コトの顛末:
「自殺と間違われて通報され、警察のご厄介になりました。情けない。そしてごめんなさい。」
メモその1:
「自殺と間違われた話。続き」
メモその2:
事情説明からパトカーへ。「赤灯を消す」という気遣いの文化。[自殺と間違われた話。続き2。]
線路上で座って写真を撮っていたら自殺に間違われて通報されそのままパトカーで茅ヶ崎警察のご厄介になった件の覚え書き。
線路は通り抜けるだけが許されていて、立ち止まったり、ましてや座って写真を撮ったりしてはいけないんだそうな。知恵袋。
【経過】
①線路に座って写真を撮る
②通りがかりの車の方から、声をかけられる。
③カメラをみせて「写真を撮ってるんです」と説明する
④道路の向こうから「自殺だと困るから、警察呼んだからね」と声をかけられ、線路から道路へ移動
⑤パトカーがくる
⑥事情説明
⑦パトカーに乗って
⑧茅ヶ崎警察へ
⑦身元引受人に電話
⑧事情聴取?
⑨上申書を書く
⑩身元引受人(同居のパートナー)到着
⑪身元引受人の書類を書いて、お世話になりました。
今日はこの辺。パトカーに促されてから、茅ヶ崎警察へと向かう道すがら。
⑦パトカーに乗って
⑧茅ヶ崎警察へ
さて、若い警官は「自殺を企図していたのではない」と信じてくれたようだったが、ここで返してくれるほど甘くはなかった。ただ、本当に自殺を企図していながら「そうではない」かのように芝居を打つことも可能ではあるので、現場で事情を聞いても「そのまま帰宅させない」のは必要な手順なんだろう。
「自殺かも」と通報受けました、線路脇でそれっぽい人がいます、事情聞きました、さようなら、帰り道に死なれちゃいました――これじゃ警察も立つ瀬がないし、可能性は十分ありうる。
「赤灯を消しますから」
そういってパトカーへと促された。あとでググったところ、「赤色灯を消す」のは緊急車両ではないことを意味するらしい。つまり「事件扱いにはしないから、いいこで任意で同行してね」というお心使いでもあったのだ。そのときはまったく意図が分からなかったが。
とっさに、車上荒らしを見つけて通報したことを思い出した。十年近く前、関西でのことだが、結局6時間以上拘束されたのだ。あれはシンドイ。
警官にひとこと断って恩師のような人に電話をした。うまく口を聞いてくれないかなぁ、帰りたいなぁ……ハイ、でません。ですよね。早朝ですゴメンナサイ。私の生活時間帯からすれば深夜と言っても過言ではない。
「自殺と間違われて通報されてしまって……なんだかちょっと、茅ヶ崎警察署にいかなければならないみたいなのです。朝方にごめんなさい」
と、留守番メッセージをのこす。明け方の電話って、緊急かと心配するだろうから。
「同居の方ですか?」
説明するのも気まずいので、「はい」とか「ええ」とか適当ごまかす。
白黒パンダカラー車の後部座席のドアを丁寧に開けていただく。エスコートなれしてるのかね。世の男性諸氏も見習って欲しいほどのスマートな振る舞いに感動しつつ、観念する。
促されて奥の席へ。
下をむいてiPhoneをいじる。態度が悪く映るかな、と顔をあげる。フロントガラスの向こうでは青昏かった空がだいぶ白んできていて、「情けない感」2度目のピークを迎える。
「ごめんなさい、もう一度電話してもいいですか?」
「彼氏さんですか?」
2度目は「同居の方」ではなく「彼氏」になっていた。私は「彼氏」という語を好まず、連れ合いとか、パートナーと呼び習わしているが、いちいち訂正する場面じゃないねと引っ込める。
「はい」
パートナーに電話をかけると、3コールで出てくれた。寝ぼけ声だ。ですよね。
「ごめんね、寝てるトコ。あのね、線路で写真を撮っていたら、通報されちゃって、その……自殺と間違えられたみたいで、いまね、パトカーに乗ってるの」
「ええ!」だったか「うへぇ」だったか、とにかくなんだか変な声が聞こえた。
「自殺じゃないって分かってくれたのだけれど、一応、通報もされちゃったしってことで、茅ヶ崎警察にいってくるね」
情けな感3度目のピーク。常に情けないんだけどね。
簡単なやりとりを終え電話を切った。この段階では彼の手を煩わせることになるとは想像もしていなかった。最終的には身元引受人として、茅ヶ崎警察署まで来てもらうことになるのだが。ごめんね。
この時点で「身元を引き受けに来ていただくことになりますよ」と教えてくれてもいいのにな。まだ、決定事項ではなかったのだろうか?
若い警官と一言二言交わした気もするが、覚えていない。大した話じゃないんだろう。同じことの繰り返しだったかもしれない。
ラジオはかかってないんだね、あたりまえやんタクシーかっ――脳内で一人ツッコミをして気を紛らわせる。
それなりに見慣れた一国沿いの、それなりに見慣れた茅ヶ崎警察署の、まったく知らない裏手の駐車場に到着。
するりと車が停まると、担当の警官がちゃっちゃと回り込んでドアを開けてくれた。もしかしたら、中からは開かないようになっていたのかも知れない。が、私がドアノブを握る前のことだったので分からない。とにかくスマートだ。また感心する。
ちいさな段を上がって、お勝手口?的な入り口へと向かう。へぇ、こんな風になってるのね、警察の裏側――と、見聞する間もなく小さなドアを開けていただき(またココでも!)「どうぞ」、と促される。
いつでも先に促してくれるのは、エスコートでもなんでもなく、逃がさない為の対応として身についたモノなのか……とこのあたりで思い至る。おめでたいなぁ。
続く。