事務所のソファの上に見慣れないリュック。
それも、普段大学生とかが背負う5倍はあるんじゃないかってサイズ。
無造作に置かれてるから、まるで寝袋のよう。
そんなものをこんな場所に置くのは唯ひとり。
「......なんだこれ。」
ちょっと不機嫌そうに言ってみる。
「届いたんですよ~♪山行くんですよ~♪」
わざと不機嫌な声を出したのに、
犯人はさも嬉しそうに返答。
さすがMr.空気ヨメナイ。
だってわざわざ仕事場でリュックを出す必要なんてない。
まして、わざわざ目につくソファに置く必要もない。
※100歩譲ってここに届くようにしてあったからって、
梱包から開く必要なんてないもの!
........これは、あれだ。
小さい子供が100点取った時にお母さんに見せたい願望。
欲しかった玩具が手にはいって、友達に自慢したい願望。
そんな事を知ってかしらずか、
いそいそとリュックに毛布やら何やら詰めてみて、
どんだけ入るかみとかなきゃ、とか
重さってどんなもんなんだ、とか
色々やってみてる。
本当に嬉しそう.....。
彼が此処に来た時を思い出した。
小難しそうな顔して、
張り付いた嘘くさい愛想笑いをしてて、
適当に相手を立てることが上手で、
大分年下なのにどう考えても年上のような立ち振る舞い。
そのくせ身体が弱くてしょっちゅう機能停止。
この子、本当に大丈夫か?とか正直思った。
何より自分の事をなかなか話さないし、
嘘くさい愛想笑いしか見たことなかったし、
何でも出来るわりに自分にとっても自信がないように見えたし。
それなのに、
それなのに。
いつからか、本当によくしゃべる!
自分の事もいっぱい話してくれるようになったし、
完全にお仕事を任せてからは責任感からかしっかり、
しかも予想以上に素敵な制作物を残してくれるし、
嘘臭い愛想笑いを皆の前でしなくなった。
(初対面の人の前ではまだまだ繰り出してるみたいけど。)
何より、本当にウキウキした顔をよくするようになった。
小難しい性格この上ないから、
実は家族にもあんまり見せないんじゃないかと思うほどの
ウキウキウキウキな表情。
特に自分の好きなこととなると、
彼の身体を突き破ってウキウキが出てきそう。
彼の内側がよく分かるようになってよかったと思う。
つられて、私もちょっとウキウキを感じられるから。
無視しちゃう時もあるけど、
ウキウキな彼のテンションにのっかると、
私もこうなる。
それにしても。
登山用のリュックってすごい!
全然肩に負担がかからない!
肩というより背中や腰で荷物を支える感覚。
「持つ」じゃなくて「支える」。
普段使うリュックとは全然違う。
こういった感覚も、例えば登山の先の景色だって。
面倒臭がりの私には一生縁のないことだろうから、
お土産話を実はちょっと楽しみにしていたりする。
オチビだって。
こんな風に背負われることは普通ないだろうし(笑)。
彼女は少し、迷惑そうだけどね。