いちども色を見たことがない「先天盲」の人も、色彩にはとても興味を持っている。それを知った日本女子大(東京都文京区)被服学科非常勤講師の佐 川賢さん(65)とゼミ生らが、手で触って服の色を識別できるタグを開発した。全盲の人が、周囲に尋ねるしかなかった色を自分で実感して、ファッションも 楽しめるようになりそうだ。 (原尚子)
縦五センチ、横三センチほどのタグには赤から紫までの十色を、似た色順に円く配置している。「色相環(しきそうかん)」と呼ばれ、基本色は凸点で表し示したい色のみ穴をあけた。指で触って、穴が零時の位置なら「赤」を表す。
点字では「アカ」など色の名前が分かるだけだが、色相環なら、その位置から類似色や反対色がわかり、服の色をイメージしやすい。たとえば、赤とだいだい色の暖色系で組み合わせるなどの選び方を、全盲の人が自分でできる。
後天性も含め全国に百万~二百万人と推定される全盲視覚障害者の人から「洋服の色が分かったらいいのに」と聞いたことが、開発のきっかけだという。
四年前からゼミで研究を開始。日本点字図書館(新宿区)の協力で、全盲の男女十六人に「似ていると思う色」のデータを取った。十三人のデータがきれいな色相環を描いた。十人は色の記憶がなく、そのうち三人は完全な先天盲だ。
実験前のアンケートでも「色をイメージする手掛かりがほしい」など、積極的に興味を示していた。特に先天盲の女性は、自分で服の組み合わせを考え たいと願っている。「全盲でも『リンゴは赤』など、周囲の話や本の情報から色を想像し、ほぼ正確な概念を持っていた」と佐川さん。
高校生のとき視力を失った日本点字図書館職員の甲賀佳子(こうがけいこ)さん(56)は「気分に合わせて洋服が選べれば世界が広がる。自由で生活の質が上がる」とタグの開発を喜ぶ。
盲学校では「『茜(あかね)色の雲』は、夕日なのか、朝焼けなのか」といった、色への想像 をめぐらせる教育 をしている。「色の話はタブーと思われているが、私たちはむしろ、積極的に色を教えてほしい」
