=第29話「ぐれおじさん病院へ」=
2019年、1月。
元奥様のYuさんから、一通のLINEが来ました。
「ぐれちゃんが、なんだか痩せてきてる」
年末まではふっくらしていたので、心配になり、念のために病院に連れていこうということになりました。
久々に会ったぐれおじさんは、確かに背中の骨が少し目立つようになっていて、表情はしっかりしていますが、確かに痩せている。
さっそくいつもの病院に連れていきました。
一通り触診したあと、血液検査と超音波検査をするということで、待合室で待つことになりました。
心細そうに
「にゃあ~」
と鳴くぐれおじさん。
「またあとでね」
と残して、診察室の扉を閉めました。
「ただの加齢によるものだといいね」
Yuさんと話しながら待っていました。
ぐれおじさんの年齢は16歳。人間で言うと80歳です。痩せてくるのもしょうがないかなと思っていました。
30分くらい待ったでしょうか。
検査が終わり、病室に呼ばれました。
病室に入るやいなや、お医者さんがこう言いました。
「ぐれちゃん、危なかったですよ」
「え?」
「今日連れてきてくれなかったら、1ヶ月もたなかったかも。それくらい、腎臓の数値が悪いんです。通常の30パーセントしか機能していません」
血液検査の結果表を指さしながら、それぞれの数値の意味を教えてくれました。
そして、
「おそらく片方の腎臓が機能停止していますね」
と言いながら、超音波検査の結果の写真を見せてくれました。
左の腎臓に比べて、右の腎臓の写真は黒くて、ギューッと固まったような腎臓をしていました。
「正直、こういう腎臓の画像は見たことがないんです。腫瘍なのか、周りの血管が入り込んでるとか、可能性は色々ありますが、現時点では機能していないとしか言えません」
「え・・・何か調べる方法はないんですか?」
Yuさんは少し力のない声で聞きました。
「CTを撮ったり、生体組織検査をすれば腫瘍かどうかくらいは分かと思います。でも、その検査自体も負担だし、腫瘍だとしたら放射線治療や薬物治療になりますが、ぐれちゃんの年齢を考えると、耐えられるかどうか・・・」
「腫瘍じゃないとしたら?」
「そうなると、もう腎臓を摘出するしかないんですが、それで良くなる訳じゃないので無意味です」
さーっと血の気が引くのが分かりました。
そして、続けて、お医者さんの口から、ある一言が・・・。
第29話 完