気づかせられましたびっくり


「国のために」という尖った熱い想いも、時を追うごとに角が取れ輪郭を見失い、ついには自分の子の故郷が自分の故郷ではなくなっているラストに愕然としましたショボーン


時の流れってなんて残酷なのだろうと思いましたガーン