『亡国のイージス』美中年満載。 | 桃色テラス

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あはれ来て野には咏へり曼珠沙華

三橋鷹女が理想です。

<2005年9月ごろのブログより転載。この頃から男は40過ぎてから、とか言ってたのね。>

「男は四十過ぎてから」と不覚にも再認識させられ都合三回観に行った。続映決定したようなので行くか四回目……。
 何って佐藤浩市さんが素晴らしい。『ホワイトアウト』やら一寸は彼の出演作品を観ていたハズなのに何で今までこの魅力に気付かなかったのか。浩市さんセクシー過ぎて鼻血どころじゃぁすみません。

 わたくしが今年観た、「映画化不可能」といわれた邦画三本(レディージョーカー、姑獲鳥の夏、イージス)中一番すきだった。まあ、他二本と違い、「一回目→原作→二回目・三回目」と「観てから読んだ」所為かわからないが。
 
 原作に比してエライこと展開が早い上にエピソードがガンガン削られていて、それが逆に良かったのかな。不満もあるけれど、尺以外に種々ややこしい制約があったであろうなかで、ダイジェストではなく旨いこと阪本風イージスになっているというか。

 一つ言えるのは、イデオロギーに寄った見方をすると面白くないだろうということ。そりゃあネタがネタなので、色色考えろと迫ってくるものはある、けれどソコを「日本の再軍備路線が云々」とやったら味気無い。そもそも原作も映画も読み込めば全くそんな主張じゃないのに、自衛隊バンバン出てくるから誤解されがちなんだな。

 皆、真っ直ぐなキモチで熱いオヤジを堪能すればよいよ!

 とにかくなんだ、極私的見所は佐藤浩市だ。ちょっとダーティーな防衛庁の非公開組織の内事本部長渥美大輔役で、特に岸部さんとの掛け合いがスバラシイ。このお二人のハンカチ・煙草シーンとも原作にはなく、メインの展開からも一寸外れるのだけれど、これが良いんだまた。
 防衛庁のロビー(=煙草)シーンがある意味でこの映画を要約しているのかな、と思う。ギリギリと思い詰める浩市さんにさらっと返す岸部さんがもう、最高。
 「……戦後六〇年、日本は太平洋と東シナ海の狭間にただ浮かんでただけだ。なあ、平和だったらそれで国ってよべるのか?」
 「平和って戦争の狭間に生まれるもんだと俺は思ってるんだ(中略)……俺はそれでいいと思うよ」

 原作の渥美大輔もどうしようもない程いい男で、浩市さん以外のキャスティングはあり得ないかと。岸部さんも寺尾さんの艦長も美味しいし、その他配役も言うことなしだった。原作読んだら岸部さんの役(瀬戸和馬内調室長)は剣道の達人でガタイが良いのだけれど、岸部室長も噛めば噛むほどスルメイカ。原田さんの総理も貫禄ある情けなさでグッときます。真田さんの仙石も原作文よりちょっとスマートすぎるけれどいいし、最近すっかりミキプルーンだった貴一さんもやっぱり凄かった。

 若干話はそれるけれど、キリン一番絞りCM「タコスキー?版」の浩市さんの入浴シーンは間違いなくサーヴィスカットだね。

 観てから原作を読んで沢山驚くことがあった。
なによりクライマックスを初め、映画版では『オトナの事情』により描けなかったであろうシーンの多いこと多いこと。「それ削っちゃだめだろぉ」という部分も多々あり、元来の原作フアンは複雑だろうなぁ……。原作アト組のわたくしでもあのクライマックスとラストは納得し難い。艦長は艦長であって欲しかったし。
 そもそも映像化不可能と言われていた理由が「オトナの事情=政治的配慮(自衛隊の協力含む)」だったそうなので仕方ない、か。


『亡国のイージス』
監督 阪本順治
原作 福井晴敏
出演 真田広之/寺尾聰/佐藤浩市/中井貴一/勝地涼/岸部一徳/原田芳雄 
映画公式サイト