僕は少しだけ時間に取り残されることにした | 茜空

茜空

ファッション、音楽、衣装デッサンが趣味
クリエイティブな趣味を持ってますが、仕事は病気と戦う看護師さん(笑)
日々、ストレスと戦っています

Ⅰ.XXXXシンドローム


――彼女は死にたがりだ。
明確に口にしないだけでいつだって死にたがっている。
彼女を大切にする、彼女を取り巻く彼らがそれを望まないから際どいその死の淵で、危ういバランスで立っている。
いつか強い風が吹いたら向こう側に行ってしまうような、そんな感覚。
僕らの大切な彼女は、いつだって、いつの世だって死にたがる。


「ねえ」


数時間水も飲まないで閉ざしていた口と喉は思ったようにかわいていて、張り付いた声が出た。
傍らにいる彼らはそれを気にはしないけど。


「君は、僕や俺やおれがいる意味を知っている?」


焦げ茶の髪色であるはずの彼女に、金髪、青髪、赤髪が重なって見える。
その奥にはひどく底冷えした銀色を持つ瞳が揺れる。


「僕らはそれぞれ違う人格を愛した。同じ人間でも違う存在をね」


それは、それぞれが個であるよ、と遠回しな忠告。
揺れる眼差しは動揺のそれで、見抜いたのか目の前の彼女の姿の誰かはふっと鼻で笑う。


「統合なんて馬鹿なことを考えるなよ。オリジナルは俺達がいないと死ぬ。脳内で俺達を何度も殺すことでオリジナルは生きてるんだから。」


右手に残る日焼けの度に浮かんでくるひきつった怪我の痕はそれが原因なの?
耳にたくさんあいた穴。
放っておくと取らない食事。
全ては死にたがりの死にぞこない。


「俺達を受け入れられないなら、今のうちに手を引きなよ」


そうやって怪しく笑った彼女の背後に、金髪の吸血鬼が揺らめいた。


Ⅱ.どこにも行かないで

何でもない、と口をつぐんだ。
ホントはちょっと足を止めたくて。
今止めなきゃ君はxxxしまう。
でも止めたらボクがxxxしまう。
どっちが幸せなのかな。
ボクは君がいないと生きられないけど、君はボクが居なくても生きられるでしょ?


「……いかないで、」


笑ってサヨウナラ。
残酷だね、君は。
ボクに幸せになってと突き放す。
ねえ、11年目も僕はポエムを送るよ。
何年経ったって送り続けるよ。


「オレ、を……すて、ないで」


涙混じりの酷い声は君に拾われることなく空気に溶けた。
あぁ、なんてひどい話だ。
ボクは今日も君を思って歌うんだ。
サヨナラの準備をしていたって、辛くない訳じゃないんだよ。


Ⅲ.蝶々、蝶々

アナタは蝶々。
自分一人で生きていける蝶々。
俺は花。
アナタがいないと生きていけない花。
太陽がいるだけじゃ、来年も生きられない花。
どこにいるの愛しの蝶々。
俺はアナタにずっと会いたいんだ。
見つけに来て。
もう俺の耳じゃ、目じゃ、捜しに行けないよ。
ずっとここで待ってる。
迎えに来てくれるんでしょう?
だったらいつまでも待ちますって、言ったでしょう?


「菫色を、忘れずに」


俺がアナタのものである証だから。
だから揃えたんです。
ほら、その手を広げて。
俺にお帰りを言ってください。


Ⅳ.振り返ってやりませんよ

俺を捨てたことを、後悔すればいいんだ。
俺はあなたのことなんて振り返ってやりませんから。
絶対ですよ。
絶対、絶対後悔する。
だって、今、君はxxxいるの?


「連れて行ってって、言ったじゃないか」


消えそうな亜麻色に伸ばした手はすり抜けて、伸ばされたあなたは嬉しそうに笑って。
暗い暗いそこへと沈んでいったんだ。
待っていて欲しかったよ。
連れて行ってほしかったよ。
俺なら、俺なら。


「笑わせてあげるって言ったじゃないか」


俺のエゴだったんだよ。

Ⅴ.最後の一滴まで


その魂の色を俺が見違えるはずがなかった。
何度も何度も繰り返した人生。
閉じ込められた輪廻の輪。
止めるための鍵は俺と、君。
菖蒲、菖蒲。
俺の愛しい菖蒲。
変わらず携えるその紫で俺を射抜いてほしいだなんて、小さな願い。


「xxx」


その名前は、君しか知らない。
俺が君にあげた名前。
諱にかすらない俺だけの君の呼び名。
覚えてる?
その名前の物語に笑ってくれたこと。
俺は大切にしているよ。


「xxx」


振り向いて。
ずっと大切にするから。
今迄みたいにこれからも。
もう君のこと


「xxしたいなんて、いわないから」


Happy Birthday for Dearest Ⅶ.